【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで？

第3章 動き出す思惑

37 恐ろしい男

　◇

「ねー、アリス？」
「ん？」
「ご機嫌だねぇ。そんなに嬉しかった？　困ってたんじゃなかったの？」
「隠せないところだと困るけど、隠すことができるならむしろ嬉しいよ。ナギサはモテるからね」
「どういう関係があるのか分からないけど嬉しいなら良かった」

　俺としては見えるところじゃないと牽制にならないから、愛情表現以外ではあまり意味がないかなと思うんだけど、アリスは違うらしい。

　禁書室はアリスでもあまり見せられないから使えそうな資料だけ記憶し、残りは普通の書庫の方から集めた。他属性の資料については転移して取りに行った。書庫は作業できるスペースがあるから俺はそこで作業中だけど、アリスは手持ち無沙汰で暇だったのか興味があるらしい本を自分で探してきてそれを眺めている。

「私がナギサの隣に立っているだけでもいろんな視線が飛んでくるのよ。自分の魅力を理解していない恋人を持つと大変なんだからね」
「ほんと、アリスにだけは言われたくないねぇ」
「私はナギサと違ってある程度は理解していますー」

　俺とアリスは違うでしょ。俺も美形の家庭に生まれてるからある程度容姿が整っている自覚はあるけど、それ以上に性格が終わっている。

　だからアリスが気にする必要はないと思う。どうせ関われば離れていく、外見しか見ていないような人達がほとんどだろうから。

「明日は学園に行くの？」
「どうしようかなぁ……やらないといけないことは次から次へと出てくるし、だけど帰ってきたなら顔は見せておいた方が良いだろうし」
「お兄ちゃんが寂しがってたよ」
「……行きたくなくなってきた。絶対抱き着くために突進される。そして骨が折れそうになる」

　基本的に避けられるけど、たまに捕まった時は解放された後も体の節々が痛む。本人は手加減してるつもりなんだろうけど、見た目に反して本当に異常なくらい馬鹿力だから………

「うん、今回は全力で逃げた方が良いと思う。ナギサ、筋肉はあるけど細いから本当に折れちゃいそう」
「こわっ……」

　アリスはこういうけど、俺は心配になるレベルの細さってことはない。華奢なわけでもないし。それでも本気でやりそうなのが雅という人間なんだよねー。実際に俺が折られたことはないけど、凶器を持って襲ってきた奴をバキバキにしてるのは見たことある。

「冗談だよ」
「いや、冗談にならなさそう。遭遇したら近付かないように叫んで逃げよ……」