135 / 290
第2章 亜麻色の光
61 宝物
しおりを挟む
「ナギサの瞳と同じ色の宝石の……ネックレス」
「うん。その顔だと知ってるみたいだね。この世界では婚約や結婚の時、指輪ではなくネックレスを贈る」
「……私にはずっと昔から好きな人がいたの。その人は私の幼馴染で恋人で、婚約者だった。両想いだったよ。だけどその人は早くに亡くなってしまって、一緒になることは叶わなかった」
何でもない日なのに、なぜこんな話をしているのかとは思う。だけど俺は少しでも早く、アリスと約束したかったんだよね。
「『───好きだよ、有栖。最初はただの幼馴染としての好意だったけど、いつの間にか恋愛感情に変わってた。俺と……付き合ってください』」
「ふふっ! 嬉しいな。ずっと大好きで仕方なかった人は私に告白してくれたの。これで二度目。こんなに嬉しいことある?」
「俺は愛する人に告白されたことないから分からないなー。受け入れてもらえたし、普通に好きとは言ってくれるんだけど」
「好きじゃないよ、大好きって言ったの。ナギサ、告白の言葉を完璧に覚えていたんだね?」
「まあね。……それで、返事は?」
「うん。ありがとう、ナギサ。わたしも大好きだよ!」
これは当たり前だけど俺とアリスしか知らないやり取り。俺とアリスは付き合うと同時に婚約したから、これは結婚の約束の言葉でもある。答えは分かっていたけど、断られる可能性もゼロではなかったから、了承の言葉をもらえて安心したよ……
宝くじで一等が当たった、もう叶わないと諦めていた夢が叶った。他にも色々あるけど、人はこれを奇跡と呼ぶことがある。でも奇跡というのは人の手では起こせないことを言うらしい。宝くじの当選や長年の夢が叶ったのは、人の手によって起こった出来事だから奇跡ではない。
でも俺とアリスが同じ世界に、そして同じ時代に転生したこと。転生というものが存在している時点で人の力を超えている。ましてやこうして再会できるなんて、奇跡以外の何物でもない。
こんな奇跡はもう二度と起こらないと言って良いだろうね。だから俺はできる限りアリスとの時間を大切にしたいんだよ。それでこんなタイミングで告白とプロポーズをした。
「ナギサ、これ付けてくれる?」
「いーよ」
「ナギサからもらった宝物がこれで二つ目になったよ。本当にありがとう、ナギサ」
「これからもっと宝物を増やしてもらう予定だから、お礼を聞くにはまだ早いかもしれないねー」
アリスの言う宝物というのはネックレスと指輪だろうね。この世界に俺がプレゼントした物はこの二つしかないから。だけどアリスを愛してやまないこの俺が、たった二つのプレゼントで終わらせるはずがないし?
この世界でもアリスが宝物だと思えるもので溢れさせてみせるよ。そのためにはアリスに愛想を尽かされないよう、今以上に愛を伝えていかないとね。
「うん。その顔だと知ってるみたいだね。この世界では婚約や結婚の時、指輪ではなくネックレスを贈る」
「……私にはずっと昔から好きな人がいたの。その人は私の幼馴染で恋人で、婚約者だった。両想いだったよ。だけどその人は早くに亡くなってしまって、一緒になることは叶わなかった」
何でもない日なのに、なぜこんな話をしているのかとは思う。だけど俺は少しでも早く、アリスと約束したかったんだよね。
「『───好きだよ、有栖。最初はただの幼馴染としての好意だったけど、いつの間にか恋愛感情に変わってた。俺と……付き合ってください』」
「ふふっ! 嬉しいな。ずっと大好きで仕方なかった人は私に告白してくれたの。これで二度目。こんなに嬉しいことある?」
「俺は愛する人に告白されたことないから分からないなー。受け入れてもらえたし、普通に好きとは言ってくれるんだけど」
「好きじゃないよ、大好きって言ったの。ナギサ、告白の言葉を完璧に覚えていたんだね?」
「まあね。……それで、返事は?」
「うん。ありがとう、ナギサ。わたしも大好きだよ!」
これは当たり前だけど俺とアリスしか知らないやり取り。俺とアリスは付き合うと同時に婚約したから、これは結婚の約束の言葉でもある。答えは分かっていたけど、断られる可能性もゼロではなかったから、了承の言葉をもらえて安心したよ……
宝くじで一等が当たった、もう叶わないと諦めていた夢が叶った。他にも色々あるけど、人はこれを奇跡と呼ぶことがある。でも奇跡というのは人の手では起こせないことを言うらしい。宝くじの当選や長年の夢が叶ったのは、人の手によって起こった出来事だから奇跡ではない。
でも俺とアリスが同じ世界に、そして同じ時代に転生したこと。転生というものが存在している時点で人の力を超えている。ましてやこうして再会できるなんて、奇跡以外の何物でもない。
こんな奇跡はもう二度と起こらないと言って良いだろうね。だから俺はできる限りアリスとの時間を大切にしたいんだよ。それでこんなタイミングで告白とプロポーズをした。
「ナギサ、これ付けてくれる?」
「いーよ」
「ナギサからもらった宝物がこれで二つ目になったよ。本当にありがとう、ナギサ」
「これからもっと宝物を増やしてもらう予定だから、お礼を聞くにはまだ早いかもしれないねー」
アリスの言う宝物というのはネックレスと指輪だろうね。この世界に俺がプレゼントした物はこの二つしかないから。だけどアリスを愛してやまないこの俺が、たった二つのプレゼントで終わらせるはずがないし?
この世界でもアリスが宝物だと思えるもので溢れさせてみせるよ。そのためにはアリスに愛想を尽かされないよう、今以上に愛を伝えていかないとね。
72
あなたにおすすめの小説
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
神様の人選ミスで死んじゃった!? 異世界で授けられた万能ボックスでいざスローライフ冒険!
さかき原枝都は
ファンタジー
光と影が交錯する世界で、希望と調和を求めて進む冒険者たちの物語
会社員として平凡な日々を送っていた七樹陽介は、神様のミスによって突然の死を迎える。そして異世界で新たな人生を送ることを提案された彼は、万能アイテムボックスという特別な力を手に冒険を始める。 平穏な村で新たな絆を築きながら、自分の居場所を見つける陽介。しかし、彼の前には隠された力や使命、そして未知なる冒険が待ち受ける! 「万能ボックス」の謎と仲間たちとの絆が交差するこの物語は、笑いあり、感動ありの異世界スローライフファンタジー。陽介が紡ぐ第二の人生、その行く先には何が待っているのか——?
異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました
おーるぼん
ファンタジー
主人公は俺、43歳独身久保田トシオだ。
人生に疲れて自ら命を絶とうとしていた所、それに失敗(というか妨害された)して異世界に辿り着いた。
最初は夢かと思っていたこの世界だが、どうやらそうではなかったらしい、しかも俺は魔物使いとか言う就いた覚えもない職業になっていた。
おまけにそれが判明したと同時に雑魚魔物使いだと罵倒される始末……随分とふざけた世界である。
だが……ここは現実の世界なんかよりもずっと面白い。
俺はこの世界で仲間たちと共に生きていこうと思う。
これは、そんなしがない中年である俺が四苦八苦しながらもセカンドライフを楽しんでいるだけの物語である。
……分かっている、『図鑑要素が全くないじゃないか!』と言いたいんだろう?
そこは勘弁してほしい、だってこれから俺が作り始めるんだから。
※他サイト様にも同時掲載しています。
神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!
yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜
いくしろ仄
ファンタジー
女神に頼まれ魔王を討ち倒したご褒美に、当人の希望通りの人生に転生させてもらった主人公。
赤ん坊から転生スタートします。
コメディ要素あり、ほのぼの系のお話です。
参考図書
復刻版鶴の折り紙・ブティック社
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる