【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

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第3章 動き出す思惑

38 嵐の前の静けさ

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「あー……やっと終わった……」
「お疲れ様。オールしたの?」
「うん。忘れない内に全部準備を終えておきたかったからね。おはよ」
「おはよう」

 昨晩、しばらくの間はアリスと話しながら作業してたけど、純血の精霊じゃなくて睡眠が必要なアリスは先に眠った。俺もすぐ終わらせるつもりだったんだけど、結構抜けがあったり修正しないといけないところがあって結局一睡もしていない。まあ丸一日寝た後だったから大丈夫だけどねー。
 この面倒な作業と会合の参加を毎年してくれていたシルフには今更だけど感謝しかない。だけど感謝するから今年も参加してほしいな。世界各国の代表者ってほとんどが王だし、代理でも大臣や宰相のような重鎮でしょ? 絶対めんどくさい。今から憂鬱でしかない。

「そういえばなんか王都が騒がしくない?」
「あれ、知らない? 会合の時期って要人もだけど、観光に来る人も多いから会合より少し前からお祭り騒ぎになってるんだよ」
「へぇ……」

 それで朝から騒がしかったんだ? 俺は情報通なはずの精霊だけど引きこもり生活をしていたから、この手のことは何も分かんない。

 だけど世界中の人に引きこもり生活をおすすめしたい。ずっと無心でいられるから楽だよ。あー、でも普通の人は暇になるのかな? 俺は暇になる時もあるけど大体永遠に寝ていられるから……

「……ちょっと俺、疲れてるかも。さっきから変なことしか考えてない気がする」
「お疲れ様だけど、変なことしか考えてないのはいつも通りじゃない? 頭が良い人は大抵いつも変なことを考えていると私は認識してるよ」
「それで言うなら自分にも全く同じ言葉が返ってくるってこと、忘れないでねー」
「私程度ならいくらでもいるよ。だけどナギサのレベルになってくると頭のネジが十本くらい外れてるんじゃないかなって思っちゃう」

 アリスいわく、同じ『頭が良い』でも種類があるらしい。そして俺は一周回って逆にちょっと貶してる部類に入るのだと。ほんとに意味が分からない。そんなこと考えてるのはたぶんアリスくらいだよ。だからアリス、君も俺と同じ枠に入るには十分なんじゃない?

「……平和だね」

 こんなどうでも良い話をしていられるんだから。数日前まで戦いの真っ只中にいたというのに。

「でもナギサ? これって嵐の前の静けさだよね。隠してるつもりかもしれないけど、私はちゃんと気付いてるから」
「何のことか分からないなぁ」
「ナギサから話してくれるまでは黙ってるよ。だけどいつまで経っても何も教えてくれないなら勝手に調べるからね」
「話す。近いうちに話すよ。お願いだから勝手に動くのだけはやめて。アリスは行動力がありすぎて怖い」

 こういう時に何も言わずに大人しくしていてくれる子が彼女なら楽だっただろうけど、それなら俺は好きになってなかったと思う。一緒にいて飽きちゃいそうだし自分の意見を伝えてくれなさそう。
 だから行動力があることに文句はないけど、危機感というものを持ってほしいかな。俺に負けず劣らずトラブル体質で大事なところで抜けてて、さらに言うと方向音痴なんだから。これは大事なことだからもう一度言うけどね? アリスは本当にヤバいくらい方向音痴。

 敵城視察とか言って迷子になって、そのまま捕まるなんてことになったら笑えないからそれだけは何が何でも阻止しないと。
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