鳳月眠人のシナリオ台本

鳳月 眠人

文字の大きさ
18 / 29
シリアス

『収穫(男1:女1)』

しおりを挟む
『収穫』

─しゅうかく─


    作:鳳月 眠人


#すくほろ企画(『救いの詩/滅びの詩 -世界が終わる時、ぼくらは-』)便乗の一般参加作品です。テーマは「救済」。不問2で演じていただいてもOK!


◇◆ここから台本◆◇

エレオノラ:
 そろそろじゃない?
 いつまで私はここに閉じ込められたままなの?

ハーベスタ:
 ……この世界が滅ぶまで。

エレオノラ:
 ……え?
 だめよ? ハーベスタ。ちゃんと私を殺さなきゃ。

ハーベスタ:
 ……殺される側が殺す側に何を言ったって無駄だぞ。
 俺はお前を殺さない。残念だったな?

エレオノラ:
 ……どうして?

ハーベスタ:
 どうして? とは?

エレオノラ:
 世界の滅亡があなたの望みなの?

ハーベスタ:
 いいや? 結果的にそうなるだけだな。

エレオノラ:
 なに……本気なの。

ハーベスタ:
 はは、本気じゃないと思ってたのか?

エレオノラ:
 だって、どうして。

ハーベスタ:
 自分を閉じ込めてくれと言ったのはお前の方だろう?

エレオノラ:
 ……いつ? いつ、私、そんなこと言った?

ハーベスタ:
 ああ、寝ぼけていたか? 覚えていないのか。
 「私を離さないで」「ちゃんと閉じ込めていて」
 すべてお前の本心だろう。俺はそう受け取ったが?

エレオノラ:
 ──鐘が、鳴る。あと十回。
 世界の終焉を報せる、滅亡へのカウントダウン。


──間


エレオノラ:
 だとしてもあの時は、の話で……曲解だわ。

ハーベスタ:
 ッハッハ! 当たり前だ。

エレオノラ:
 ……なぜ、私なの?

ハーベスタ:
 はぁ?

エレオノラ:
 これまでのエレオノラはしっかり殺してきたんでしょ?

ハーベスタ:
 ……ふ、

エレオノラ:
 なんで笑っ……

ハーベスタ:
 (ため息)ハァ……

エレオノラ:
 ……ね、世界が終わりかけていて、
 ハーベスタも気が動転してるのよね?

ハーベスタ:
 まあ正気ではないな。その自覚はある。

エレオノラ:
 まだ遅くないわ。私は覚悟できているから。
 お願い。早く。

ハーベスタ:
 (冷たい声で)嫌だね。

エレオノラ:
 ハーベスタ……本当にいつもの、ハーベスタ……?

ハーベスタ:
 もうダメだろうこの世界は。
 遅くない、なんてことは無い。手遅れだ。

エレオノラ:
 でも、まだ生き残っている人はいる!

ハーベスタ:
 もう、焼かれた奴もいる。

エレオノラ:
 ──鐘が鳴る。あと九回。
 天高くそびえる塔の、天辺の鳥籠にまで届く、人々の悲鳴。
 私は耳を塞いだ。


──間


エレオノラ:
 お願い……

ハーベスタ:
 逆に聞こう。
 俺が殺したこれまでのエレオノラは「収穫」される時、
 全員絶望して泣いていたぞ。
 どうしてお前は生き残ることをそんなに拒む?

エレオノラ:
 …………

ハーベスタ:
 ……ああ……なるほどな。

エレオノラ:
 な……なによ……

ハーベスタ:
 いや。つまらねぇなと思っただけだ。

エレオノラ:
 つまら、ない?

ハーベスタ:
 ああ。

エレオノラ:
 ……ハーベスタは読心術が使えるの?
 よく分からないけどきっと見当違いよ。

ハーベスタ:
 そうか? どうだろうな。
 まぁどちらにしろ申し訳ないが、
 お前の想いは、俺の思惑の外にあることだ。
 聞いといてなんなんだがな。

エレオノラ:
 なぜ聞いたのよ……

ハーベスタ:
 単に不思議に思っただけだよ。
 俺の考えが変わると思ったか?

エレオノラ:
 だって私の「答え」を聞いていないじゃない。

ハーベスタ:
 目は口ほどに物を言うんだよ。
 口の方が嘘つきだ。そうだろ?

エレオノラ:
 っ、

ハーベスタ:
 ──鐘が鳴る。あと八回。
 鳥籠の外では、人々が「神の選別」を受けている。
 当選したやつは、神の炎に生きたまま焼かれて、めでたくあの世行き。


──間


ハーベスタ:
 ……エレオノラ。

エレオノラ:
 なに?

ハーベスタ:
 空を飛びたいか?

エレオノラ:
 読心術で読み取って。

ハーベスタ:
 そんなもんないって。

エレオノラ:
 ……私、あの時。
 あなたと手錠で繋がれたまま、強い風で身体が浮いた時。
 あれだけで楽しかった。

ハーベスタ:
 一瞬だったじゃねぇか。怖がってなかったか?

エレオノラ:
 怖かったし、びっくりしたわ。
 けれどすぐに、ハーベスタが引き寄せてくれたでしょ。
 あの時が──

ハーベスタ:
 あの時が?

エレオノラ:
 ……目は……口ほどに物を言う、のね。

ハーベスタ:
 ふん、そうだろ?

エレオノラ:
 そんな優しい目で見ないで……

ハーベスタ:
 ッフ、ふふ。

エレオノラ:
 (泣きそうな声で)なんで、そんな、笑えるの。

ハーベスタ:
 どっちにしろこんな世界、もう維持できねぇよ。
 滅びるべくして滅ぶんだ。
 お前が気に病むことじゃない。
 自由になれ、エレオノラ。

エレオノラ:
 ──鐘が鳴る。あと七回。
 わかったわ。あなたも私も、自分勝手なのが。
 でもそんなの、自分だけの理想があることなんて普通でしょ。


──間


ハーベスタ:
 しかし、懐かしいな。
 ブリーダーからお前を引き継いだ時か。
 発芽室から鳥籠へ上がる外階段で、お前が吹っ飛ばされたあと。
 なんて言ったっけ?

エレオノラ:
 終焉を告げるラッパが吹きたい。

ハーベスタ:
 なんの本を読んだんだよ、と思ったわ。

エレオノラ:
 別にいいでしょ。

ハーベスタ:
 先が思いやられたもんだが、
 今や立派なエレオノラに成長したなあ?
 自分を犠牲にしようと必死になって。

エレオノラ:
 ……私、ブリーダーにだって死んで欲しくない。

ハーベスタ:
 また、そういうこと言うだろ。分かってねぇなあ。

エレオノラ:
 ブリーダーはきっとまだ焼かれていないもの。

ハーベスタ:
 ブリーダーはな、真実に辿り着いた。
 だから今ここにいないんだ。

エレオノラ:
 真実? どういう意味? 真実って、何の?

ハーベスタ:
 この世界の真実だよ。

エレオノラ:
 なんなの、真実って。
 それが、ブリーダーがいないのとどう関係あるの。

ハーベスタ:
 通例では「収穫」のとき、
 そのエレオノラを発芽させたブリーダーも同席する。
 だが──

エレオノラ:
 ……生きて、生きてるわよね!?
 ハーベスタ!

ハーベスタ:
 ──鐘が鳴る。あと六回。


──間


ハーベスタ:
 どうでもいいだろ、どうせこの世界は滅ぶ。
 お前以外は全員死ぬ。

エレオノラ:
 ……やめて、もう……

ハーベスタ:
 無理矢理な延命を続けたこんな世界に、
 お前の命をかけなくていい。

エレオノラ:
 どうして……いつから……

ハーベスタ:
 照れるだろうが。深掘りさせるな。

エレオノラ:
 ……許さないわよ。ずっとずっと。

ハーベスタ:
 馬鹿だな。それこそ俺の思うつぼだ。

エレオノラ:
 ……なにそれ。

ハーベスタ:
 許すな。俺を。俺が消えても。
 目の前で焼かれようと、だ。

エレオノラ:
 ッ! いや……嫌!

ハーベスタ:
 許さないだけでいい。気には、病むな。
 俺が焼かれるのはお前のせいじゃない。
 俺の罪の重さだ。

エレオノラ:
 置いていかないでよ……
 離さないでって、言ったのにぃっ……

ハーベスタ:
 お役目、ご苦労だったな。
 こんなに大きな翼が真っ黒になるまで、
 鳥籠の中に幽閉された状態で、
 世界の汚物を濾過ろかして。

エレオノラ:
 真っ黒なほど、神様は喜んでくれるんでしょう?

ハーベスタ:
 そんなの方言だ。

エレオノラ:
 嘘よ!

ハーベスタ:
 疑うのか? 俺を。エレオノラ。

エレオノラ:
 は、ハーベスタ……

ハーベスタ:
 ──鐘が、鳴る。あと五回。
 世界が、延命するための生贄を欲している。
 エレオノラを要求している。
 人々の悲鳴は、断末魔は、泣き叫ぶ声は、
 救いを求める声は、ますます大きくなる。
 せるような、生き物が焦げる匂いが立ち昇っている。


──間


エレオノラ:
 う、うぅっ……おえっ……
 うっ、く……嫌……助けて……

ハーベスタ:
 やめろ同調すんな。既にこの世に善人はいない。
 焼かれてんのは大なり小なり差はあるが、悪人ばっかりだ。

エレオノラ:
 え……?

ハーベスタ:
 罪のない奴はな、みんな悪人に殺された。

エレオノラ:
 そんな!

ハーベスタ:
 俺だって悪人のうちの一人だ。
 これまでエレオノラを何人「収穫」してきたと思ってる。

エレオノラ:
 っ、でもそれはこの世界のためで……

ハーベスタ:
 ま! 一番最後まで残るだろうがな。
 エレオノラを「収穫」できるのは俺だけだ。

エレオノラ:
 そもそもどうしてハーベスタは一人だけなの。
 ブリーダーはいっぱい居たじゃない。

ハーベスタ:
 それもまたこの世界の真実の一つだな。
 気が紛れるなら軽く教えてやろう。
 この世界の十七万 三千九百 五人目のエレオノラ。

エレオノラ:
 ──鐘が鳴る。あと、四回。


──間


エレオノラ:
 この世はもともと、命の育つような世界ではなかった。
 遠い昔の文明の名残りとも、原始生物の代謝物とも
 言われるものが、豊かな生態系の邪魔をしていた。

 暗く淀んだおりは永く深くどこまでも留まり続けた。

 見かねた神は世界に一粒の「光」を落とした。
 光に満ちよ、神がそのように声を発すると
 一粒の光は神の似姿になり、おりをその身へと封じ始めた。

 それがエレオノラの起源である。そうでしょ?

ハーベスタ:
 良くできました。
 ちゃんと覚えていて偉いぞ、エレオノラ。

エレオノラ:
 ブリーダーみたいなこと言わないで。

ハーベスタ:
 おい、頭くらい撫でさせろよ。これが最後になるぞ。

エレオノラ:
 やめて、そんな事言わないで。
 そんな気分になれない。
 それで、ハーベスタの起源は?

ハーベスタ:
 ハーベスタはな。初めは……
 おりを産んでいた側の存在だった。

エレオノラ:
 おりを、産んでいた? 

ハーベスタ:
 エレオノラが天の遣いだとすれば、
 ハーベスタの起源は闇の使者だ。

エレオノラ:
 ……言ってること、すっごくイタいわよ。
 ハーベスタ……

ハーベスタ:
 おい馬鹿にするな。れっきとした口伝だぞ。
 仕切り直しだ。
 ハーベスタは当初、エレオノラをほうむるただの狩人、ハンターだった。

 だがエレオノラを葬っても、殺した時に光が満ちる。
 神の嫌がらせだ。
 光を殺ったところで無駄。
 逆に世界への奇跡を加速させる。
 オマケに光が死ぬ瞬間、種が弾けるように
 次の光が複数個、蒔き散らされるときた。

 次第に狩人は、光の恩恵を受けて生まれたもの達に
 崇められ始め、地位と役割を獲得した。
 皮肉にも、収穫する者。
 ハーベスタ、と呼ばれるような地位に。
 他の者がエレオノラを殺しても、奇跡は起こらない。

 だが所詮、闇の使者だ。
 光を葬る為の因子に適合する者は、
 光に満ちてしまった世界において稀。

エレオノラ:
 だからハーベスタは少ないのね。

ハーベスタ:
 そうだ。そしてそれが、表向きの真実、だった。

エレオノラ:
 え? 表向き?

ハーベスタ:
 こんな神話は所詮、誰かが後付けで作ったんだろ。
 おかしいと思わないか。
 エレオノラを何人犠牲にしても、世界は滅びかけている。

エレオノラ:
 それは……もともとエレオノラによる延命が
 必要だったような世界だったからじゃ……
 それか、エレオノラが収穫されたときの、
 奇跡の力が弱くなっているとか?

ハーベスタ:
 …………

エレオノラ:
 ハーベスタ?

ハーベスタ:
 ──鐘が、鳴る。あと三回。本能が急かす。
 目の前の「光」の血肉を捧げろと。
 黒く染まった翼を乱暴にもぎ取って、その悲鳴を聞けと。
 騒ぐ。エレオノラの目の中の光に。
 喉が鳴る。からだの中心が熱くなる。
 焼かれろよ、今。
 早くこの世の全員、焼かれてしまえ。


──間


エレオノラ:
 ねぇ、他のエレオノラはどうなったの。
 発芽して間もない子もいたでしょう。

ハーベスタ:
 ……勘違いした愚かなレジスタンスどもに
 みんな殺られたよ。

エレオノラ:
 っ、う、そ

ハーベスタ:
 早く天使を生贄にしろって押し寄せてな。
 翼さえありゃ何でもいいと、
 誰が殺ってもいいと、いつ殺ってもいいと、思ってる。
 頭が弱いのばっかりだ。

エレオノラ:
 ああ……っ! どうして……
 あんな可愛い子たちを……

ハーベスタ:
 な。こんな世界を見捨てたくなっただろ。

エレオノラ:
 …………

ハーベスタ:
 お前も、たいがいだな。

エレオノラ:
 私……

ハーベスタ:
 十分熟して、刈り時だ。まったく。

エレオノラ:
 あなたを、

ハーベスタ:
 …………

エレオノラ:
 …………

ハーベスタ:
 俺だけか?

エレオノラ:
 あなた以外を知るには、私の世界は狭すぎたもの。

ハーベスタ:
 なら、俺の思惑に乗ってくれ。

エレオノラ:
 なんでなのよお……

ハーベスタ:
 なんでだろうな。もう……光を葬らなくても、
 世界の寿命が尽きるから、じゃないか。

エレオノラ:
 そんなに目をギラつかせておいて?
 私を今にも喰い殺しそうな目をしてる。

ハーベスタ:
 俺が喰うわけじゃないぞ?

エレオノラ:
 ……食べないの? ねぇ。

ハーベスタ:
 食べない。

エレオノラ:
 生きたくないの?

ハーベスタ:
 もう、殺したくない。

エレオノラ:
 ──鐘が、鳴る。あと二回。
 どうしたんだろう。
 ハーベスタの瞳から、視線を外せない。
 見つめあっていると時間がゆっくりと経つように感じる。


──間


ハーベスタ:
 この鳥籠生活は、どうだった?

エレオノラ:
 おかげさまで悪くなかったわ。

ハーベスタ:
 トランペットはあまり上達しなかったな。

エレオノラ:
 意地悪ね。

ハーベスタ:
 俺の方が上手かった。

エレオノラ:
 、うん。上手かった。

ハーベスタ:
 今、吹くか?
 おあつらえ向きの様相ようそうだぞ。世界。

エレオノラ:
 ねぇ。表向きじゃない「真実」を、まだ聞いてない。

ハーベスタ:
 知らなくていいこともあるって、
 ブリーダーから教わらなかったか?

エレオノラ:
 ……私にとって都合が悪いことなのね?

ハーベスタ:
 ふぅん。俺のこと分かってきたな。

エレオノラ:
 気になるわ。余計に。

ハーベスタ:
 気になることがあるほうがいいんだよ、生きていく上で。

エレオノラ:
 ……わたし、だけ、残るのかな。

ハーベスタ:
 いていえば、それが「真実」の鍵だな。

エレオノラ:
 鍵? 私だけが残るかもしれないことが、
 世界の真実のヒント……?

ハーベスタ:
 ブリーダーは石碑を解読していたが、
 最後の鐘が鳴ったら石碑ごと消えるわな。

エレオノラ:
 ! 研究資料とか、残ってないかしら。

ハーベスタ:
 ここから出させねぇよ。

エレオノラ:
 どうしてよ。

ハーベスタ:
 どうせ下は、頭の弱いやつが暴れ回っている。
 ブリーダーの私室まで行けたもんじゃない。

エレオノラ:
 そこは護ってよ、私を。
 あなたは私のハーベスタでしょ?

ハーベスタ:
 やだね。世界が滅びるまで、ここにいろ。

エレオノラ:
 ──鐘が鳴る。あと一回……
 次の鐘が鳴ったとき、世界は……


──間


ハーベスタ:
 ──空間が圧縮されるのを感じる。熱い。
 本能由来のものだけじゃない。

エレオノラ:
 ハーベスタ? 汗が……

ハーベスタ:
 そろそろ俺も焼けそうだ。

エレオノラ:
 ど、どうしよう、お水……

ハーベスタ:
 そんなもんじゃ、無理だ。

エレオノラ:
 ……その鎌に私が飛び込んでいけば。

ハーベスタ:
 意味ねぇよ。
 俺が、俺の意思でお前を世界に捧げないと。

エレオノラ:
 絶対に……?

ハーベスタ:
 捧げない。誰にも……

エレオノラ:
 ハーベスタ……?

ハーベスタ:
 俺は相当な天邪鬼あまのじゃくなんだ。
 最後にひとつ、いいか。

エレオノラ:
 なんでも! 何をすればいい!?

ハーベスタ:
 子供じみた願いだ。
 お前がずっと願っていたことを、聞かせて欲しい。
 本心の、願いを。今の願いでもいい。
 いくつでもいい。

エレオノラ:
 そんなことでいいの。

ハーベスタ:
 ああ。

エレオノラ:
 ……私が、どこにも飛んでいかないように離さないで。
 閉じ込めていて。捨てないで。
 置いていかないで。殺してよぉ……

ハーベスタ:
 ふ、いい子だ。よく言えた。

エレオノラ:
 はっ、ハーベスタ! 火がッ!

ハーベスタ:
 ──俺がこれまであやめたエレオノラは
 みな、死を目の前にして絶望していた。
 生まれた意味を探していた。自由を求めていた。

 けれどこいつは自分の価値を、
 世界のための生贄としてしか見ていない。
 こいつを発芽させて幼少期を育てたブリーダーの
 教育のせいだ。どんな強迫観念を植え付けたんだよ。

 自由よりも、俺を求めるような言葉に
 すっかり堕ちてしまった。
 あんな風に甘えられたら手放せなくなるに決まってる。
 ちょろすぎる自分を嘲笑あざわらいたい。

エレオノラ:
 いや……! 死なないで! 燃えないで!
 許して! 奪わないで!

ハーベスタ:
 俺は奪われるんじゃない。ぐ、ぐぁが、

エレオノラ:
 あああ……っ! 抱きしめてるのに!
 どうして私は燃えないのよぉっ!

ハーベスタ:
 おっ、お前のっ、頭の中に、心の中に、遺り続ける。

エレオノラ:
 ううっ、う、

ハーベスタ:
 この鳥っ、籠から、世界から、自由になっても。
 俺って言う檻の中でずっと、ずっ、ゴハッ、ッと、囚われてろ。
 神になんか、こんな世界になんか、お前を渡してやるか。

エレオノラ:
 いやだぁっ! 殺してよおおおおお!

ハーベスタ:
 ──鐘が、鳴る。最後の1回。

エレオノラ:
 ハーベスタ……私!
 あなたに生きていて欲しかった……っ

ハーベスタ:
 ──奇遇だな、俺も同じだ。


──間


エレオノラ:
 静かになった。鳥籠は崩壊した。塔も崩れ落ちていく。
 外から眩しさが襲ってくる。
 でも何が起こってるかなんてどうでも良くて。
 私は小さく黒焦げに変わり果てたハーベスタを抱いたまま。
 目を閉じた。


ハーベスタ:
 この世界は一人の「翼を持つ光」によって始まった。
 ソレは、孤独な自分を「必要とする」世界を創り出した。
 あがめられ尊ばれて処刑され
 何度も何度も養殖され育てられる存在に、自分をおとしめた。

 同時に、自分を深く愛する存在を創った。
 その存在に、自分を永遠に殺し続ける宿命と役目を与えた。
 もしかしたら世界が滅んだあと、
 お前もそうなってしまうのかもしれない。
 ……ならないで欲しい。ならないことに賭ける。

 殺せなくて済まない。けれどどっちみち、
 こんな歪んだ世界が維持できていたことの方が奇跡だ。
 この世の全てはお前に収束していたんだ。
 エレオノラ。


──間


エレオノラ:
 白以外、何も無い世界。
 暗く淀んだおりなんて無い。
 怒ってる神様もいないじゃない。
 こんなところで、一人で?
 記憶の中でしか会えないあなたを想って? 恨んで?
 エレオノラは何歳になったら死ねるの?
 ねぇ、こんな終わりを、誰が望んだの。



ハーベスタ:
(タイトルコール)『収穫』

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...