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11食目 潮風香る海鮮丼
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宿の部屋でスマホをじっと見つめながら、梨花はため息をついた。
「なにやってるんだろう……私……」
さっき十希也に言われるがまま、連絡先を交換してしまった。
スマホなんて、もう使うつもりはなかったのに。アパートと同じように、解約してしまおうと思っていたのに。
『えっ、そんなのだめだよぉ! これは捨てないで大事にして』
さっき杏奈に言われた言葉を思い出す。
『きっとこれは、梨花ちゃんの生きる希望になるからさ』
「生きる希望……」
たしかにこの町に来てから、梨花の心は変化しはじめていた。
あんなに悠真のところへ行きたいと思っていたのに、いまは行き先がわからず戸惑っている。
『弱くてもいいから、それでも生きろ』
最初の日、十希也に言われた言葉。そんなの絶対無理だと思っていたのに……。
梨花はスマホの画面を開き、そっと指先でタップする。
つらくてずっと見ることができなかった悠真の笑顔が、この中にはあふれるほど詰まっていた。
食事の時間になり、もうすっかりなじんでしまった広間に行くと、今日も女将が笑顔で迎えてくれた。
「梨花さん、食欲のほうはどうですか?」
「ありがとうございます。だいぶ食べられるようになりました」
「それはよかったです。せっかくこの町に来てくださったんですから、海の幸もたくさん味わっていただきたいので」
そう言って女将が用意してくれたのは、海の幸たっぷりの華やかな海鮮丼だった。
マグロ、タイ、アジ、エビ、ホタテ、しらす……。色鮮やかなネタがあふれんばかりに盛られている。
「わぁ、すごいです!」
「漁師さんから直接仕入れているので、新鮮なんですよ。ごはんは少なめにしてありますから、いろんな海の幸を味わってみてくださいね」
そういえばこの前十希也が、漁港で魚を買ってきたと言っていた。今朝も仕入れに行っていたのだろうか。
「ありがとうございます。いただきます!」
「どうぞごゆっくり」
真っ赤なマグロを箸で取る。ずいぶん分厚い。ひと口食べると、海の香りが一気に広がり、口の中でとろけた。
「おいしい……」
頬をゆるめながら、何度もうなずく。
エビは新鮮でプリプリしていて、ホタテはじんわりと甘く、しらすは真っ白でふっくらだ。
様々な海の幸を次々と口に運べば、ごはんもどんどん進んでいく。
気づけば丼は空になっていた。
「ごちそうさまでした」
こんなに新鮮な魚介類をいただくと、海のそばに来たんだなぁとあらためて感じる。
梨花の頭の中には、昨日桟橋から見た、どこまでも青い景色が鮮やかに広がっていた。
「なにやってるんだろう……私……」
さっき十希也に言われるがまま、連絡先を交換してしまった。
スマホなんて、もう使うつもりはなかったのに。アパートと同じように、解約してしまおうと思っていたのに。
『えっ、そんなのだめだよぉ! これは捨てないで大事にして』
さっき杏奈に言われた言葉を思い出す。
『きっとこれは、梨花ちゃんの生きる希望になるからさ』
「生きる希望……」
たしかにこの町に来てから、梨花の心は変化しはじめていた。
あんなに悠真のところへ行きたいと思っていたのに、いまは行き先がわからず戸惑っている。
『弱くてもいいから、それでも生きろ』
最初の日、十希也に言われた言葉。そんなの絶対無理だと思っていたのに……。
梨花はスマホの画面を開き、そっと指先でタップする。
つらくてずっと見ることができなかった悠真の笑顔が、この中にはあふれるほど詰まっていた。
食事の時間になり、もうすっかりなじんでしまった広間に行くと、今日も女将が笑顔で迎えてくれた。
「梨花さん、食欲のほうはどうですか?」
「ありがとうございます。だいぶ食べられるようになりました」
「それはよかったです。せっかくこの町に来てくださったんですから、海の幸もたくさん味わっていただきたいので」
そう言って女将が用意してくれたのは、海の幸たっぷりの華やかな海鮮丼だった。
マグロ、タイ、アジ、エビ、ホタテ、しらす……。色鮮やかなネタがあふれんばかりに盛られている。
「わぁ、すごいです!」
「漁師さんから直接仕入れているので、新鮮なんですよ。ごはんは少なめにしてありますから、いろんな海の幸を味わってみてくださいね」
そういえばこの前十希也が、漁港で魚を買ってきたと言っていた。今朝も仕入れに行っていたのだろうか。
「ありがとうございます。いただきます!」
「どうぞごゆっくり」
真っ赤なマグロを箸で取る。ずいぶん分厚い。ひと口食べると、海の香りが一気に広がり、口の中でとろけた。
「おいしい……」
頬をゆるめながら、何度もうなずく。
エビは新鮮でプリプリしていて、ホタテはじんわりと甘く、しらすは真っ白でふっくらだ。
様々な海の幸を次々と口に運べば、ごはんもどんどん進んでいく。
気づけば丼は空になっていた。
「ごちそうさまでした」
こんなに新鮮な魚介類をいただくと、海のそばに来たんだなぁとあらためて感じる。
梨花の頭の中には、昨日桟橋から見た、どこまでも青い景色が鮮やかに広がっていた。
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