55 / 68
第17話 地獄絵図が広がって
しおりを挟む
「なんだよ、これ……」
俺は開いてしまった口が塞がらなかった。
窓の外から見える光景。それはまさしく地獄絵図だ。
「一体なにが起きているんだ」
外の光景は火柱が幾つも立っていた。
あまりの熱気で街が先に焼けてしまいそう。
それほどまでに酷暑の世界が広がると、操られた人達は何故か次々に日柱へと向かっていく。
踊り狂ってゾンビのようで、気持ちが悪い。
まさに発狂物の世界には、操られた人達の断末魔が木霊する。
耳障りで今すぐ耳栓がしたいのだが、そんな真似できない。
「スーレット様~」
「スーレット様ために~」
「この身を、この身をスーレット様のため~」
ヤバい、とんだ信者の連中が現れた。
しかも火柱の方に向かっている。
ドクンドクンと心臓の鼓動が脈打つと、最悪の事態はすぐに現実になる。
「おい、まさかアイツら!」
街の人達は火柱の中に消えた。
全身が黒い影になり、命が揺らめいている。
轟々と燃え盛る炎に包まれると、声が狂気に変わった。
「「「スーレット様~!!!」」」
一瞬にして俺の心を無力にした。
ポキッと折れてしまいそうになるも、その矛先をスーレットに向ける。
睨み付けた視線を突き付けると、殺意の牙を剥き出しにした。
「スーレット、お前!」
「ははははは! これが私の策だよ。人の命など、いくら捨てても構わない。全ては私のため、行くはベルファー様のため。これは人の命の価値だとは思わないかい?」
「思わない!」
「全くお前は何処まで行っても人間だ。こんな腑抜けた人間に私の主人が……心底腹立たしい」
スーレットは畜生だった。
人間を使い捨ての道具のように扱っている。
いや、それが魔族らしい。コウモリの羽を広がると、今度はミュシェル達を見た。
「どうだ、これがお前達の守って来た街だ」
「……酷い」
「酷い? お前達が無力だっただけだろう?」
「くっ。主よ、我が祈りを捧げ、全てを貫く槍となれ—聖槍!」
ミュシェルは煽るスーレットに魔法を放つ。
気持ちを考えれば仕方が無いが、杖を突き出し槍に変わるも、スーレットには届かない。
カキン!
「ど、どうして……」
「私には効かない。残念だったな、ミュシェル!」
スーレットは防御することもなく、体で攻撃を受け止めた。
一体何が起きたのか、初見では分からない。
明らかに防御力が上がっていて、スーレットは生身の状態でもミュシェルを圧倒する。
「私に攻撃を仕掛けてくれて感謝するよ。おかげで逃がさずに済みそうだ」
「はっ!? ぬ、抜けない」
「私の血肉は既に槍を捉えている。死した贄達の恨み、その身で受けるがいい! 緋色の呪拳!」
ミュシェルは杖を奪われ、逃げることができない。
その状態で放たれるスーレットの右拳は異様だ。
禍々しい紫色の炎を宿し、呻き声を上げた人達の顔で埋め尽くされている。
「ミュシェル!」
「ヤバいな、こうなったら……」
ミュシェルの父親が必死に叫んだ。
けれどミュシェルが逃げる時間は無く、拳が先に振り下ろされる。
死を覚悟したミュシェルは目を瞑った。
もう助からない。炎に飲まれる自分を想像する。
それでも俺は必死に抵抗した。
未だに突破口は見えないが、それでも俺がやることは変らない。
手には鎖を握ると、鋭い鉤爪が付いた方をクルクル振り回し、スーレット……ではなく、ミュシェルに投げ付けた。
俺は開いてしまった口が塞がらなかった。
窓の外から見える光景。それはまさしく地獄絵図だ。
「一体なにが起きているんだ」
外の光景は火柱が幾つも立っていた。
あまりの熱気で街が先に焼けてしまいそう。
それほどまでに酷暑の世界が広がると、操られた人達は何故か次々に日柱へと向かっていく。
踊り狂ってゾンビのようで、気持ちが悪い。
まさに発狂物の世界には、操られた人達の断末魔が木霊する。
耳障りで今すぐ耳栓がしたいのだが、そんな真似できない。
「スーレット様~」
「スーレット様ために~」
「この身を、この身をスーレット様のため~」
ヤバい、とんだ信者の連中が現れた。
しかも火柱の方に向かっている。
ドクンドクンと心臓の鼓動が脈打つと、最悪の事態はすぐに現実になる。
「おい、まさかアイツら!」
街の人達は火柱の中に消えた。
全身が黒い影になり、命が揺らめいている。
轟々と燃え盛る炎に包まれると、声が狂気に変わった。
「「「スーレット様~!!!」」」
一瞬にして俺の心を無力にした。
ポキッと折れてしまいそうになるも、その矛先をスーレットに向ける。
睨み付けた視線を突き付けると、殺意の牙を剥き出しにした。
「スーレット、お前!」
「ははははは! これが私の策だよ。人の命など、いくら捨てても構わない。全ては私のため、行くはベルファー様のため。これは人の命の価値だとは思わないかい?」
「思わない!」
「全くお前は何処まで行っても人間だ。こんな腑抜けた人間に私の主人が……心底腹立たしい」
スーレットは畜生だった。
人間を使い捨ての道具のように扱っている。
いや、それが魔族らしい。コウモリの羽を広がると、今度はミュシェル達を見た。
「どうだ、これがお前達の守って来た街だ」
「……酷い」
「酷い? お前達が無力だっただけだろう?」
「くっ。主よ、我が祈りを捧げ、全てを貫く槍となれ—聖槍!」
ミュシェルは煽るスーレットに魔法を放つ。
気持ちを考えれば仕方が無いが、杖を突き出し槍に変わるも、スーレットには届かない。
カキン!
「ど、どうして……」
「私には効かない。残念だったな、ミュシェル!」
スーレットは防御することもなく、体で攻撃を受け止めた。
一体何が起きたのか、初見では分からない。
明らかに防御力が上がっていて、スーレットは生身の状態でもミュシェルを圧倒する。
「私に攻撃を仕掛けてくれて感謝するよ。おかげで逃がさずに済みそうだ」
「はっ!? ぬ、抜けない」
「私の血肉は既に槍を捉えている。死した贄達の恨み、その身で受けるがいい! 緋色の呪拳!」
ミュシェルは杖を奪われ、逃げることができない。
その状態で放たれるスーレットの右拳は異様だ。
禍々しい紫色の炎を宿し、呻き声を上げた人達の顔で埋め尽くされている。
「ミュシェル!」
「ヤバいな、こうなったら……」
ミュシェルの父親が必死に叫んだ。
けれどミュシェルが逃げる時間は無く、拳が先に振り下ろされる。
死を覚悟したミュシェルは目を瞑った。
もう助からない。炎に飲まれる自分を想像する。
それでも俺は必死に抵抗した。
未だに突破口は見えないが、それでも俺がやることは変らない。
手には鎖を握ると、鋭い鉤爪が付いた方をクルクル振り回し、スーレット……ではなく、ミュシェルに投げ付けた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる