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16食目 しみしみあったかおでん
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その日の昼、梨花は女将の車に乗せてもらい、隣町までやってきた。同じような小さい港町なのに、こちらは観光客も多く、若い人からお年寄りまで多くの人で賑わっている。
駅前の商店街は活気に満ちていて、オシャレなお土産物店や、若者向けの映えるドリンクの店もあり、行列までできている。
「このあたりもずいぶん変わったわね」
車で商店街を通りながら、女将がつぶやく。
「うらやましいような、寂しいような……複雑な気持ちです」
「そうなんですか?」
梨花の声に、女将が前を見たままうなずく。
「お客さんが来てくれるのは嬉しいけれど、町が別物みたいに変わってしまうのは、ちょっと嫌かもしれません」
そう言ってから、女将はふふっと微笑む。
「年寄りの考えかもしれないですけどね」
女将の気持ちはなんとなくわかる。女将たちの住んでいるあの町が、こんなふうに映える店や写真スポットだらけになるのは、梨花だって複雑だ。
ほのかな潮の香りや、穏やかな波の音や、新鮮な海の幸の味を残したまま、あの町が活気付いたら一番良いのだけれど。
車はそんな賑やかな町を通り抜け、港のほうへやってきた。このあたりは昔ながらの漁港といった感じで、『民宿陣内』から見える景色とあまり変わらない。
そんな静かな海に面した場所に、ぽつんと一軒の古い店があった。
「ここ、私のお気に入りのお店なんですよ」
女将が店の前の駐車場に車を停めた。
「食堂……ですか?」
「そう。海の幸がおいしいの。でも私のおすすめはちょっと違うんです」
いたずらっぽく微笑む女将に続いて、梨花は店の中に入った。
「いらっしゃい! おや、芙美ちゃん、久しぶり!」
「お久しぶりです、源さん」
女将が年配の男性に挨拶をする。お気に入りというだけあって、お得意さまのようだ。
店内はこぢんまりとしていて、席数は多くなかった。テーブル席では漁港で働いている人たちが昼食をとっている。海の幸がたっぷりとのった、丼のようだ。
女将は梨花にカウンター席を勧め、ふたり並んで腰かけた。
「おや、芙美ちゃんの娘さん……じゃあないよな?」
「ええ、東京から来たお客さまなんですよ。今日は一緒においしいものを食べにきました」
「ほう。それはわざわざ嬉しいねぇ。俺はこの店の店主、源っていいます」
店主が挨拶してきたので、梨花もぺこりと頭を下げた。
「吾妻です。よろしくお願いします」
「こちらこそ!」
店主の源が明るく笑う。そんな源に女将が言った。
「源さん。いつものをふたり分、おまかせでお願いします」
「あいよ! ちょっと待ってな」
源が準備をはじめると、女将が小さく笑った。
「ふふっ、娘さんですって」
「私は嬉しいです。女将さんと親子だと思われるなんて」
梨花の言葉に女将は驚いた顔をしたあと、嬉しそうに微笑んで言った。
「では私のことも名前で呼んでいただけますか?」
「え?」
「私、芙美って言うんですよ」
「芙美さん……」
つぶやいた梨花の前で、女将がうなずく。
「では芙美さんって呼ばせていただきますね」
「ありがとう、梨花さん」
ふたり目が合うと、なんだか照れくさくなって一緒に笑った。
「ここはね、亡くなった主人とよく来たお店なんです」
梨花は隣を見る。芙美は懐かしそうに遠くを見つめながら続ける。
「漁師をやりながら宿で料理も作って……なんでもできる、頼りがいのある人でした。主人を亡くしてからは来るのがつらかったけど、いまはすごく大事な場所だと思えるようになった」
それから自分自身に言い聞かせるように、静かにつぶやく。
「好きな人との思い出は大事にしなければ、ね」
その言葉はひとりごとのようであり、梨花に伝えているようにも思えた。そして梨花も悠真の思い出を辿るうちに、そう思えるようになってきていたのだ。
すると芙美が梨花を見て尋ねた。
「梨花さんも……なにかつらいことがあって、ここに来たんでしょう?」
梨花は曖昧にうなずく。
「帰る場所はあるの?」
「帰る場所……」
東京のアパートは解約届を出してしまった。もう帰るつもりはなかったから。
黙り込んだ梨花に、芙美が優しく声をかける。
「ご実家は? お父さんやお母さんには頼れないんですか?」
梨花の頭に母の顔が浮かんでくる。絶対母のところへは帰りたくない。
「頼れません」
小さいけれどきっぱりと答えた。
「両親は私が中学生のころに離婚して、父にはそれきり会っていません。私を束縛する母のことも好きになれなくて……実家に帰る気はありません」
芙美の顔が歪む。梨花はハッと口元を押さえる。
こんな話をしたのは、悠真以外はじめてだ。実の母親のことを「好きになれなくて」なんて言ってしまったが、ひどい娘だと思われただろうか。
親に反抗しているだけだと思われてしまうかもしれない。どんなに嫌な親でも自分を産んでくれた親なら大切にしろと言われるかもしれない。
しかし母への複雑な想いは、とてもひと言では伝えられないのだ。
梨花はうつむいた。芙美には嫌われたくない。
ぎゅっと胸元のセーターをつかんだとき、芙美の声が聞こえた。
「梨花さんがそう思っているのなら、実家には帰らなくていいと思います」
梨花は顔を上げてつぶやく。
「でもいつかは母と分かり合わなくちゃだめですよね?」
すると芙美は首を横に振った。
「分かり合えなくてもいいと思います。親子だって他人なんですから。それに梨花さんはもう立派な大人です。お母さんから離れたいのなら、離れるべきです」
梨花の胸がじんっと熱くなる。芙美は柔らかく微笑んで言った。
「でも誰か、梨花さんの話を聞いてくれる人がいるといいですね。つらいことは誰かに聞いてもらうと、ずいぶん楽になりますから」
その言葉が心に沁み込む。梨花は思わずつぶやいていた。
「私……芙美さんみたいなお母さんがよかったです」
芙美は目を丸くしたあと、くすくすと笑う。
「私はそんなにいい母親ではないですよ。十希也にとってはウザい母親ですし」
それからそっと、梨花の手を握る。
「だけどもし帰るところがないのなら、うちにいてもいいんですからね」
「ありがとうございます」
でもこれ以上、芙美に迷惑はかけたくない。
明日、町を出よう。それから……梨花はまだ自分の行き先を決められなかった。
「はい、お待ちどう!」
源がカウンターの上に大きめの器をふたつ置いた。白い湯気が立っていて、出汁の良い香りが漂ってくる。
「わぁ……」
盛られているのはほかほかのおでんだった。
大根、卵、こんにゃく、はんぺん、ちくわ、しらたき……たくさんの具が黄金色の出汁と一緒に盛られている。
「ここのおでんはとってもおいしいんですよ。あったまるから食べてみて」
「はい。いただきます」
芙美に勧められ、梨花は箸を取る。
まずは大きめの大根。箸を入れると驚くほど軟らかく、出汁がじんわりと染み出てくる。口に入れるとほろりと溶けて、深い旨味が広がっていく。
「おいしい……」
体がぽかぽかとあったまる、ほっこりとした味わいだ。
芙美は満足そうに微笑んで、自分も大根を口に入れる。
「うーん……やっぱりおいしいわ」
「ありがとうございます」
カウンターの向こうで源も穏やかに微笑んでいる。
梨花は卵も食べてみた。こちらも味が染み込んでいておいしい。こんにゃく、はんぺん、ちくわ……食べれば食べるほど、心も体も温かくなっていく。
「私、お店でおでんを食べるのははじめてです」
悠真とふたり、スーパーで具を買って、鍋を囲んだことはあるけれど。
すると芙美がふふっと笑ってこう言った。
「私はひとりでよく食べにくるんです。嫌なことがあっても、このおでんを食べると忘れられるから」
梨花はうなずきながら、いつも明るい芙美でも忘れてしまいたいことがあるんだな、と心の中で思う。
「でも今日は梨花さんと一緒に来られてよかったです」
芙美の言葉に嬉しさがこみ上げる。
「ああ、私も梨花さんみたいな娘が欲しかったわ。あんな無愛想な息子じゃなくて」
いたずらっぽく笑う芙美に向かって、梨花は言った。
「たしかに十希也さんは無愛想ですけど……だけど優しい人だと思います」
芙美は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに穏やかな笑顔になる。
「ありがとう、梨花さん。あの子の代わりにお礼を言っておきますね」
梨花も芙美の前で笑顔を見せた。
駅前の商店街は活気に満ちていて、オシャレなお土産物店や、若者向けの映えるドリンクの店もあり、行列までできている。
「このあたりもずいぶん変わったわね」
車で商店街を通りながら、女将がつぶやく。
「うらやましいような、寂しいような……複雑な気持ちです」
「そうなんですか?」
梨花の声に、女将が前を見たままうなずく。
「お客さんが来てくれるのは嬉しいけれど、町が別物みたいに変わってしまうのは、ちょっと嫌かもしれません」
そう言ってから、女将はふふっと微笑む。
「年寄りの考えかもしれないですけどね」
女将の気持ちはなんとなくわかる。女将たちの住んでいるあの町が、こんなふうに映える店や写真スポットだらけになるのは、梨花だって複雑だ。
ほのかな潮の香りや、穏やかな波の音や、新鮮な海の幸の味を残したまま、あの町が活気付いたら一番良いのだけれど。
車はそんな賑やかな町を通り抜け、港のほうへやってきた。このあたりは昔ながらの漁港といった感じで、『民宿陣内』から見える景色とあまり変わらない。
そんな静かな海に面した場所に、ぽつんと一軒の古い店があった。
「ここ、私のお気に入りのお店なんですよ」
女将が店の前の駐車場に車を停めた。
「食堂……ですか?」
「そう。海の幸がおいしいの。でも私のおすすめはちょっと違うんです」
いたずらっぽく微笑む女将に続いて、梨花は店の中に入った。
「いらっしゃい! おや、芙美ちゃん、久しぶり!」
「お久しぶりです、源さん」
女将が年配の男性に挨拶をする。お気に入りというだけあって、お得意さまのようだ。
店内はこぢんまりとしていて、席数は多くなかった。テーブル席では漁港で働いている人たちが昼食をとっている。海の幸がたっぷりとのった、丼のようだ。
女将は梨花にカウンター席を勧め、ふたり並んで腰かけた。
「おや、芙美ちゃんの娘さん……じゃあないよな?」
「ええ、東京から来たお客さまなんですよ。今日は一緒においしいものを食べにきました」
「ほう。それはわざわざ嬉しいねぇ。俺はこの店の店主、源っていいます」
店主が挨拶してきたので、梨花もぺこりと頭を下げた。
「吾妻です。よろしくお願いします」
「こちらこそ!」
店主の源が明るく笑う。そんな源に女将が言った。
「源さん。いつものをふたり分、おまかせでお願いします」
「あいよ! ちょっと待ってな」
源が準備をはじめると、女将が小さく笑った。
「ふふっ、娘さんですって」
「私は嬉しいです。女将さんと親子だと思われるなんて」
梨花の言葉に女将は驚いた顔をしたあと、嬉しそうに微笑んで言った。
「では私のことも名前で呼んでいただけますか?」
「え?」
「私、芙美って言うんですよ」
「芙美さん……」
つぶやいた梨花の前で、女将がうなずく。
「では芙美さんって呼ばせていただきますね」
「ありがとう、梨花さん」
ふたり目が合うと、なんだか照れくさくなって一緒に笑った。
「ここはね、亡くなった主人とよく来たお店なんです」
梨花は隣を見る。芙美は懐かしそうに遠くを見つめながら続ける。
「漁師をやりながら宿で料理も作って……なんでもできる、頼りがいのある人でした。主人を亡くしてからは来るのがつらかったけど、いまはすごく大事な場所だと思えるようになった」
それから自分自身に言い聞かせるように、静かにつぶやく。
「好きな人との思い出は大事にしなければ、ね」
その言葉はひとりごとのようであり、梨花に伝えているようにも思えた。そして梨花も悠真の思い出を辿るうちに、そう思えるようになってきていたのだ。
すると芙美が梨花を見て尋ねた。
「梨花さんも……なにかつらいことがあって、ここに来たんでしょう?」
梨花は曖昧にうなずく。
「帰る場所はあるの?」
「帰る場所……」
東京のアパートは解約届を出してしまった。もう帰るつもりはなかったから。
黙り込んだ梨花に、芙美が優しく声をかける。
「ご実家は? お父さんやお母さんには頼れないんですか?」
梨花の頭に母の顔が浮かんでくる。絶対母のところへは帰りたくない。
「頼れません」
小さいけれどきっぱりと答えた。
「両親は私が中学生のころに離婚して、父にはそれきり会っていません。私を束縛する母のことも好きになれなくて……実家に帰る気はありません」
芙美の顔が歪む。梨花はハッと口元を押さえる。
こんな話をしたのは、悠真以外はじめてだ。実の母親のことを「好きになれなくて」なんて言ってしまったが、ひどい娘だと思われただろうか。
親に反抗しているだけだと思われてしまうかもしれない。どんなに嫌な親でも自分を産んでくれた親なら大切にしろと言われるかもしれない。
しかし母への複雑な想いは、とてもひと言では伝えられないのだ。
梨花はうつむいた。芙美には嫌われたくない。
ぎゅっと胸元のセーターをつかんだとき、芙美の声が聞こえた。
「梨花さんがそう思っているのなら、実家には帰らなくていいと思います」
梨花は顔を上げてつぶやく。
「でもいつかは母と分かり合わなくちゃだめですよね?」
すると芙美は首を横に振った。
「分かり合えなくてもいいと思います。親子だって他人なんですから。それに梨花さんはもう立派な大人です。お母さんから離れたいのなら、離れるべきです」
梨花の胸がじんっと熱くなる。芙美は柔らかく微笑んで言った。
「でも誰か、梨花さんの話を聞いてくれる人がいるといいですね。つらいことは誰かに聞いてもらうと、ずいぶん楽になりますから」
その言葉が心に沁み込む。梨花は思わずつぶやいていた。
「私……芙美さんみたいなお母さんがよかったです」
芙美は目を丸くしたあと、くすくすと笑う。
「私はそんなにいい母親ではないですよ。十希也にとってはウザい母親ですし」
それからそっと、梨花の手を握る。
「だけどもし帰るところがないのなら、うちにいてもいいんですからね」
「ありがとうございます」
でもこれ以上、芙美に迷惑はかけたくない。
明日、町を出よう。それから……梨花はまだ自分の行き先を決められなかった。
「はい、お待ちどう!」
源がカウンターの上に大きめの器をふたつ置いた。白い湯気が立っていて、出汁の良い香りが漂ってくる。
「わぁ……」
盛られているのはほかほかのおでんだった。
大根、卵、こんにゃく、はんぺん、ちくわ、しらたき……たくさんの具が黄金色の出汁と一緒に盛られている。
「ここのおでんはとってもおいしいんですよ。あったまるから食べてみて」
「はい。いただきます」
芙美に勧められ、梨花は箸を取る。
まずは大きめの大根。箸を入れると驚くほど軟らかく、出汁がじんわりと染み出てくる。口に入れるとほろりと溶けて、深い旨味が広がっていく。
「おいしい……」
体がぽかぽかとあったまる、ほっこりとした味わいだ。
芙美は満足そうに微笑んで、自分も大根を口に入れる。
「うーん……やっぱりおいしいわ」
「ありがとうございます」
カウンターの向こうで源も穏やかに微笑んでいる。
梨花は卵も食べてみた。こちらも味が染み込んでいておいしい。こんにゃく、はんぺん、ちくわ……食べれば食べるほど、心も体も温かくなっていく。
「私、お店でおでんを食べるのははじめてです」
悠真とふたり、スーパーで具を買って、鍋を囲んだことはあるけれど。
すると芙美がふふっと笑ってこう言った。
「私はひとりでよく食べにくるんです。嫌なことがあっても、このおでんを食べると忘れられるから」
梨花はうなずきながら、いつも明るい芙美でも忘れてしまいたいことがあるんだな、と心の中で思う。
「でも今日は梨花さんと一緒に来られてよかったです」
芙美の言葉に嬉しさがこみ上げる。
「ああ、私も梨花さんみたいな娘が欲しかったわ。あんな無愛想な息子じゃなくて」
いたずらっぽく笑う芙美に向かって、梨花は言った。
「たしかに十希也さんは無愛想ですけど……だけど優しい人だと思います」
芙美は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに穏やかな笑顔になる。
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