社長とは恋愛しません!

日下奈緒

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第1章 仕事とプライベートは分けたいだけ

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タクシーが、社長の自宅に着いて、私達はタクシーを降りた。

「入って。」

社長の自宅は、意外にも一軒家だった。

25歳で、一軒家を持つなんて、やっぱりお坊ちゃまだ。


階段を昇り、家の中に入る。

「お邪魔します。」

「ああ。」

広い玄関。白を基調にして、清楚な感じが広がる。

靴を脱いで、スリッパに履き替えると、直ぐにリビングが飛び込んできた。

「そこに座って。」

社長は、大きなソファを指さした。

「コーヒーでも淹れるよ。」

「あっ、私が淹れます。」

荷物をソファに置いて、私はキッチンに向かった。


「初めて来た時ぐらい、俺に淹れさせて。」

また胸がキュンとした。

何?さっきから、私どうしちゃったの?

社長相手に、7歳も年下の男子にキュンキュンするなんて。

30歳も超えているのに、恥ずかしい!

そして手慣れた感じで、社長はコーヒーを淹れた。

「はい。」

コーヒーカップを手渡しされて、一口飲む。

「美味しい……」

「だろ?」

無邪気に笑う社長の笑顔が、眩しい。


「景子さん。」

ドキッとした。

急に、名前で呼ぶなんて、どういう意味?

しかもどんどん、私に近づいているんですけど。

「俺の事、どう思ってる?」

もしかして、私、ロックオンされている!?

「あの、社長。落ち着きましょう。」

私は、社長から離れて、コーヒーカップを持って、ソファに向かった。

「これでも、落ち着いているよ。」

「いえ。私を口説こうとしているなんて、冷静ではありません。」

そうだよ。

だって、私この前、会ったばかりだよ?

今日は、女優の石坂花音と会ったばかりだよ?

どう考えても、彼女の方がいいでしょ。

「ふーん。」

社長もコーヒーカップを持って、ソファに座った。

私はそっと、間を取った。

「傷つくな。俺の事、嫌い?」

「嫌いではありません。」

むしろ、その綺麗な美男子振りが、最高に好きです!


「だったら、俺の側にいて。」

社長が、私との隙間を埋める。

「社長、何を考えているんですか。」

「何って、何?」

ニヤニヤしている。

うわっ!社長、小悪魔。


「駄目です!」

私は社長を両手で押した。

社長はそのまま、私を見つめる。


「どうして?」

「どうしてもです。」

綺麗な顔を武器に、7歳も年上の女をからかおうなんて、虫が良すぎる。

「年上の女を、からかわないで下さい。」

「からかっていないよ。」

ううっ!反則だ!そんなの嘘だ!

私は社長と、反対を向いた。

「なんでそんなに、警戒するの?」

「社長が、いつもと違うからです。」

と言っても、ここ数日しか、社長の事見ていないけれど。

でも、どう考えたって、年上の女を弄ぼうとしている!


「そう言えば、仕事とプライベートは、分けたいって言ってたな。」

「そうです!」

そうよ。私は2度と、過ちを犯したくない。

「俺と、タクシーに乗ったのは、プライベートじゃなかったの?」

「それはっ!」

顔が赤くなる。

社長を仕事抜きで見ると、モテるシュガーボーイにしか見えない。

駄目!そんな目で見たら駄目!


「……仕事です。社長を無事送り届けるのも、秘書の仕事なので。」

「何でも仕事にするんだな。」

社長の顔が近づく。

ヤバイ、キスされる。

けれど、いつまで経っても、唇は重ならない。

そっと目を開けると、至近距離で社長が私を見ていた。


「君って、近くで見ると肌綺麗だね。」

「一応、手入れはしているので。」

「クククッ!」

また笑っている。

何で?肌手入れしているって言って、笑われなきゃいけないの?


「あーあ。君って、手ごわいね。」

「そうですか?」

いや、私ももう少しで、社長に落ちそうになった。

秘書でなければ。相手が社長職じゃなければ。

どうなっていたか、分からない。

「お陰で、今夜の相手は、見失ったよ。」

「えっ?」

すると社長は、ニコッと笑った。


その笑顔が、私の胸をキュンとさせる。

どうしてだろう。

何だか、社長がものすごく、可愛く見えた。
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