【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

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第2章 亜麻色の光

111 いってきます

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「ねぇアリス」

 一緒に寝る準備をしてベッドに横になったアリスに話しかける。

「ん?」
「明日の朝アリスが起きた時には俺はもういないと思うってさっき言ったでしょ? 全然そうなるつもりはないけど……俺が帰ってこなかったらどうする?」

 今度は置いていかないでほしいと言われているし、本当に深い意味はないんだけどねー?

「怒るよ? 悲しいこと言わないで。そんなに危険なの?」
「ごめんね、ただ気になって聞いてみただけ。上手くいけばすごく危険だろうけど、短期間だからとりあえずは大丈夫なはずだよ」
「そっか。でもナギサの基準は当てにならないかな」

 なんでよ。俺が普通じゃないみたいだからそんなこと言わないでほしいよねー。俺が死ぬ確率なんて寿命以外ならゼロに近いから大丈夫だけど、一緒に行くのはルーだけの予定だから危険が少ないわけでもないんじゃない? と思ってる。心配かけるだけだからアリスには言わないけど。

「俺が戻るまでの間、アリスはできるだけ一人にならないでね。精霊を護衛につけるとは言ったけど無敵というわけではないんだから。短期間だけど……敵も動くなら俺がいない間だろうし」
「うん。気を付けて行ってきてね」
「ん、ありがとー。おやすみアリス」
「おやすみなさい」

 ◇

「───ごめんね、アリス。俺はいつも君を悲しませてばかりだ。今回もまた泣かせてしまうかもしれない。俺がアリスを好きにならなければ良かったのに。君に嫌われるようなことができたら良かったんだけどな……俺の中で一番大きくてはっきりしている感情が大切な人への愛なんだよ。だからどうしても自分から離れてあげることはできない。本当にごめん」

 アリスにだけは知られたくない。俺がこんなこと思っているなんてね。知ったらきっと悲しむよ。だけど寝ている今なら、ちょっとくらい良いでしょ? どんな形であれいつかは知られちゃうはずだし。

「……俺はね、何度生まれ変わっても世界で一番自分のことが嫌いだよ。誰よりも恨んでる。だから前世で死ぬ時、苦しんでる自分にざまぁって思っちゃった。本当に大嫌いで仕方ないから。だから……どんなに苦しむことになったとしても、俺は喜んで自分の守りたいものを守るよ。たとえそれで命を失ったとしてもね。俺のエゴでしかないけど、お願いだから守らせて。そして俺を嫌ってよ。怒ってよ。なんでまた約束を破るのって。アリスに嫌われることは俺にとって一番の罰だからね」

 俺は何となく分かるんだよ。自分の未来が、結末が。もちろんそれが変わることもあるし、変えることだってできる。でも俺の心はまだ前世に囚われてる。桜井渚に恋愛なんて似合わないなって自分でも思うけど、それでもアリスのことを愛してるからね。俺は離してあげられない。だからお願いだよアリス、俺を嫌って。そうすれば俺は───

 ……きっと誰も知らないだろうね。精霊王の心がこれほど脆いとは。

 ◇

「みんな、おいで」

 数時間後。まだ夜が明けきらない頃、俺は隣で眠るアリスを起こさないように部屋から出た。玉座の間に移動し、精霊達を集める。数秒も経たない内に俺が座る玉座の前にはすべての精霊の代表格のみが集結した。さすがに全員を集めると数が多すぎるからここにいる精霊達に伝達してもらう。

「俺は今から会合までの間、黒幕についての調査に行ってくる。ルーは俺と一緒に来て、他の精霊は君達四人が護衛に振り分けて。残りの子は世界中に散らばって何かあったら教えてね」
「御意。ルーはお手伝いだと聞いていますがナギサ様の護衛は不要なのですか?」
「俺に護衛なんていらないよ。みんなも知っている通り俺は強いからね。だから安心して俺が命じたことに集中して」
「承知致しました」
「もう……ほんとめんどくさい。俺は自由に楽に生きたいのにさ、なんでこうして動かないといけないのかな? 黒幕、絶対に許さない……」

 絶対殺す。どんな奴らなのか知らないけど碌な奴じゃないでしょ。絶対に頭脳戦も肉弾戦も強いから警戒しないといけないし。まあ馬鹿だろうが弱かろうが、どんな奴であろうと俺の自由を奪っている時点でまともじゃないのは分かってる。

「面倒だから一々俺のところに話を持ってこないでね。俺にしか対処できないようなことと報告以外はシルフ達が何とかして」
「はい、お気を付けて」
「ががが、が、頑張って……」
「はいはーい」

 今回、短期間と言っても一ヶ月近くはあるから、絶対に何かしらの収穫を得て帰ってくることを目標にしている。とはいえ、どんな相手か分からないし今のところ全くと言って良いほどに情報がないから頑張らないと。

「じゃあね、行ってきまーす」
                                       【第2章・完結】
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