悠久の城

蓬屋 月餅

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悠久の城

【届け物】

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同居生活。または同棲生活。
 自分以外の誰かとひとつ屋根の下で寝食を共にする生活。
 そうして誰かと暮らしていると、時には自分にとっては一体何の目的で使うものなのかが分からないような荷物が届くことがある。
 使用用途の見当がつかないもの、だ。
 いったいなぜ購入したのかが不思議になるようなものである。
 ただ単にルームシェアなどをしている友人であれば疑問に思うだけで終わることだってあるかもしれない。
 だがその相手が恋人であったりすると、どうしたってその荷物のことが気になってしまうものだろう。


ーーーーーー


 ベッドが壊れたことと、実弟紹人つぎとから部屋をシェアさせてくれと頼まれたことをきっかけに同棲生活を始めることになった真祐さねまさ穏矢しずなお
 彼らは実際に同居を始めて数ヶ月が経っているが、よく一般的に言われているようなトラブルに見舞われることも無く、すでに快適な日々を送るようになっていた。
 元から生活スタイルが似ている彼らにはそもそも衝突する材料(洗濯の仕方などといった生活におけるこだわり)がほぼないので、一緒に暮らすことへのストレスもないのだ。
 というよりメリットの方が圧倒的に多いのが事実だった。
 真祐も穏矢もそれぞれ仕事上やることが多く多忙なので、2人で暮らしている方が双方の生活を補い合うことができて何かと良いのである。
 とりわけ穏矢の場合は仕事に一度熱中すると食事をゼリー飲料で済ませるようになるなど健康にあまり気を遣わなくなってしまいがちで、ただでさえ瘦せ型だというのにそれに輪をかけていることもしばしばだったのだが、真祐はそんな穏矢のために料理をしたり会社帰りにいくつかの総菜を買って帰ったりするなどして献身的なサポートをしている。
 自分1人であれば適当にしてしまうことでも愛する者のためにと思えばできる…それもこうした同居における良い点と言えるだろう。
 そのおかげもあって、穏矢は真祐と再会する前よりもずっと健康的になっているくらいだ(とはいえやはり痩せ型であることには変わりないのだが)。
 休日にも、リビングで各々仕事に関する作業をしたりしながらちょっとしたことを共有し合って暮らす2人。
 まさにメリットしかない生活、過ごし方。
 彼らのありふれた毎日。

 そんなある日のことだった。

 それぞれがリビングで黙々と作業をしていたところ、インターホンの音が鳴り響き、真祐さねまさ宛の荷物が届いたという知らせがあったのだ。
 ちょうど席を外していた真祐さねまさの代わりに応対した穏矢しずなお
 リビングに戻ってきた真祐にどうやら荷物が届いたらしいということを伝えると、真祐はその荷物の心当たりについて少し考える。

「荷物?なんだろ…あぁもしかしたら……」

 そう言いかけたところで玄関に荷物が届き、受け取りに行った真祐。
 彼が少ししてからリビングに持ち込んできたのは少々大きめのダンボールなどだった。
 穏矢しずなおがなんとなくその荷札を見ると、そこには京都から発送された荷物であるということと、送り主が『古平』という名字の人物であることが示されている。
 京都といえば真祐の出身地だ。そして真祐と同じ名字…。
 穏矢しずなおが“もしかして”と思っていると、荷札を剥がして箱を開けながら真祐は言った。

「俺の実家からだな、野菜とかが届いたらしい。そういえばこの間『近々荷物を送るから』っていうような連絡が来てたんだった。野菜と、あと他には漬物とそれから…なんだこれ、お菓子か?なんでいまさらこんな京都の土産菓子なんか送ってきてんだ、限定品だからか?」

「なぁ穏矢しずなお、ちょっとこれ開けてみてよ。ちょうどいいからこれでお茶にでもしよう」

 真祐さねまさから軽く手渡された菓子の箱に目を瞬かせつつ「これ、真祐の伯母さんから?」と訊ねる穏矢。
 すると真祐は「いや、俺の母親が送ってきたんだ」と荷札を指した。

「送り主の名前は…俺の父親になってるけど、荷物を送るって連絡してきたのは母親だし。まぁこの中身を見る限り父親が送ったとは考えられないからな」

 ははっと笑いながら次々と箱の中から野菜や銘菓などを取り出していく真祐。
 だが穏矢は覚えていた。真祐が高校卒業後の当時、通う大学をわざわざ地元である京都から離れたところにしたのは実家との折り合いが悪くなっていたからだということを。
 家族とは距離を置くようになっていて、母親の姉である伯母としか連絡を取っていなかったはずだということを。
 彼の連絡先を知るのは伯母1人のみであり、両親や実の兄姉にも知らせていないと言っていたはずだ…ということを。

「え…でもご実家とは真祐さねまさって…」

 穏矢が訊きづらそうにしていると、真祐は何ということもないような様子で「和解したんだな、これが」と話す。

「別に喧嘩別れをしたとかってわけじゃなかったし“和解”っていうのも変っちゃ変なんだけどさ。でも3年くらい前になるかな?伯母さんの方から『俺の母親が俺の連絡先を知りたがってる』って連絡があって、それからちょくちょくやり取りするようになったんだ。…で、たまにこうやって荷物も送ってくるようにもなったってこと」

 穏矢は不思議に思った。
 というのも、かつて真祐から訊いた話では彼が実家に居づらくなったそもそものきっかけは家族に自分の恋愛対象が同性であるということを知られたから、だったからだ。
 長年疎遠だったその家族が真祐に突然連絡をしてくるとは…一体何があったのか。
 よその家庭事情のことに首を突っ込むべきではないと思いつつも気になって仕方がない穏矢。

(もしかしたら真祐はご家族に僕のことを話してないのかも。ご家族は僕のことを知らないからこうやって…)

 すると真祐はそんな穏矢の考えを読んだかのように「いや、俺の母親は俺が穏矢と一緒に暮らしてるってこと知ってるよ」と話した。

「俺の恋人が穏矢っていう男だってことは、母親も知ってる」
「え…はっ!?」
「俺の母親ってそういうのに鋭い人でさ、やり取りしてる中でなんとなく俺に恋人がいるってことを察してたんだろうね。直接訊いてくることはなかったんだけど多分探る機会をうかがってたんだと思う。…で、野菜とかはどれくらい送っていいんだって聞いてくるから『一緒に暮らしてる人がいるからいくらでもいい』って言ったんだ。その相手が穏矢って人だってこともね。“一緒に暮らしてる人が俺にとってどういう相手なのか”っていうのは俺の母親だって分かってるさ」

 ほら、と見せられた母親とのメッセージ画面にはたしかに『多めに送ったから穏矢しずなおさんと一緒に食べて』というような文がある。
 真祐はそこでハッと気づいたように「そうか、このお菓子は穏矢しずなおにも京都の銘菓を食べてもらいたいっていうことで送ってきたんだな」と1人納得した。
 なぜいきなりこんなにも関係が良好なものに修復されたのか。
 「何をきっかけに真祐のお母さんは…?」と穏矢がますます不思議がると、真祐は「それは俺の曾祖父ちゃんが関係してるんだよな~」と愉快そうに笑った。

「ひい…おじいさん?」
「そう、俺の母親のお祖父ちゃん」
「…?」

 余計に訳が分からなくなる穏矢しずなおだが、真祐は「きっと俺の曾祖父ちゃんのことを訊いたらびっくりするぞ」と柔らかく笑いかける。
 そして「とりあえずそれについてはおいおい話すとして…この野菜どうする?とりあえず今夜はカレーにでもしようか」と段ボールをたたんで片付けるのだった。

「カレーにすれば付け合わせのサラダも作れるし、たくさん野菜を使えるよ。それか紹人つぎとのところにお裾分けしてもいいよな。どう?あの料理好きな俺らの弟なら喜んで受け取ってくれると思うんだけど」

 まるでたった今届いた荷物を全て片付け終えたかのように振舞う真祐。
 しかし、穏矢しずなおが疑問に思った“届け物”は京都からのその荷物だけではなかったのだ。
 なんなら、同時に届いたもう1つの荷物の方が謎だらけである。
 それは誰かから贈られてきたものではなく、明らかに真祐が購入したものだった。

「…その“ペットシーツ”は何のために買ったの」

「そんなの普通使うことないでしょ。何?犬でも飼いたいってこと?」

 野菜などと共に配達されてきたその荷物(というより包装)には『吸水シート』『大型犬にも対応』という文言が書かれていて、大型犬はおろか小動物でさえ飼育していないこの部屋にはどうも不釣り合いなもののように見えて仕方がない。
 なぜこんなものが届いたのか。いや、買ったのか。
 それを追及する穏矢しずなおだが、真祐は特に気にすることもなく「何って、セールで安くなってたから買っただけだよ」と答える。

「いつもの半額だったんだよ、そりゃあもうお買い得でしょ。いつものネットショップで買ったのに京都からの荷物と一緒に届いたってことは、配送は普通の宅急便になってたんだな」
「いや…いくら安くなってたからって…使わない物なんか買ってどうすんの。何のつもり?」
「何って、もちろん使うから買ったんだよ、使いもしないものを買うわけないだろ? “備えあれば憂い無し”とも言うしさ。しばらくはその機会がないっぽいのが残念だけど、でもまぁこれ1個くらいそんなに場所をとるものでもないんだし」
「はぁ…どうせろくな考えじゃないんだろ、しょうもない買い物するなんて」
「な、何だよ!ひどいな、そんなことないって!絶対にあった方が便利なんだってば!」

 呆れている穏矢とそれに反論しながらもこの日常の最中に起こるちょっとした小競り合いが楽しくてたまらないというように笑う真祐。
 吸水シートはそれから真祐がどこかへと片付けてしまったので、穏矢はそれっきりその存在自体を忘れてしまった。
 真祐の実家から届いた京野菜などはその日のうちにほとんどがカレーやサラダ、そしてその他の料理、常備菜となって彼らの食卓を彩ったのだった。

 それから仕事が繁忙期を迎えてベッドに入るのも別々になってしまうほど多忙を極めてしまった2人。
 彼らが元通りの平穏を取り戻すことができたのはしばらく後のことだった。


ーーーーー


「はぁ…やっとゆっくりできる夜が来たな…」

 ベッドサイドランプが煌々と照るベッドで四肢を絡みつかせながら熱烈に口づけ合う2人。
 ここのところ、忙しくしていた彼らにとっては久しぶりに同じタイミングでベッドで過ごすことができるだ。
 先に寝入ってしまっている相手の寝顔を眺めながら眠るのも、うとうととしている相手を抱き寄せながらくっついて眠るのも、どちらもなかなかに良いものだが…しかしやはりこうして絡み合いながら過ごす時間というのは格別である。
 彼らの情熱はまだ大学生だった付き合い初めの頃と比べてもまったく衰えていないどころか、むしろ成熟した大人の、アダルティな雰囲気を纏ったおかげでより一層しっとりと濃厚なものになっている。
 2人一緒に多幸感に包まれるこの時間が彼らにとってはとても大切だ。
 飽きるなどということはありえない。
 互いの凸と凹が互いの凹と凸の形にすっかり契合している今、それらがもたらす快感というのは文字や言葉では表現することができないほどに素晴らしいのだから。

「もう…挿入れて大丈夫だから…はやく、真祐………」

 たっぷりと時間を掛けながら丁寧に愛撫していると、痺れを切らしたらしい穏矢は自ら寝間着のズボンと下着を蹴って脱ぎ捨て、両足を真祐に絡ませてきた。
 とっくにはだけていた胸から下腹部、そしてビンと勃っている彼の陰茎が真祐の眼前に惜しげもなく晒しだされている。
 いくらかは健康的になった穏矢のその肉体はいつ何時であっても真祐の興奮を猛然と掻き立ててしまうほどに妖艶だ。
 …穏矢の言う通り、彼の秘部はすでに随分と柔らかく解されていた。

「穏矢…」
「さ…さねまさ、あっ……」

 ゆっくりと挿入されてゆく真祐の肉棒は元から穏矢の体内に納めるためのものだったかのように隙間なくぴったりと合致していて、それから始まる抽挿での気持ちよさは それこそになってしまうくらいだ。
 心から信頼し、愛している者とのこうした触れ合いは何事にも代えがたいものだろう。
 無防備な状態で何もかもをさらけ出せる相手、しかも自身のあられもない姿や声を存分に見せる、聴かせることができる相手というのは そうそういるものではない。
 真祐にとっての穏矢はそういう存在であり、穏矢にとっても真祐はそういう存在だ。
 何の憂いもなく体を重ねることができるとその分大きな快感を得ることができる上に“愛”をも感じることができる…それは互いの絆を深めるのにも必要で重要なことだろう。

「あっ…あっ、い、イッちゃ…イッちゃいそ……ぅっ……」
「俺も…しずなお…」
「さねまさ、ぁ…っ……!!!」

 時々体位を変えながらひたすら絡み合った2人は、そうしてほどなくして今夜1度目の絶頂を迎えるに至った。
 徐々に高まる興奮とそれがはじけて がくがくと震える感覚、そしてその後のうっとりとしたとろけるような心地…それらをまだ火照りの残るベッドの上で静かに味わうことの素晴らしさは他では決して得られないものだ。
 いつも彼らは絶頂を迎えた後は互いに口づけをしたり体をなぞり合ったりしながらその余韻に浸っている。
 そのまま落ち着きを取り戻すこともあれば、情熱が再燃することだってある。
 どちらの方がより多いかといえば…まぁ2人は相変わらずお盛んな男達であるというところだ。

 一通り真祐の頬や額や耳元へと口づけをし、くったりと全身をベッドに預けながら自らの肩や腕や鎖骨の辺りへの真祐からの口づけを受ける穏矢。
 『せっかくの夜なのにこれで終わりは物足りない』
 そんな風に思いながら彼はまだ体の中に残っている真祐のに頬を染める。
 するとそんな穏矢の考えを読み取ったかのように、真祐は体を起こしたのだった。
 こういうところでの考えがピッタリ合っているのも、2人の生活と関係が良好を保てている大きな要因の1つであるに違いない。
 穏矢は目を閉じながら自らの中に準備を再び整えた真祐のモノが挿入はいってくる感覚に身を打ち震わせる。
 この次に始まるのは、あの素晴らしい心地をもたらす抽挿だ。
 …だが、彼が実際に次に感じたのは体内のあの一部分をぐりぐりと刺激される感触ではなく、かさかさという妙な音と腰裏を軽く持ち上げられる感覚だった。

「…?」

 穏矢が目を開けてみると、なんと真祐はどこから取り出してきたのか分からない何やら畳んである小さなものを広げて、1枚、さらに1枚と彼の体の下に敷こうとしているところだった。

「…??」

 すっかり訳が分からないままなすがままにされていた穏矢は、少ししてからようやく真祐が広げたのが、いつか届けられていたあのだったことに気付く。
 なぜこんなものを敷きだしたのか。
 それについて訊ねようとしたところで、真祐は口を開こうとする穏矢を遮るかのように、突然穏矢の下腹部に手を伸ばし、そして一度絶頂を果たして大人しくなりかけていた彼の陰茎を手で包み込んだ。

「あっ……」

 一度射精をした後の、まだ完全には興奮がおさまりきっていないそこはとても敏感な状態であり、手で握られただけでも甘い声が漏れ出してしまうほどだ。
 こうして勃起を促してくるからには抽挿もすぐに始まるだろうと、頭の下の枕を握りしめて備える穏矢。
 しかし、そんな彼の予想に反して、真祐は手淫を止めることはなかったのだった。
 腰を動かして体内を攻めるのではなく、ひたすら手で陰茎を擦ることに専念している。

「あっ…ちょっ、と、やめッ……」

 いつも以上に敏感になっているところを直接擦られると、それによって得られるものは快感というよりも猛烈なくすぐったさ、そして苦痛だ。
 体内から攻められるのとは違って神経そのものを弄られているかのようにすら思える辛さ。
 あまりのその辛さに身を捩って逃れようとするものの、穏矢の太ももは真祐の太ももの上に乗せられているせいで半ば自由を奪われており、ほとんど意味なく足や体をバタつかせることしかできない。
 ようやく手淫が止められたかと思っても、それはローションを追加されるわずかな間だけのことで、今度はさらにヌルヌルとした素早い手淫にさらされてしまう。
 まるで拷問だ。
 逃れることのできない苦痛に満ちたそれを味わわされている穏矢は無意識のうちに足に結構な力を入れてしまっていて、太ももの内側には筋が浮かび上がっている。
 腰がわずかに浮いているために真祐の立派なものを咥え込んだ秘部までもが真祐の眼前にさらけ出されていて、ベッドの上にはとんでもない痴態がひろがっている。
 しかし、穏矢はとっくのとうにそんな自分の状態を気にすることはできなくなっていた。

「ね…っ、くすぐった……や、やめて、それっ、ちょっ…と……っ!!」

「あっ、ああっ、あっ!!~~~っ!!!」

 ついにくすぐったさと辛さを通り越し、再び激しく勃起しだした穏矢の陰茎。
 真祐はその強引に勃起させた穏矢の陰茎の首のところを支えもつと、まるでとどめを刺すかのように、先端を手のひらでぐりぐりと刺激し始めた。

「ぅあっ!!!」

 容赦なく与えられる猛烈な刺激に目を白黒させながら、穏矢はやがていつもとは違うが体の奥底から湧き上がってくるのを感じ、激しく動揺しながら懇願するように言い出した。

「無理…むりっ、やめ、やめて…!イク、イっちゃうから、うぁぁッ…!!」
「穏矢、気持ちいい?」
「きもちい、きもちいから…!!イイからもうッ…イっちゃう、出ちゃうからぁっ!!!」
「イっていいよ、ほら」
「だめっ、でちゃう…!!!違うの出る!!!やめて!違うの出ちゃうから!放して!!でちゃ、出ちゃう!!!だめだめだめ、やだっ、やだぁ…!!!」

 それでもなお止まない真祐の手淫。
 ついに穏矢は一切逃れることを許されなかった。

「イグ…イぐイグ、イっちゃうう…ッ!!!」

「~~~っ!!!!!///」

 ほとんど声すらも出せない状態になった彼は、うわ言のようにそう口にした後、体を小刻みにガクガクと激しく震わせた。
 放ったのは白濁ではない。透明な、サラサラとした液だ。
 勢いよく出始めたそれは次第にちょろちょろと穏矢の腹の上に広がり、そして溢れるかのように体の横へと伝って流れていく。
 それらはすべて下に敷いてある大きな吸水シートへと染み込んでいった。
 水に濡れながら激しく起伏を繰り返す穏矢の腹部の様子はありえないほどに妖艶で、淫らで、いやらしい。
 それだけではない。
 彼は液を放ちながらも体内を激しく収縮させ、中に挿入はいっている真祐の男根をキツく締め上げている。

「すご…たくさん吹いちゃったね、潮。気持ちよかった?」
「……だから、やめろって言った…のに………」
「ははっ…まだ出てる」

 左右に大きく開かれた足のすべてをあけすけに見せつけている大胆さとは対照的に腕で隠されている顔。
 その隙間から覗く、紅潮しきった頬。
 興奮せずにいられるわけがないだろう。
 真祐は穏矢に一息つかせる間も与えることなく、猛々しく腰を動かして攻めていった。

「っあ!!うあぁ…ッ!!!」

 真祐に一突きされるごとに、穏矢は先端からまた透明な液をぴゅっと飛ばす。
 何もかもがとろけておかしくなってしまいそうな心地に包まれる2人。
 それからもしばらく情熱が醒めることなく、彼らは快感をひたすら貪り合った。


ーーーーー


 すっかり忘れ去っていた吸水シートの存在。
 それがまさかこんな目的のものだったとは。
 穏矢はぐったりとベッドに体を横たえながら、自らの髪を嬉しそうに撫でている真祐に鋭い視線を向けた。

「こんなことのために…やっぱりろくでもない買い物だった……」

 恥からくる少々怒ったような口ぶり。
 真祐はそれにもひるまず「でも、気持ちよかっただろ?」と満足そうに応える。

「後片付けも楽だし…“出しても大丈夫だ”って思うとその分大胆にもなれる。我慢する気持ちよさもあるにはあるけど、こういう風にするのも……」

 なだめるように頬へと口づけてくる真祐。
 穏矢が軽く握ったこぶしでトンッと肩を小突くと、真祐は「あぁっ、服も着てないのに…素肌は繊細なんだぞ」と大げさに反応していたずらっぽく笑った。
 …そろそろシャワーを浴びてさっぱりしたい頃合だ。
 真祐と共にベッドから降りた穏矢は改めてベッドの上の惨状に目を遣った。
 吸水シートには役目を果たした痕跡がありありと浮かんでいて、直視しているのが恥ずかしくなってきてしまう。
 潮を吹いてしまった。吹かされてしまった。
 それに至るまではなかなか拷問のような辛さもあって大変ではあったが…しかし信じられないほど気持ちがよかったのも事実である。
 穏矢は恥と若干の悔しさと大きな満足感に包まれながら吸水シートを片付ける。
 大きなシートを数枚敷いていたおかげで、ベッドの上は少しも汚れていない。

「このシートさ、大容量のやつだったからまだまだあるんだ」

「…また使おっか」

 後ろから抱きしめるようにしつつそう囁いてくる真祐に、穏矢は反論することができず黙りこくってしまった。
 穏矢は本当に嫌なことやダメなことがあればはっきりと言う人間である。それは真祐が最もよく知っているだろう。
 穏矢の沈黙は、それはすなわち肯定だ。

「あぁもうほんとに…穏矢ってば……」

「…エロくて最高なんだから」

 真祐は穏矢の真っ赤になっている耳たぶに齧りつきながら嬉しそうに微笑んだ。
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