じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

※妹の行動

「ただいま戻りました」
「サーシャ！どこへ行ってたんだ？」
「帰ってこなくて心配したんだぞ」
「そうよ、勝手に出ていくなんて」

　私が屋敷に戻ると、両親やお兄様、それに私の婚約者のキース様にお姉様の婚約者のアンドリュー様が私に近寄って来た。どんなに心配した表情を私に見せてきたところで、嬉しいとも申し訳ないとも思う訳がないのに。

「別になんでもありません。こうして帰ってきましたし」

　……お姉様のことも話すと何をされるのか分からないので、絶対に話さないと決めたし。
　それにこれからもう一つやることがある。手紙には明日に来てと書かれていたが。

「待ってくれサーシャ」
「ここでお茶でもしないか？」
「私抜きで楽しんでくださいませ。私は次に行くべきところがありますので」

　私は彼らの呼びかけには応ぜずそそくさと自室に戻り鍵をかけた。ドンドンと叩かれる扉を無視して耳栓をする。耳栓は前にお姉様が用意してくれたもので、お姉様がいない時に両親やお兄様などからのストレスを避けるための物として使っている。
　次第に扉を叩く音が聞こえなくなった。完全に音が止まると、私は耳栓を外してベッドに仰向けに寝転ぶ。まだ眠るには早いが、他に何もする気力が起きなかった。
　後は明日を待つだけだ。




　翌日、私はまだ人気がない早朝に家を出た。御者に頼んであらかじめ馬車を出してもらう約束はしていたため、両親やお兄様に見つかる前に出発でき、事はスムーズに進んだ。
　私は目的地に着くとすぐに馬車を下りた。

「お待ちしておりました」

　執事の人に迎えられ屋敷の中に通される。私を待っていたのはお姉様を保護して下さった騎士団長様バーナード様だった。

「こんな早朝にすみません。ですがお話できる時間が今しかないので」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。お姉様はまだ寝ていますよね？」
「ええ、ぐっすりと。ですから今のうちにお話を済ましてしまいましょう。その後は、ぜひお会いになられてください」
「良いのですか？有難いことですが」
「勿論です。悔しいですが、まだ私はあなたには勝てないようで。シルヴィア様はあなたを恋しがっていますから」
「そうですか……。ではやはりあの話は早急に進めた方が良いですね」
「はい、ではまずは……」

　私たちはお姉様に気づかれないようにあることの話を進めていた。
　それはお姉様を幸せにしたいがために決行する、私たちに出来る最大限のことであった。