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第二部
第17話 気持ち悪くなる
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「げ」
ホットラードの姿を見た瞬間、表情が歪むと同時に変な声が出た。
「アリス! 僕の愛しいアリス!」
ごきげんよう。
「気持ち悪い」
やってしまった。
心の声と口に出すはずの言葉を逆に言ってしまうというベタなことをしてしまったわ。
まあ、いいでしょ。
知らないふりしてやり過ごそう。
何もなかったかのような顔をして、ホットラードの前を通り過ぎようとすると、彼は話しかけてくる。
「何か、嫌な言葉が聞こえた気がしたけど、まあいいか、気のせいかな。それよりもアリス、僕に会うために来てくれたのかい?」
休みの日に会いたくない人物のランキングがあったら、確実に上位にいる人間に、そんなことを言われたくない。
「テツ」
「ん?」
「ホットラード卿の相手をよろしく。私はもう一匹の相手をするわ」
「了解」
ボートワールの相手をするよりも、ホットラードの相手をするほうがマシらしい。
哲平は表情を明るくすると、なぜか私の日傘を持ったまま、ホットラードに近付いていく。
日傘は返してほしい。
「ちょっとテツくん」
「あんたはこっち」
哲平を追いかけようとしたボートワールを呼び止めると、彼女のツインテールの片方が私の顔面にヒットしそうになった。
顔に当たる前に、その髪を引っ掴んで止める。
「ちょっと、周りに人がいるんだから気をつけなさいよ」
「何すんのよ! 痛いじゃない!」
「あんたこそ、髪をブンブン振り回すのはやめなさいよ。私だったから良かったけど、他の人に当たってたら髪を燃やしてたわよ」
「べ、別にキュレルに当たっても、私は何も困らないもの」
燃やされるのは嫌なのか、焦った表情で答えたボートワールの髪の毛をグイグイ引っ張る。
「邪魔だから掴んどくわ」
「やめなさいよ! 痛いって言ってるでしょ!」
「あなたが痛くても、私は何も困らないの」
「本当にムカつく女ね!」
ボートワールは表情を歪めて、私を睨みつけてきた。
「あんたに好かれるつもりはないから出来るのよ。髪を放してあげるから、とっとと、ホットラード卿を連れて、私たちの目の前から消えてくれない?」
「嫌よ。今の私の目下の目標はテツくんだし、テツくんと話をしたいの」
「あのね。アイツは公爵家の次男よ? あんただって、貴族社会のことは知ってるんでしょ」
なんで、私がコイツに教えてやらないといけないのかしら。
私の気持ちなどおかまいなしに、ボートワールは答える。
「知ってるわよ。でも、ほら、この可愛さでしょ? なんでも許されちゃうのよ」
「ヒロインだから?」
「わかってるじゃない」
「私は悪役令嬢で良かったわ。悪役令嬢だからって、この先どうなるかなんてわからないし、自分の好きなように生きれるものね」
この世界がゲームなり、小説なり漫画なりの世界であろうとなんだろうと、昔の自分の意識をこれだけハッキリ持ったまま転生しているのだから、自分の好きなように生きようと思っている。
「キュレルは悪役令嬢なんだから、ヒロインの私がそうはさせないから」
「めんどくさい」
「な、何よ、いきなり!」
無意識に飛び出た言葉に反応したボートワールが両拳を握りしめ、胸の前で上下に何度も振った。
「なんでもないわ。私たちのことは気にせずに二人で楽しみなさいよ」
「ちょっと待って!」
呼び止められたけれど待つ気はない。
声を無視して、ホットラードと遊んでいる哲平に足を進めると、ボートワールが叫ぶ。
「婚約者を交換して!」
「はあ?」
反応しないでいようと思っていたのに聞き返してしまった。
「聞こえなかった? 婚約者を交換してって言ったのよ!」
「あんた、自分が何を言ってるかわかってるの?」
足を止めて、ボートワールに体を向けて聞いた。
「もちろんよ。さっきまで、ルーベンとも話をしてたの」
「ルーベン?」
誰のことか一瞬わからなかった。
でも、すぐにホットラードの名前だったことを思い出す。
人の名前、特にどうでもいい人の名前を覚えるのは苦手なのよね。
覚えてただけでも良いということにしよう。
「そうよ。ルーベンったら私と婚約を解消して、あなたと再婚約したいって言い出したの。そうなったら、テツくんは私のものになるし、素敵な話だと思うの。家に帰って、両親にお願いするつもりよ」
「駄目よ」
そんなことをされたら困る。
本当に色んな人に迷惑がかかるじゃないの。
「なんであなたが拒否するのよ」
「あんたたち、そんなに簡単に婚約したり解消したりできると思ってんの?」
真面目に聞き返すと、さすがにボートワールも黙り込んだ。
ホットラードの姿を見た瞬間、表情が歪むと同時に変な声が出た。
「アリス! 僕の愛しいアリス!」
ごきげんよう。
「気持ち悪い」
やってしまった。
心の声と口に出すはずの言葉を逆に言ってしまうというベタなことをしてしまったわ。
まあ、いいでしょ。
知らないふりしてやり過ごそう。
何もなかったかのような顔をして、ホットラードの前を通り過ぎようとすると、彼は話しかけてくる。
「何か、嫌な言葉が聞こえた気がしたけど、まあいいか、気のせいかな。それよりもアリス、僕に会うために来てくれたのかい?」
休みの日に会いたくない人物のランキングがあったら、確実に上位にいる人間に、そんなことを言われたくない。
「テツ」
「ん?」
「ホットラード卿の相手をよろしく。私はもう一匹の相手をするわ」
「了解」
ボートワールの相手をするよりも、ホットラードの相手をするほうがマシらしい。
哲平は表情を明るくすると、なぜか私の日傘を持ったまま、ホットラードに近付いていく。
日傘は返してほしい。
「ちょっとテツくん」
「あんたはこっち」
哲平を追いかけようとしたボートワールを呼び止めると、彼女のツインテールの片方が私の顔面にヒットしそうになった。
顔に当たる前に、その髪を引っ掴んで止める。
「ちょっと、周りに人がいるんだから気をつけなさいよ」
「何すんのよ! 痛いじゃない!」
「あんたこそ、髪をブンブン振り回すのはやめなさいよ。私だったから良かったけど、他の人に当たってたら髪を燃やしてたわよ」
「べ、別にキュレルに当たっても、私は何も困らないもの」
燃やされるのは嫌なのか、焦った表情で答えたボートワールの髪の毛をグイグイ引っ張る。
「邪魔だから掴んどくわ」
「やめなさいよ! 痛いって言ってるでしょ!」
「あなたが痛くても、私は何も困らないの」
「本当にムカつく女ね!」
ボートワールは表情を歪めて、私を睨みつけてきた。
「あんたに好かれるつもりはないから出来るのよ。髪を放してあげるから、とっとと、ホットラード卿を連れて、私たちの目の前から消えてくれない?」
「嫌よ。今の私の目下の目標はテツくんだし、テツくんと話をしたいの」
「あのね。アイツは公爵家の次男よ? あんただって、貴族社会のことは知ってるんでしょ」
なんで、私がコイツに教えてやらないといけないのかしら。
私の気持ちなどおかまいなしに、ボートワールは答える。
「知ってるわよ。でも、ほら、この可愛さでしょ? なんでも許されちゃうのよ」
「ヒロインだから?」
「わかってるじゃない」
「私は悪役令嬢で良かったわ。悪役令嬢だからって、この先どうなるかなんてわからないし、自分の好きなように生きれるものね」
この世界がゲームなり、小説なり漫画なりの世界であろうとなんだろうと、昔の自分の意識をこれだけハッキリ持ったまま転生しているのだから、自分の好きなように生きようと思っている。
「キュレルは悪役令嬢なんだから、ヒロインの私がそうはさせないから」
「めんどくさい」
「な、何よ、いきなり!」
無意識に飛び出た言葉に反応したボートワールが両拳を握りしめ、胸の前で上下に何度も振った。
「なんでもないわ。私たちのことは気にせずに二人で楽しみなさいよ」
「ちょっと待って!」
呼び止められたけれど待つ気はない。
声を無視して、ホットラードと遊んでいる哲平に足を進めると、ボートワールが叫ぶ。
「婚約者を交換して!」
「はあ?」
反応しないでいようと思っていたのに聞き返してしまった。
「聞こえなかった? 婚約者を交換してって言ったのよ!」
「あんた、自分が何を言ってるかわかってるの?」
足を止めて、ボートワールに体を向けて聞いた。
「もちろんよ。さっきまで、ルーベンとも話をしてたの」
「ルーベン?」
誰のことか一瞬わからなかった。
でも、すぐにホットラードの名前だったことを思い出す。
人の名前、特にどうでもいい人の名前を覚えるのは苦手なのよね。
覚えてただけでも良いということにしよう。
「そうよ。ルーベンったら私と婚約を解消して、あなたと再婚約したいって言い出したの。そうなったら、テツくんは私のものになるし、素敵な話だと思うの。家に帰って、両親にお願いするつもりよ」
「駄目よ」
そんなことをされたら困る。
本当に色んな人に迷惑がかかるじゃないの。
「なんであなたが拒否するのよ」
「あんたたち、そんなに簡単に婚約したり解消したりできると思ってんの?」
真面目に聞き返すと、さすがにボートワールも黙り込んだ。
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