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第3章 動き出す思惑
53 二人の関係
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「……聞かれたから私も言うけど、ナギサ様こそ子供は作らないの? 精霊は王族の概念がないんだっけ?」
「そのはずなんだけどねー……なんか、世界が王族を作れとか言ってきたんだよ。今後俺より強い精霊王は現れないだろうから、強い血を残しておきたいんだってさ」
珍しくレンが踏み込んだことを聞いてきた。お互いにここまで攻めた話は中々しないかもね。興味深そうに見てくるあたり、もしかするとずっと気になっていたのかもしれない。
「ご婚約者はアリス嬢だったよね。世界……にはなんて言ったの?」
「断ったよ。アリスと婚約してから同じ話をされた時は検討するって言ったけど。結婚前に決めることではないし、結婚してからも俺たちのことなんだから世界に口出しされる筋合いはない」
「……婚前に妊娠はさせないようにね?」
「んー……あのさ、今の話からなんでそうなる? 責任は取れるけど今のアリスは一応学生だからね? そんなことしたらシルフにもエルサちゃんにも怒られるし、せめて成人するまでは待つよ」
「ごめんね、言い方からして王族というものを作るかが検討というだけであって、子供は作る予定なんだろうなと思って」
……今日のレン、ほんとにどうした? 何かあった? 別にこれくらい構わないけど、普段レンにこんな話題を振られることはないから違和感がすごい。
「……もう、ノーコメントで。すべては結婚後にアリスと要相談。それ以外のことは考えてない。以上」
「アリス嬢は愛されているんだね。ナギサ様の性格からして政略結婚ならここまで大事にしないだろうし」
「そもそも好きでもない人と結婚しないよ。そこに関してはレンと同じ考え方。それから、俺はこれでも一途な方だし、結婚を決めている人を愛してないわけがないよ」
政略結婚は本人達の関係や性格、環境などにもよるけど、恋愛結婚に比べたらあまり幸せそうには見えない。というか苦労しそう。俺やアリスのご両親は恋愛結婚だったけど、周囲は政略結婚の人の方が多かった。そういう人達は俺からするとあまり幸せそうには見えなかったんだよね。もちろん恋愛結婚でも幸せになれないことだってあるだろうけど。
俺は生き方は決まっていても生涯を共にする相手くらい自分で選びたかった。レンがいまだに婚約者すらいないのも同じような理由だろうね。婚約者候補は山ほどいるらしいけど。
「…………」
「ナギサ様」
「ん?」
「ナギサ様が王族を作りたくない一番の理由、当てても良い?」
「いいよ」
「自分と同じ想いをさせたくないから、なんじゃない? ナギサ様は責任感が強いから、ご両親に家を継がなくても構わないと言われていたのにも関わらず逃げなかった。それは先祖も同じように生きてきたのに自分だけ逃れるわけにはいかないから」
レンは俺の前世の話を知ってる。もしかすると、レンはこの世界の誰よりも本音で話せる相手かもしれない。境遇が似てるっていうのと、気が合うんだよね。
「うん」
「知らない人はみんな口を揃えて言うよ。『恵まれた環境にいるあなたが羨ましい』ってね。普通であることがどんなに幸せなことか知らないから。それは仕方ないことだけど。……人より大きな責任がある立場だと、親の愛や言葉は時に子供を苦しめるしその逆もある。特にナギサ様のご両親は絶対に苦労したよね」
「だろうねぇ。忙しい両親に迷惑なんて絶対にかけたくなかったから全部一人で抱え込んでいたし」
愛しているからこそ抱えているものを吐き出してほしい両親と、愛されていることを知っているからこそ沈黙を貫いていた俺。絶対にお互いの想いが交わることはない、究極のすれ違いだよねぇ……
「結局何が言いたいのかって言うとね? ナギサ様は王族を作った場合、跡取りとなる子供が成長したら自分と同じ想いをさせることになると思ってるでしょ。だから一時の感情でそう言う立場に立ちたくない」
「そうだね。難しい問題だとは思うよ。だけど俺は今ですでに精霊王。それこそ俺一人の気持ちで判断できる立場ではないんだよねー……世界は一応俺の主だし」
「大変なのは分かるけど、話くらいは聞いてあげるから悩みがあるのならちゃんと言うんだよ。代わりに私の話も聞いてもらうけどね?」
「はいはい、ありがとね」
レンの悩みは本当に悩んでるの? ってくらい幸せそうなものばかりだけどね。まあ精霊やアリスの前では弱いところを見せたくないっていう俺のために話を聞いてくれて、色々と協力もしてくれるんだからそれくらい喜んで聞くけど。
「そのはずなんだけどねー……なんか、世界が王族を作れとか言ってきたんだよ。今後俺より強い精霊王は現れないだろうから、強い血を残しておきたいんだってさ」
珍しくレンが踏み込んだことを聞いてきた。お互いにここまで攻めた話は中々しないかもね。興味深そうに見てくるあたり、もしかするとずっと気になっていたのかもしれない。
「ご婚約者はアリス嬢だったよね。世界……にはなんて言ったの?」
「断ったよ。アリスと婚約してから同じ話をされた時は検討するって言ったけど。結婚前に決めることではないし、結婚してからも俺たちのことなんだから世界に口出しされる筋合いはない」
「……婚前に妊娠はさせないようにね?」
「んー……あのさ、今の話からなんでそうなる? 責任は取れるけど今のアリスは一応学生だからね? そんなことしたらシルフにもエルサちゃんにも怒られるし、せめて成人するまでは待つよ」
「ごめんね、言い方からして王族というものを作るかが検討というだけであって、子供は作る予定なんだろうなと思って」
……今日のレン、ほんとにどうした? 何かあった? 別にこれくらい構わないけど、普段レンにこんな話題を振られることはないから違和感がすごい。
「……もう、ノーコメントで。すべては結婚後にアリスと要相談。それ以外のことは考えてない。以上」
「アリス嬢は愛されているんだね。ナギサ様の性格からして政略結婚ならここまで大事にしないだろうし」
「そもそも好きでもない人と結婚しないよ。そこに関してはレンと同じ考え方。それから、俺はこれでも一途な方だし、結婚を決めている人を愛してないわけがないよ」
政略結婚は本人達の関係や性格、環境などにもよるけど、恋愛結婚に比べたらあまり幸せそうには見えない。というか苦労しそう。俺やアリスのご両親は恋愛結婚だったけど、周囲は政略結婚の人の方が多かった。そういう人達は俺からするとあまり幸せそうには見えなかったんだよね。もちろん恋愛結婚でも幸せになれないことだってあるだろうけど。
俺は生き方は決まっていても生涯を共にする相手くらい自分で選びたかった。レンがいまだに婚約者すらいないのも同じような理由だろうね。婚約者候補は山ほどいるらしいけど。
「…………」
「ナギサ様」
「ん?」
「ナギサ様が王族を作りたくない一番の理由、当てても良い?」
「いいよ」
「自分と同じ想いをさせたくないから、なんじゃない? ナギサ様は責任感が強いから、ご両親に家を継がなくても構わないと言われていたのにも関わらず逃げなかった。それは先祖も同じように生きてきたのに自分だけ逃れるわけにはいかないから」
レンは俺の前世の話を知ってる。もしかすると、レンはこの世界の誰よりも本音で話せる相手かもしれない。境遇が似てるっていうのと、気が合うんだよね。
「うん」
「知らない人はみんな口を揃えて言うよ。『恵まれた環境にいるあなたが羨ましい』ってね。普通であることがどんなに幸せなことか知らないから。それは仕方ないことだけど。……人より大きな責任がある立場だと、親の愛や言葉は時に子供を苦しめるしその逆もある。特にナギサ様のご両親は絶対に苦労したよね」
「だろうねぇ。忙しい両親に迷惑なんて絶対にかけたくなかったから全部一人で抱え込んでいたし」
愛しているからこそ抱えているものを吐き出してほしい両親と、愛されていることを知っているからこそ沈黙を貫いていた俺。絶対にお互いの想いが交わることはない、究極のすれ違いだよねぇ……
「結局何が言いたいのかって言うとね? ナギサ様は王族を作った場合、跡取りとなる子供が成長したら自分と同じ想いをさせることになると思ってるでしょ。だから一時の感情でそう言う立場に立ちたくない」
「そうだね。難しい問題だとは思うよ。だけど俺は今ですでに精霊王。それこそ俺一人の気持ちで判断できる立場ではないんだよねー……世界は一応俺の主だし」
「大変なのは分かるけど、話くらいは聞いてあげるから悩みがあるのならちゃんと言うんだよ。代わりに私の話も聞いてもらうけどね?」
「はいはい、ありがとね」
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