【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

文字の大きさ
224 / 290
第3章 動き出す思惑

39 狙い定め

しおりを挟む
 ◇

「……えっ」
「やっほー。久しぶりだねぇ」
「きょ、今日もお休みかと思っていたのですが……」
「寝坊しちゃってこんな時間になったんだよ」

 約一ヶ月ぶりに学園に来た。とはいってもちゃんと朝から登校したわけではなく、ちょうどお昼時……つまり今俺がいる場所は学園の教室ではなく食堂なんだけどね。
 寝坊したというのは嘘。オールして、起きてきたアリスと話した後に寝ていたから。本当はやらないといけないことがあったんだけどねー。

「一応生存報告のために来たんだよー。急遽用事が入っちゃったからランスロットくん達にも顔を見せたら帰るつもり」
「そうなのですね。ご無事で何よりです。ランスロットは席を外していますがすぐに戻ってくるはずですよ」
「そっか」
「アリス嬢はご友人と一緒に過ごされるそうです」
「そう」

 なんだろう、セインくんに限らず俺がアリスと別行動してたら何をしているのか教えてくれる人が多い気がする。俺の気のせいなのかな? 俺とアリスは常に一緒に行動しているものだと思われてそうなのは考えすぎ……?

「ちなみに用事というのは?」
「んー、俺が嫌いなこと」
「……多すぎて分かりませんね」

 そんなことよりランスロットくん……いた。エリオットくんも一緒だね。二人とも昼食を取りに行ってたのか。

「お、ナギサじゃないか」
「ちょっとエリオットくん、目が怖い! 自分の名前を良く思い出してよ」

 完全に狙いを定められていた。『エリオットくん』を強調して言うと残念そうにしつつも諦めてくれたけどね。思っていたより大人しくしてくれて助かった。

 それはともかく、三人とも無事で良かった。パッと見た感じ、俺とそれなりに関わったことがある人達も含めて黒幕に目を付けられた様子はない。

「みんな、ありがとね。これからは俺が守れるから好きなように過ごしていいよ」

 三人の護衛に付けていた精霊達に声をかけると、一つ頷いてどこかに飛んでいった。四六時中彼らの傍にいてもらったわけではないけど、長期間他の種族と行動するのは大変だったと思う。精霊も他の種族と絡むことが増えてきたとはいえまだまだ慣れてはいないだろうから。

 他の種族といっても学園祭がきっかけだから、おもに人族と関わることが多いかな。魔族やエルフ族に関しては人それぞれって感じ。俺は元々人間だから他種族を相手にすると疲れるとかそういうのはない。

「一応聞いておくけどさ、怪しい人物との接触はなかった?」
「俺はないな。母さんとアリスも」
「右に同じ」
「それは良かった。セインくんの方は?」
「僕も大丈夫でしたよ。何もありませんでした」
「そっか。俺はこの後すぐ抜けるけど、また明日からは一緒にいると思うからそのつもりでね」

 三人の返事を聞いて静かに微笑んだナギサに安心した彼らは普段の会話へ戻った。そんな彼らが気付くことはなかっただろう。親しげに話をしている三人の姿を見て、まるで獲物を狙い定めるように鋭く目を細めたナギサの姿に。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

神様の人選ミスで死んじゃった!? 異世界で授けられた万能ボックスでいざスローライフ冒険!

さかき原枝都は
ファンタジー
光と影が交錯する世界で、希望と調和を求めて進む冒険者たちの物語 会社員として平凡な日々を送っていた七樹陽介は、神様のミスによって突然の死を迎える。そして異世界で新たな人生を送ることを提案された彼は、万能アイテムボックスという特別な力を手に冒険を始める。 平穏な村で新たな絆を築きながら、自分の居場所を見つける陽介。しかし、彼の前には隠された力や使命、そして未知なる冒険が待ち受ける! 「万能ボックス」の謎と仲間たちとの絆が交差するこの物語は、笑いあり、感動ありの異世界スローライフファンタジー。陽介が紡ぐ第二の人生、その行く先には何が待っているのか——?

異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん
ファンタジー
主人公は俺、43歳独身久保田トシオだ。 人生に疲れて自ら命を絶とうとしていた所、それに失敗(というか妨害された)して異世界に辿り着いた。 最初は夢かと思っていたこの世界だが、どうやらそうではなかったらしい、しかも俺は魔物使いとか言う就いた覚えもない職業になっていた。 おまけにそれが判明したと同時に雑魚魔物使いだと罵倒される始末……随分とふざけた世界である。 だが……ここは現実の世界なんかよりもずっと面白い。 俺はこの世界で仲間たちと共に生きていこうと思う。 これは、そんなしがない中年である俺が四苦八苦しながらもセカンドライフを楽しんでいるだけの物語である。 ……分かっている、『図鑑要素が全くないじゃないか!』と言いたいんだろう? そこは勘弁してほしい、だってこれから俺が作り始めるんだから。 ※他サイト様にも同時掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄
ファンタジー
女神に頼まれ魔王を討ち倒したご褒美に、当人の希望通りの人生に転生させてもらった主人公。 赤ん坊から転生スタートします。 コメディ要素あり、ほのぼの系のお話です。 参考図書 復刻版鶴の折り紙・ブティック社

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

処理中です...