転生したら彼女と再会した

せにな

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探知魔法を習得した

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 コップ一杯の水を片手に馬車の扉をノックする。

「おじさーん、お話しよー」

 できるだけ子供っぽく話しかけてみる。
 ゆっくりと扉が開き、中からは白髪と白髭の優しそうなおじちゃんが出てきた。
 あの二人みたいに目を奪われる感じの白い髪ではなく、所々に黒髪も生えていて歳を感じる髪の毛だ。

「どうかされましたか?」
「おじさんとお話したいなーって思ったんだー」
「こんな老いぼれと話されたいのですか?」
「話したいなー。ダメ?」
「構いませんよ」

 おじさんはニコッと笑って馬車の中のソファーに座る。

「じゃあお隣失礼するね。はいこれ水」

 コップを渡しておじさんの隣に腰を下ろす。

「おじちゃんってどこから来たのー?」
「わたくしたちはお隣のヴァイアウル王国から参りました」

 ヴァイアウル王国ってどこなんだ……?
 国のことは父さんと母さんに聞いてみるか。このおじさんにしか答えれないことを質問しよう。

「あの二人はお姫様なのー?」
「申し訳ございませんが、その質問にはお答えすることはできません」
「そうなの?綺麗だからお姫様かと思ったー」

 お答えすることはできませんって、ほぼそうですよって言ってるもんじゃね?まぁ知ったところで俺とは縁のない存在か。

 その後もかれこれ1時間ぐらい話して、俺が馬車の扉を開けたタイミングで母親らしき人が家の中から出てきた。父さんと母さんとなんか話してたのかな?でも母親らしき人の隣には女の子はいない。

「じゃ、おじさん楽しかったよ!ありがとね!」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったですよ」

 外に出ようとした瞬間におじさんの方から「ハイロ様をお助けてください」そんな声が聞こえた。
 振り返って聞き直そうとしたが、おじさんに背中を押されてそのまま馬車を下ろされてしまった。

「ハイロ様はどちらへ?」
「トイレに行ってるわ、すぐ出せるように準備してちょうだい」
「かしこまりました」

 そういえば父さんも母さんも家から出てこないな。少し様子見に行ってみるか。
 おじさん達も少し待つみたいだから特に気にせずに家の中に入る。

 ──パカラッパカラッ

 扉を閉めた途端、馬の足音と馬車を引く音が遠のいていくのが聞こえた。

 慌てて扉を開けて外を確認してみるとあったはずの馬車は遠くに小さく見える。

「え?娘さんは?」

 そこでさっきおじさんから言われた言葉を思い出す。

「『ハイロ様をお助けください』ってそのまんま意味かよ。てか分かってたなら自分で助けろよ!この老いぼれジジイ!」

 そう叫びながら父さんと母さんを探す。
 リビングを見て、寝室を見て、風呂場も見てみる。だけどどこにもいない。

「……何してんだお前ら」

 最後に見たトイレの中に2人はいた。それも縛られた状態で。
 とりあえず口にくわえている紐と腕を括っている紐を解く。

「もう一度聞く。何してんだお前ら」
「すまん。麻痺させられた」
「麻痺ってても魔法ぐらいは使えるだろ」
「一時的に魔法を使えなくする薬も盛られたのよ」

 薬剤の技術だけとんでもなく進んでる気がするんだが……。麻酔と魔法が使えなくなる薬があるってのはかなり恐ろしいな。

「てか麻酔ってことは……2人とも今動けないのか?」
「そうだな。人はやっぱり見た目で判断したらダメなんだな……」
「その通りよ。あんなデレデレしながらお茶を全部飲んでしまうんだから」
「ナズだって飲んでただろー!あとあんな可愛い顔されたら飲まざるおえないよ!」
「私はロイが飲んでたから飲んだのよ!」
「うるさーい!2人とも黙れ!2人とも飲んだんだから同じだよ!」

 なんでこの状況で喧嘩できるんだよ!自分たちの状況がわかってないのか!?
 ペシっと2人の頭を叩くと分かりやすく落ち込んだ。

「とにかく今は緊急事態だ」
「なにかあったの?」

 母さんが顔を上げて問いかけてくる。

「母親らしき人と一緒にいた小さな女の子見てない?」
「見てないな。その子がどうかしたのか?」
「あの子を馬車に乗せずに行ってしまったんだよ。トイレにいるって聞いたんだけど居ないし」
「探知魔法が使えたらすぐ見つかるんだがな……」
「薬もられてしまったから仕方ないわよね……」

 またもやシュンと頭を下げてしまう2人。

 今この2人を見下してるみたいで少しだけ気分がいいのは内緒。そんなことより俺がいるのになんで頭下げてんだ?

「俺に探知魔法教えることできるだろ」
「確かにできるけど……カルは魔法適正が全くないから難しいぞ……?」

 そうだよな。魔法適正がないと魔法使うのは難しいよな。分かってたよ。魔力だけじゃ魔法が使えないことぐらいわかってたよ。
 少し凹みながらも首を縦に振る。

「やれるだけやってみるから早く教えてくれ」
「わ、わかったから変な口調になってるのを戻してくれ……少し怖いぞ……」
「やっぱり変だったわよね。10歳じゃなくて17.8歳ぐらいの口調だよね」

 あ、まずい。10歳って言う設定忘れてた。さすがに上から目線すぎたか……。父さんと母さんを見下せるのが嬉しくてついついお口が悪くなってしまった。今後は気をつけよう。
 ポーカーフェイスは崩さずに適当な嘘をつく。

「今の10歳はこれぐらい話せるよ」

 知らんけど。

「そうなのね。カル以外に10歳の子供を見た事がないから分からないわ」
「ですよね……」

 そりゃこんな所に住んでたら見ないわな……。そのおかげで適当な嘘が通ったわけなんだけど……。
 ちょっと複雑な気持ちになりながら父さんに探知魔法を教えてもらう。

「まずこの辺りの地形を頭の中に浮かべてごらん」
「俺、外でたことないからこの辺の地形分からないんだけど」
「大体でいいよ大体で」

 そんな適当でいいのか?と思いながら地形をイメージする。

「そしたら魔力の反応を探す」
「魔力の反応とは」

 いきなり魔力の反応を探すって言われてもわかんねーよ。どれが魔力かもわからんのに探せるか。

「魔力反応とはと聞かれたら答えるのは難しいな」
「やっばり適性がないと難しいのか……」
「まだ諦めるのは早いぞ!カル!」
「別に諦めたつもりは無いけど……なにか方法があるの?」

 そう問いかけると父さんは、にっと笑って自信満々に口を開く。

「父さんのオーラは感じ取れるか?」

 その瞬間ムワァと父さんの体からどす黒いオーラが出てくる。
 その圧に一歩下がってしまう。

「目に見えるぐらい感じとれるよ」

 引きつった笑みで答える。

「これが魔力だ。父さんは全属性の魔法を使えるからどす黒いオーラが出てるけど、炎属性の適正なら赤色のオーラ。水属性なら青色のオーラがって感じだ。俺みたいに複数の属性に適性があれば別の色が出てくるぞー」
「な、なるほど。魔力については分かった」

 父さんが魔力をしまってくれたおかげで圧は消えたが、父さんだけは敵に回したくないと改めて実感した。
 魔力をしまった状態でもう一度父さんが聞いてくる。

「今も俺の魔力を感じることが出来るか?」
「うん、一応」
「よし、なら母さんの魔力も感知してみろ」

 立体の家を想像し、父さんの魔力を頼りにもう1つの魔力を探してみる。

 感覚を掴めただけあって母さんの魔力はすぐに見つけることが出来た。
 
「あったよ。少し小さいね」
「父さんよりも母さんの方が魔力量は少ないからな」

 なるほど、魔力量で反応の大きさが異なるのか。

「多分あの子はさらに魔力が小さいから探すの大変だぞ」
「探すのが楽になる方法とかないの?」
「一応あるが……カルの魔力量なら大丈夫か!」

 一瞬不安な顔をした父さんだったが俺の魔力量を思い出して、その顔はすぐに笑顔に戻る。

「ちなみにカルの魔力量は俺の2倍だからな。一応お前のスキルに魔力量制御と言うやつがあるからそれで制御しながら使えよ」

 父さんの2倍!?あれの2倍って俺かなりのバケモンじゃん!異世界が楽しくなってきたぁー!
 いやいやいや、落ち着け、そんなこと考えてる場合じゃないな。まずはあの子を探さないと。

「魔力制御はまた教わるとして、どうやったら探すのが楽になるの?」
「魔力を上乗せすることで周波を出せるんだよ。それを利用して探すことが出来る。上乗せすればするほど範囲が広がっていき、探知能力も上がる」
「了解。さっそくやってみる」

 目を閉じて大まかに山の地形を想像する……できるだけ広くに。
 そして魔力を上乗せ!

「うぐっ、おまっ、どれだけ魔力乗せたんだよ……!」
「み、耳鳴りが……頭に、響く……!」
「ナズ、もう少しの辛抱だ……!」

 近くにある2つの魔力が1つにくっついた。こいつらハグでもしてんのか?子供が頑張ってると言うのに2人はイチャイチャかよ。
 でも見つけることが出来た。少し離れたところに小さな魔力反応がある。

「見つけた。行ってくる」
「「いってらっしゃーい……」」

 探知魔法を辞めた途端、何故か2人は倒れ込んでしまったのを俺は見逃さなかった。
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