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2巻
2-2
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およそ四十分後。
俺はいつものように自室のベッドで横になっていた。だけど違うこともある。今夜から隣には、ルリアがいる。俺らは揃って仰向けに寝ていた。
静かな夜だ。
「緊張しているのか?」
「……そんなことないわ。あなたこそしてるでしょ?」
「俺は緊張しているよ。女の子と同じベッドで寝るなんて初めてだから」
「……そうやって素直に答えちゃうところ、ずるいわね」
彼女は隣で、小さくため息をこぼすふりをして呼吸を整えている。ルリアだって緊張しているのだ。
天井を見上げていた彼女は、ごそごそと身じろぎして、俺のほうに顔を向ける。
俺もそれに気づいて、同じように彼女のほうを向いた。目と目が合う。
顔と顔が近くて、呼吸の音も聞こえてくる。ドキドキと胸が鼓動する音が、どちらのものか区別できなくなってきた。
「夫婦ってすごいな。これを毎日続けているんだろ?」
「そうね。今はドキドキして身が持たなそう。けど、きっとそのうち慣れるわ」
「慣れるのか……それはそれで少し寂しいな」
「寂しい?」
「ああ。君の顔を見ているとドキドキする。この気持ちに慣れるのは……もったいない」
と、話したところで羞恥がこみ上げる。我ながら恥ずかしいセリフを口にしたものだ。
でも今は距離が近すぎて、顔を隠したくてもできない。ルリアはクスリと微笑む。
「アスクもそう思ってくれているのね。意識してもらえていないのかと思ったわ」
「なんでだよ」
「だって、結婚してもいつも通りだったから」
「……不安、だったか?」
布団の中で、ルリアの手が俺の手に触れる。
そのまま指を絡めてきた。
「少し」
「そうか」
俺の態度が彼女を不安にさせていたことにようやく気付き、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
だが、それをどうにかして払拭したいとも思う。だから俺はルリアに顔を近付けた。
俺が彼女をどう見ているのかを、はっきりと行動で示すように。唇を重ねる。
「君のお陰で、結婚するってどういうことか、わかるようになってきた」
「本当?」
「ああ、だから、これからもいろいろ教えてくれ。君がしたいことを、俺もしてみたい」
「……うん」
日常の中の刺激なんて、気付かなかっただけで探せばいくらでもあるのかもしれない。
遠慮しがちな俺たちは、こうして少しずつ歩み寄る。
◇◇◇
朝早くにギルドを訪れた俺たちは、いつものように掲示板の前で依頼を吟味する。
今日からAランク以上の依頼を受けることに決めていた。
「どれにしたものか」
「オレはなんでもいけるぜ!」
「じゃあ一人でやるか?」
「そ、それはまた今度な! 今はお前らと一緒にいてやるよ!」
翻訳すると、一人じゃ不安だから一緒にいてください、という意味になる。
バーチェは一周回って一番わかりやすくて助かる。そしてルリアたちも、最近になって表情や仕草から何を考えているか察せられるようになってきた。
付き合いが長くなるほど、お互いの気持ちがわかるようになるんだな。
「アスク様」
「――! アトムさん」
ここで、俺が知り合った中でもっとも感情が読み取れない人物の登場だ。俺がこの街に来て以来お世話になっている、ギルドマスターのアトムさん。彼はいつも形だけの笑みを浮かべて他人と接している。
この人が何を考えているのかだけは、未だに理解できない。
「どうしましたか? 俺に何か用ですか?」
「はい。アスク様、それからパーティーの皆様にもお話がございます。応接室まで来ていただけますか?」
俺だけじゃなく、パーティー全員?
雰囲気から察するに、Sランクしか受けられない依頼がある、とかじゃなさそうだな。もっと大事な話って感じだ。いい話か、悪い話か。
悪魔襲撃の一件を思い出して、少し警戒する。
「そう身構えないでください。悪い話でも、危ない話でもありませんので」
アトムさんは俺の表情から気持ちを察したのか、先にそう教えてくれた。
俺にはこの人の表情は読めないけど、この人に俺たちの考えは筒抜けなような気がして、なんとなく落ち着かない。
アトムさんに連れられて応接室に入った俺たちは、ソファーに腰を下ろし、向かい合って話し始める。
「実は近々、対策会議をしたいと考えております」
「対策? 何のです?」
「悪魔の、です」
びくっと反応したのは、バーチェだった。彼女も悪魔だからな。
バーチェは隠れるようにその場で縮こまる。
俺は代わりに聞いてやる。
「バーチェのこと……ではないですよね?」
「はい、バーチェ様は既にギルドの一員です。対策したいのは、他の悪魔についてです」
アトムさんは淡々と説明する。
「サラエ、ルースト、バングラド。悪魔が襲撃した街はこの三か所です。前回は皆様の情報、尽力があっていずれの街でもなんとか被害を抑えましたが、此度の悪魔襲来を、ギルドとしては重く受け止めております」
「これで終わりじゃないと?」
「我々はそう考えております。彼らは好戦的な種族です。きっかけさえあれば、今日明日にでも襲撃してくるでしょう」
「……」
バーチェの前で悪魔を悪く言ってほしくないが、否定もできない。
悪魔とは元来、そういう種族だ。支配を望み、戦いを好み、殺戮を欲する。バーチェが特殊なだけで、彼らの本質は闘争にある。
「気を悪くなさらないでください。バーチェ様のことをそうだと言っているわけではありません」
「べ、別にいいよ。事実だし、オレが知っている悪魔も大体そんな感じだったからな」
「お前がいい悪魔でよかったよ」
そう言って、俺はバーチェの頭を撫でてやる。
「ちょっ、頭撫でんな!」
バーチェはそう言いながらも抵抗はしない。俺に頭を撫でられるのに慣れてきたのだろうか。
嫌だ嫌だと言いつつ内心では求めているのだとしたら、それも愛らしい。
悪魔がみんな彼女のように可愛らしく、友好的であればよかったのに……と、心から思う。
「我々ギルドは次に悪魔が襲来した時に備え、然るべき準備が必要だと考えております。そこでギルドに所属する冒険者を代表して、皆様にも会議に参加して頂きたいのです」
「そういうことなら、もちろん協力します。けど俺たちはこの街に来て間もない。会議に参加しても大した意見は言えませんよ?」
「構いません。今回は顔合わせが主な目的ですので」
「顔合わせ?」
「はい」
アトムさんは笑みを浮かべ、改まった口調で続ける。
「此度の対策会議には、Sランク冒険者が所属するパーティーを招集しております」
「Sランク……」
つまり、会議に行けば対面することになる。俺以外のSランク冒険者――世界に二十人しかいない強者に。
悪魔を退けた彼らには興味がある。俺はアトムさんの話を聞いて笑みをこぼした。
「楽しみですね」
これも一つの刺激だ。
日常が、非日常へと切り替わる。
◇◇◇
三日後。俺たちは冒険者ギルド内にある大会議室にやってきた。
既に、参加予定のギルド職員数名と、アトムさんの姿がある。
俺はアトムさんに尋ねる。
「会議ってこの街でやるんですね」
「ええ。この街のギルドがもっとも大きいので。それにこう見えて私、この周辺の街全てを管轄しているんですよ」
「そうだったんですか。てっきりこの街のギルドだけをまとめておられるのかと」
「ギルドマスターはそんなにたくさんいませんからね」
聞けば彼らの数は、俺たちSランク冒険者より少ないそうだ。
ギルドマスターは各ギルドの長のような存在。複数の街を管理している。
貴族が領地を持つような感覚だろうか。いくつもの村や街を治める領主様のような立場にある、というわけだな。改めて思う。
「すごい人なんですね、アトムさん」
「恐縮です。しかし、我々よりも現場で戦ってくださる冒険者のほうがよほどすごいでしょう。依頼のために、命を張ってくださっているのですから。特に、あなたのような人材は特別です。私が管理する街で、Sランク冒険者はあなたを含めて四人しかいませんので」
「四人……ここに全員集まるんですよね?」
「はい。もうじき到着されるはずです」
トントントン――
タイミングを計ったように、会議室のドアがノックされた。皆の視線が集まる中、アトムさんが入室を許可する。
「しっつれいしまーす!」
扉が勢いよく、限界まで開く。
姿を見せたのは快活そうな赤い髪の女性。一目見た印象は、リズに近い雰囲気だ。
「こら、そんなに強く開けたら壊れちゃうでしょ」
「痛っ! 叩かないでよー」
彼女の後ろから、薄緑色の長い髪を結んだ女性が入ってきた。彼女は赤い髪の女性の頭をポカリと叩き、何やら注意を始めた。
アトムさんが彼女たちに話しかける。
「お待ちしておりました。アリア様、セシリー様」
「どうもどうも! お久しぶりです!」
「こんにちは、アトムさん」
陽気な雰囲気の女性と、落ち着いた雰囲気の女性。対照的な二人だからこそ、揃うとなんだかしっくりくる……気がする。
そんなことを考えていると、赤い髪の女性が俺に気付く。
「あ! もしかして君が新しいSランクの人!?」
「え、ああ……」
彼女は一瞬にして俺の前まで来ると、右手を握ってぶんぶんと大きく上下に振った。
「私はアリア! 君と同じSランク冒険者だよ! よろしくね!」
「あ、ああ。よろしく」
「わー、同い年くらいかな? 仲良くしてね!」
「こら、いきなり近付きすぎよ。失礼でしょ?」
「痛っ! ひどいよ、セシリー!」
元気なほうがアリアで、そんな彼女に注意しているのがセシリーという名前らしい。
見たところ他には誰もいない。
「二人だけ?」
「ん? そうだよ! 私たちはコンビなんだ! 私もセシリーもSランクなんだよ!」
「二人とも?」
四人いるうちの二人が同じパーティー……アリアが言うところの、コンビを組んでいるのか。
そういうこともあるんだな。
「初めまして、私はセシリーです。うちのアリアが失礼しました」
「いえ、気にしていませんから」
「ありがとうございます。噂は聞いていますよ。冒険者になって数ヶ月でSランクになった期待の新人だと」
「それ、アトムさんから聞いたんですか?」
チラッと視線を送ると、アトムさんはいつものようにニコリと笑みを浮かべた。
教えるのは別に構わないが、こうやって目立ち続けていると、いずれ精霊王の力もバレてしまいそうだな。そう思っていると、気付けばアリアが俺の身体に鼻を近付けていた。
「クンクンクン……」
「え?」
「君、変わった匂いがするね! 初めてだよ。それに一緒にいる人たちもかな? 亜人さんだったりする?」
「――!」
ルリアたちが、びくりと反応する。
彼女たちは面倒を避けるため、現在、外を出歩く時のようにローブやフードで身体を隠している。
アトムさんに視線を向けるが、私が教えたわけではありませんと言わんばかりに首を横に振った。
「アリア! 初対面の人の匂いを嗅がないでって、いつも言っているでしょ」
「わー、叩かないでよ! ただでさえ低い身長がもっと低くなっちゃう!」
「……アリアは亜人かどうか匂いでわかるのか?」
俺は思わず尋ねる。
「え? うん、なんとなくね! あーでも安心して? 私たち、亜人さんとも普通に話したことあるし、偏見とか全然ないからね! もうすぐ来るおっきな人も、大丈夫だと思うよ!」
「おっきな人?」
噂をすればなんとやら。重々しい足音が聞こえてくる。それは、どしんという大きな音を最後に止まった。誰かがやってきて、扉の前で立ち止まったのだ。
既に開いている扉から、大男が軽く屈みながら入ってきた。
「悪いな、遅くなったぜ」
「でかっ……」
同じ人間とは思えないほどの身長、体格だ。
思わず口に出してしまうほど、筋肉質で高身長。それでいて身体よりも大きい大剣を背負っている。そしてその後ろには、ずらりと仲間たちが並んでいた。
「ガルドさん! ひっさしぶりー!」
「おう、アリア。相変わらず元気そうじゃねーか。セシリーを困らせてねーだろうな?」
「大丈夫だよ!」
「どこが大丈夫なのよ……」
アリアの自信満々な返事に、セシリーは微かにため息をこぼす。
その様子を見て、大男は豪快に笑う。
「がっはっはっはっ! 大変そうだなー、お! 新しい顔がいるな。お前さんが例の新人か?」
「はい。アスクです」
「おう! 俺はガルドだ。この間はありがとよ! お前さんがくれた情報と結界のお陰でなんとか悪魔の侵攻を乗り切れたぜ!」
「お礼なら俺じゃなくて、バーチェに言ってください。情報も結界も彼女によるものですから」
俺はそう口にしながら、バーチェに視線を向ける。
彼女はビクッと背筋を伸ばした。
「そうだったか。ありがとよ、悪魔の嬢ちゃん」
「――! 知っているんですか?」
「俺はこれでも用心深くてね。初めてのやつと会う時は、事前に調べておくようにしているんだよ。なぁ? アトムのおっさん」
「……ようこそいらっしゃいました、ガルド様」
教えたのはアトムさんか。
アリアたちには伝えていないのに、ガルドさんには伝えたのはどういう理由からだろう。
疑問はあるが、ともかくこれで。
「全員揃いましたね。ではこれより、対策会議を始めましょう」
俺たちは各々の席に着く。ただ、円卓に用意された椅子の数は十二席しかない。
アトムさんと代表ギルド職員が四席使い、アリアとセシリーで二席、その隣に俺たちがいる。
俺たち五人が座ると残りは一席。そこにはガルドさんが座った。一緒にいた彼のお仲間たちは後ろに立っている。
俺はガルドさんに尋ねた。
「彼らはいいんですか?」
「おう、構わねーよ。うちは他と違って大所帯だからな。今日も二十人連れているし、会議室に入れてもらえるだけで十分なんだ」
確かに多い。二十人ものメンバーたちが、ガルドさんの後ろにピシッと姿勢を正して列を作っている様はまるで、騎士団みたいだ。
俺とガルドさんの会話が終わったのを見計らい、アトムさんは口を開く。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。そして悪魔を撃退していただき、まことにありがとうございました。街の平和が守られたのは、皆様のお陰です」
「気にすんなよ、こっちも仕事でやってるわけだしな」
「そうそう! 私たちは正義の味方だからね! いつでも頼ってよ!」
ガルドさんとアリアがそう言ったのに対し、アトムさんは笑みを浮かべる。
「心強いお言葉に感謝します。さて、今回集まっていただいた用件も、悪魔に関することでございます。事前に説明しました通りに話し合いを進めていきたいのですが、よろしいですか?」
アトムさんは一人ずつに視線を向け、確認を取る。
俺はあらかじめ、何について話し合うかは聞かされていた。
他の面々に目をやるが、問題なさそうだな。若干一名――アリアが疑問符を浮かべてセシリーに頭を叩かれているが……
「十年以上冒険者をやっているけど、悪魔の襲撃なんて初めてだったぜ。実際にいるんだな」
ガルドさんがそう言ったのに対し、アリアは元気よく口を開く。
「私たちは前に別の国で戦ったことがあるよ! あの悪魔も強かったなー」
「一年前ね。あの時も街を襲っていたわ。目的はただ、暴れたかったってだけみたいだけど」
セシリーの補足に、ガルドさんが続ける。
「それが悪魔の本質だろうな。例外もいるみたいだけどよ」
そう言いながらガルドさんはバーチェを見る。その目つきは穏やかなもので、どうやら彼にも偏見や敵意はないらしい。
ガルドさんは見た目が怖いからバーチェはドキドキしているみたいだけど、悪い人じゃなさそうで安心した。
ガルドさんは続けて話し始める。
「一番はやっぱ警備の強化じゃねーか? この前くれた結界を作り出す魔導具、あれを非常時に誰でも使えるようにするとか。もしくは常時展開しておくかだな」
「それだと出入りが大変じゃないかしら?」
「だったら悪魔だけ入れなくするとかできないのか? あ、でもそれじゃ嬢ちゃんが困るのか?」
「敵意や害意を検知して、それに応じて結界が反応するよう設定する……」
セシリーとガルドさんのやりとりを聞きつつ、俺はぼそりと呟いた。ただの思いつきが口をついて出ただけだったのだが、皆の視線が集まった。
俺は、左隣に座っているバーチェに尋ねる。
「できるか?」
「まぁ材料があれば作れるぞ」
「マジかよ。そいつがあれば大分楽になるぞ!」
「すっごいね! 君は天才発明家だ!」
「そ、そうか? まぁオレ様にかかれば余裕だけどな!」
ガルドさんとアリアに褒められ、バーチェはご満悦なようだ。
実際すごいことだろう。特定の条件下でのみ発動する結界、しかもそれを魔導具として誰でも使えるようにするのには、より高度な技術がいる。
バーチェは確かに、魔導具作りに関しては天才的だ。
「材料は何がいる?」
「えっと、ドラゴンの鱗だろ? アイスゴーレムの心臓に、フェニックスの羽、それから……」
俺が聞くと、バーチェは次々と素材を挙げていく。するとガルドさんが呆れたような顔をする。
「どれもこれも貴重な素材ばっかだな」
しかし、アリアは朗らかに続ける。
「みんなで分担して集めればいいよ! そのために私たちがいるんだしね!」
「それもそうだな。あとで分担を決めて集めに行くか」
「そうだねー! これで安心だー!」
同意したガルドさんの言葉に、アリアは能天気に喜ぶ。
その様子を見てガルドさんはため息をこぼした。
俺はいつものように自室のベッドで横になっていた。だけど違うこともある。今夜から隣には、ルリアがいる。俺らは揃って仰向けに寝ていた。
静かな夜だ。
「緊張しているのか?」
「……そんなことないわ。あなたこそしてるでしょ?」
「俺は緊張しているよ。女の子と同じベッドで寝るなんて初めてだから」
「……そうやって素直に答えちゃうところ、ずるいわね」
彼女は隣で、小さくため息をこぼすふりをして呼吸を整えている。ルリアだって緊張しているのだ。
天井を見上げていた彼女は、ごそごそと身じろぎして、俺のほうに顔を向ける。
俺もそれに気づいて、同じように彼女のほうを向いた。目と目が合う。
顔と顔が近くて、呼吸の音も聞こえてくる。ドキドキと胸が鼓動する音が、どちらのものか区別できなくなってきた。
「夫婦ってすごいな。これを毎日続けているんだろ?」
「そうね。今はドキドキして身が持たなそう。けど、きっとそのうち慣れるわ」
「慣れるのか……それはそれで少し寂しいな」
「寂しい?」
「ああ。君の顔を見ているとドキドキする。この気持ちに慣れるのは……もったいない」
と、話したところで羞恥がこみ上げる。我ながら恥ずかしいセリフを口にしたものだ。
でも今は距離が近すぎて、顔を隠したくてもできない。ルリアはクスリと微笑む。
「アスクもそう思ってくれているのね。意識してもらえていないのかと思ったわ」
「なんでだよ」
「だって、結婚してもいつも通りだったから」
「……不安、だったか?」
布団の中で、ルリアの手が俺の手に触れる。
そのまま指を絡めてきた。
「少し」
「そうか」
俺の態度が彼女を不安にさせていたことにようやく気付き、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
だが、それをどうにかして払拭したいとも思う。だから俺はルリアに顔を近付けた。
俺が彼女をどう見ているのかを、はっきりと行動で示すように。唇を重ねる。
「君のお陰で、結婚するってどういうことか、わかるようになってきた」
「本当?」
「ああ、だから、これからもいろいろ教えてくれ。君がしたいことを、俺もしてみたい」
「……うん」
日常の中の刺激なんて、気付かなかっただけで探せばいくらでもあるのかもしれない。
遠慮しがちな俺たちは、こうして少しずつ歩み寄る。
◇◇◇
朝早くにギルドを訪れた俺たちは、いつものように掲示板の前で依頼を吟味する。
今日からAランク以上の依頼を受けることに決めていた。
「どれにしたものか」
「オレはなんでもいけるぜ!」
「じゃあ一人でやるか?」
「そ、それはまた今度な! 今はお前らと一緒にいてやるよ!」
翻訳すると、一人じゃ不安だから一緒にいてください、という意味になる。
バーチェは一周回って一番わかりやすくて助かる。そしてルリアたちも、最近になって表情や仕草から何を考えているか察せられるようになってきた。
付き合いが長くなるほど、お互いの気持ちがわかるようになるんだな。
「アスク様」
「――! アトムさん」
ここで、俺が知り合った中でもっとも感情が読み取れない人物の登場だ。俺がこの街に来て以来お世話になっている、ギルドマスターのアトムさん。彼はいつも形だけの笑みを浮かべて他人と接している。
この人が何を考えているのかだけは、未だに理解できない。
「どうしましたか? 俺に何か用ですか?」
「はい。アスク様、それからパーティーの皆様にもお話がございます。応接室まで来ていただけますか?」
俺だけじゃなく、パーティー全員?
雰囲気から察するに、Sランクしか受けられない依頼がある、とかじゃなさそうだな。もっと大事な話って感じだ。いい話か、悪い話か。
悪魔襲撃の一件を思い出して、少し警戒する。
「そう身構えないでください。悪い話でも、危ない話でもありませんので」
アトムさんは俺の表情から気持ちを察したのか、先にそう教えてくれた。
俺にはこの人の表情は読めないけど、この人に俺たちの考えは筒抜けなような気がして、なんとなく落ち着かない。
アトムさんに連れられて応接室に入った俺たちは、ソファーに腰を下ろし、向かい合って話し始める。
「実は近々、対策会議をしたいと考えております」
「対策? 何のです?」
「悪魔の、です」
びくっと反応したのは、バーチェだった。彼女も悪魔だからな。
バーチェは隠れるようにその場で縮こまる。
俺は代わりに聞いてやる。
「バーチェのこと……ではないですよね?」
「はい、バーチェ様は既にギルドの一員です。対策したいのは、他の悪魔についてです」
アトムさんは淡々と説明する。
「サラエ、ルースト、バングラド。悪魔が襲撃した街はこの三か所です。前回は皆様の情報、尽力があっていずれの街でもなんとか被害を抑えましたが、此度の悪魔襲来を、ギルドとしては重く受け止めております」
「これで終わりじゃないと?」
「我々はそう考えております。彼らは好戦的な種族です。きっかけさえあれば、今日明日にでも襲撃してくるでしょう」
「……」
バーチェの前で悪魔を悪く言ってほしくないが、否定もできない。
悪魔とは元来、そういう種族だ。支配を望み、戦いを好み、殺戮を欲する。バーチェが特殊なだけで、彼らの本質は闘争にある。
「気を悪くなさらないでください。バーチェ様のことをそうだと言っているわけではありません」
「べ、別にいいよ。事実だし、オレが知っている悪魔も大体そんな感じだったからな」
「お前がいい悪魔でよかったよ」
そう言って、俺はバーチェの頭を撫でてやる。
「ちょっ、頭撫でんな!」
バーチェはそう言いながらも抵抗はしない。俺に頭を撫でられるのに慣れてきたのだろうか。
嫌だ嫌だと言いつつ内心では求めているのだとしたら、それも愛らしい。
悪魔がみんな彼女のように可愛らしく、友好的であればよかったのに……と、心から思う。
「我々ギルドは次に悪魔が襲来した時に備え、然るべき準備が必要だと考えております。そこでギルドに所属する冒険者を代表して、皆様にも会議に参加して頂きたいのです」
「そういうことなら、もちろん協力します。けど俺たちはこの街に来て間もない。会議に参加しても大した意見は言えませんよ?」
「構いません。今回は顔合わせが主な目的ですので」
「顔合わせ?」
「はい」
アトムさんは笑みを浮かべ、改まった口調で続ける。
「此度の対策会議には、Sランク冒険者が所属するパーティーを招集しております」
「Sランク……」
つまり、会議に行けば対面することになる。俺以外のSランク冒険者――世界に二十人しかいない強者に。
悪魔を退けた彼らには興味がある。俺はアトムさんの話を聞いて笑みをこぼした。
「楽しみですね」
これも一つの刺激だ。
日常が、非日常へと切り替わる。
◇◇◇
三日後。俺たちは冒険者ギルド内にある大会議室にやってきた。
既に、参加予定のギルド職員数名と、アトムさんの姿がある。
俺はアトムさんに尋ねる。
「会議ってこの街でやるんですね」
「ええ。この街のギルドがもっとも大きいので。それにこう見えて私、この周辺の街全てを管轄しているんですよ」
「そうだったんですか。てっきりこの街のギルドだけをまとめておられるのかと」
「ギルドマスターはそんなにたくさんいませんからね」
聞けば彼らの数は、俺たちSランク冒険者より少ないそうだ。
ギルドマスターは各ギルドの長のような存在。複数の街を管理している。
貴族が領地を持つような感覚だろうか。いくつもの村や街を治める領主様のような立場にある、というわけだな。改めて思う。
「すごい人なんですね、アトムさん」
「恐縮です。しかし、我々よりも現場で戦ってくださる冒険者のほうがよほどすごいでしょう。依頼のために、命を張ってくださっているのですから。特に、あなたのような人材は特別です。私が管理する街で、Sランク冒険者はあなたを含めて四人しかいませんので」
「四人……ここに全員集まるんですよね?」
「はい。もうじき到着されるはずです」
トントントン――
タイミングを計ったように、会議室のドアがノックされた。皆の視線が集まる中、アトムさんが入室を許可する。
「しっつれいしまーす!」
扉が勢いよく、限界まで開く。
姿を見せたのは快活そうな赤い髪の女性。一目見た印象は、リズに近い雰囲気だ。
「こら、そんなに強く開けたら壊れちゃうでしょ」
「痛っ! 叩かないでよー」
彼女の後ろから、薄緑色の長い髪を結んだ女性が入ってきた。彼女は赤い髪の女性の頭をポカリと叩き、何やら注意を始めた。
アトムさんが彼女たちに話しかける。
「お待ちしておりました。アリア様、セシリー様」
「どうもどうも! お久しぶりです!」
「こんにちは、アトムさん」
陽気な雰囲気の女性と、落ち着いた雰囲気の女性。対照的な二人だからこそ、揃うとなんだかしっくりくる……気がする。
そんなことを考えていると、赤い髪の女性が俺に気付く。
「あ! もしかして君が新しいSランクの人!?」
「え、ああ……」
彼女は一瞬にして俺の前まで来ると、右手を握ってぶんぶんと大きく上下に振った。
「私はアリア! 君と同じSランク冒険者だよ! よろしくね!」
「あ、ああ。よろしく」
「わー、同い年くらいかな? 仲良くしてね!」
「こら、いきなり近付きすぎよ。失礼でしょ?」
「痛っ! ひどいよ、セシリー!」
元気なほうがアリアで、そんな彼女に注意しているのがセシリーという名前らしい。
見たところ他には誰もいない。
「二人だけ?」
「ん? そうだよ! 私たちはコンビなんだ! 私もセシリーもSランクなんだよ!」
「二人とも?」
四人いるうちの二人が同じパーティー……アリアが言うところの、コンビを組んでいるのか。
そういうこともあるんだな。
「初めまして、私はセシリーです。うちのアリアが失礼しました」
「いえ、気にしていませんから」
「ありがとうございます。噂は聞いていますよ。冒険者になって数ヶ月でSランクになった期待の新人だと」
「それ、アトムさんから聞いたんですか?」
チラッと視線を送ると、アトムさんはいつものようにニコリと笑みを浮かべた。
教えるのは別に構わないが、こうやって目立ち続けていると、いずれ精霊王の力もバレてしまいそうだな。そう思っていると、気付けばアリアが俺の身体に鼻を近付けていた。
「クンクンクン……」
「え?」
「君、変わった匂いがするね! 初めてだよ。それに一緒にいる人たちもかな? 亜人さんだったりする?」
「――!」
ルリアたちが、びくりと反応する。
彼女たちは面倒を避けるため、現在、外を出歩く時のようにローブやフードで身体を隠している。
アトムさんに視線を向けるが、私が教えたわけではありませんと言わんばかりに首を横に振った。
「アリア! 初対面の人の匂いを嗅がないでって、いつも言っているでしょ」
「わー、叩かないでよ! ただでさえ低い身長がもっと低くなっちゃう!」
「……アリアは亜人かどうか匂いでわかるのか?」
俺は思わず尋ねる。
「え? うん、なんとなくね! あーでも安心して? 私たち、亜人さんとも普通に話したことあるし、偏見とか全然ないからね! もうすぐ来るおっきな人も、大丈夫だと思うよ!」
「おっきな人?」
噂をすればなんとやら。重々しい足音が聞こえてくる。それは、どしんという大きな音を最後に止まった。誰かがやってきて、扉の前で立ち止まったのだ。
既に開いている扉から、大男が軽く屈みながら入ってきた。
「悪いな、遅くなったぜ」
「でかっ……」
同じ人間とは思えないほどの身長、体格だ。
思わず口に出してしまうほど、筋肉質で高身長。それでいて身体よりも大きい大剣を背負っている。そしてその後ろには、ずらりと仲間たちが並んでいた。
「ガルドさん! ひっさしぶりー!」
「おう、アリア。相変わらず元気そうじゃねーか。セシリーを困らせてねーだろうな?」
「大丈夫だよ!」
「どこが大丈夫なのよ……」
アリアの自信満々な返事に、セシリーは微かにため息をこぼす。
その様子を見て、大男は豪快に笑う。
「がっはっはっはっ! 大変そうだなー、お! 新しい顔がいるな。お前さんが例の新人か?」
「はい。アスクです」
「おう! 俺はガルドだ。この間はありがとよ! お前さんがくれた情報と結界のお陰でなんとか悪魔の侵攻を乗り切れたぜ!」
「お礼なら俺じゃなくて、バーチェに言ってください。情報も結界も彼女によるものですから」
俺はそう口にしながら、バーチェに視線を向ける。
彼女はビクッと背筋を伸ばした。
「そうだったか。ありがとよ、悪魔の嬢ちゃん」
「――! 知っているんですか?」
「俺はこれでも用心深くてね。初めてのやつと会う時は、事前に調べておくようにしているんだよ。なぁ? アトムのおっさん」
「……ようこそいらっしゃいました、ガルド様」
教えたのはアトムさんか。
アリアたちには伝えていないのに、ガルドさんには伝えたのはどういう理由からだろう。
疑問はあるが、ともかくこれで。
「全員揃いましたね。ではこれより、対策会議を始めましょう」
俺たちは各々の席に着く。ただ、円卓に用意された椅子の数は十二席しかない。
アトムさんと代表ギルド職員が四席使い、アリアとセシリーで二席、その隣に俺たちがいる。
俺たち五人が座ると残りは一席。そこにはガルドさんが座った。一緒にいた彼のお仲間たちは後ろに立っている。
俺はガルドさんに尋ねた。
「彼らはいいんですか?」
「おう、構わねーよ。うちは他と違って大所帯だからな。今日も二十人連れているし、会議室に入れてもらえるだけで十分なんだ」
確かに多い。二十人ものメンバーたちが、ガルドさんの後ろにピシッと姿勢を正して列を作っている様はまるで、騎士団みたいだ。
俺とガルドさんの会話が終わったのを見計らい、アトムさんは口を開く。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。そして悪魔を撃退していただき、まことにありがとうございました。街の平和が守られたのは、皆様のお陰です」
「気にすんなよ、こっちも仕事でやってるわけだしな」
「そうそう! 私たちは正義の味方だからね! いつでも頼ってよ!」
ガルドさんとアリアがそう言ったのに対し、アトムさんは笑みを浮かべる。
「心強いお言葉に感謝します。さて、今回集まっていただいた用件も、悪魔に関することでございます。事前に説明しました通りに話し合いを進めていきたいのですが、よろしいですか?」
アトムさんは一人ずつに視線を向け、確認を取る。
俺はあらかじめ、何について話し合うかは聞かされていた。
他の面々に目をやるが、問題なさそうだな。若干一名――アリアが疑問符を浮かべてセシリーに頭を叩かれているが……
「十年以上冒険者をやっているけど、悪魔の襲撃なんて初めてだったぜ。実際にいるんだな」
ガルドさんがそう言ったのに対し、アリアは元気よく口を開く。
「私たちは前に別の国で戦ったことがあるよ! あの悪魔も強かったなー」
「一年前ね。あの時も街を襲っていたわ。目的はただ、暴れたかったってだけみたいだけど」
セシリーの補足に、ガルドさんが続ける。
「それが悪魔の本質だろうな。例外もいるみたいだけどよ」
そう言いながらガルドさんはバーチェを見る。その目つきは穏やかなもので、どうやら彼にも偏見や敵意はないらしい。
ガルドさんは見た目が怖いからバーチェはドキドキしているみたいだけど、悪い人じゃなさそうで安心した。
ガルドさんは続けて話し始める。
「一番はやっぱ警備の強化じゃねーか? この前くれた結界を作り出す魔導具、あれを非常時に誰でも使えるようにするとか。もしくは常時展開しておくかだな」
「それだと出入りが大変じゃないかしら?」
「だったら悪魔だけ入れなくするとかできないのか? あ、でもそれじゃ嬢ちゃんが困るのか?」
「敵意や害意を検知して、それに応じて結界が反応するよう設定する……」
セシリーとガルドさんのやりとりを聞きつつ、俺はぼそりと呟いた。ただの思いつきが口をついて出ただけだったのだが、皆の視線が集まった。
俺は、左隣に座っているバーチェに尋ねる。
「できるか?」
「まぁ材料があれば作れるぞ」
「マジかよ。そいつがあれば大分楽になるぞ!」
「すっごいね! 君は天才発明家だ!」
「そ、そうか? まぁオレ様にかかれば余裕だけどな!」
ガルドさんとアリアに褒められ、バーチェはご満悦なようだ。
実際すごいことだろう。特定の条件下でのみ発動する結界、しかもそれを魔導具として誰でも使えるようにするのには、より高度な技術がいる。
バーチェは確かに、魔導具作りに関しては天才的だ。
「材料は何がいる?」
「えっと、ドラゴンの鱗だろ? アイスゴーレムの心臓に、フェニックスの羽、それから……」
俺が聞くと、バーチェは次々と素材を挙げていく。するとガルドさんが呆れたような顔をする。
「どれもこれも貴重な素材ばっかだな」
しかし、アリアは朗らかに続ける。
「みんなで分担して集めればいいよ! そのために私たちがいるんだしね!」
「それもそうだな。あとで分担を決めて集めに行くか」
「そうだねー! これで安心だー!」
同意したガルドさんの言葉に、アリアは能天気に喜ぶ。
その様子を見てガルドさんはため息をこぼした。
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