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2 関係性
しおりを挟む腹の中のものが熱く脈打って、喉の奥で声をかみ殺しがくがくと震えた。
何度も擦られた中はひどく敏感になっていて、ゆっくりと引き抜かれるだけで悲鳴を上げたいほどの快楽が頭の奥にびりびり響く。
「っ、……っ、ふぅ……っ」
……やば、やばっ。あっ、ほんと。むり……。
体の反応を抑えすぎて涙が頬を伝って流れていき、あまりの快楽から振り向いて抱き着いて甘ったるいピロートークを繰り出したくなる。
しかし、そんなことをする仲でも関係性でもない。グレンは僕だから抱いているのではなく、こうなったのは深い深い訳があり。主に姉さまがわるい。
背後からため息とも、そうではないとも取れないような、強いて言うなら自分を落ち着ける様な細く息を吐く音が聞こえて、僕はとろけきった表情を元に戻しながら涙をぬぐって振り返った。
「……お、終わった? グレンは相変わらず控えめっていうかなんて言うか。どお? 女の子ともセックスできそ?」
平然とした顔をして彼に問いかける。それからベットの上にほうっておいた金のリボンを手に取って適当にくくる。
するとグレンはまた長いため息のように息を吐いてそれから、僕の手を引いて自分の方へと引き寄せた。
「あなたは本当に雰囲気のかけらもない。髪、くくるよ、いつも終わった後、雑だから」
「いいのに」
そういいつつも彼は綺麗な銀髪をかき上げて、前髪を避けた。
グレンだって終わった後、いつも髪型は適当な癖に僕に言えたことではないと思う。
しかし僕が抗議するまでもなく、もう彼は適当にくくっただけの髪をほどいて丁寧に手櫛で僕の髪を梳き始めた。
グレンの指先が頭皮に触れて、ゆっくりと髪を梳くその感触だけでもう一回絶頂を迎えてしまいそうなほどに心地よかったが、流石にそんなに感じていたらグレンに失礼だろうと思って、すこし肩をすくめて気を逸らそうと別の話題を考えた。
するとすぐにその話題を思いつく。
というかここ最近僕は、そのことでずっと頭がいっぱいなのだ。
「……ねぇ、グレン」
「なに」
「あのさ、そろそろ、君の運命の人が現れると思うんだよ。僕ねそういうのわかっちゃうんだ」
「……最近ずっとそんなこと言ってるけど、正直変だ。運命なんて俺は信じない」
「なんだよ。朴念仁。そのぐらい信じて、そんで君がくっついてよ。僕はそれが一番安心できる」
「何言ってるんだかさっぱり意味が分からない。はい。できた」
グレンは両肩をポンと叩いて、もう動いていいと示す。
そうされて自分の髪に触れてみた。たしかにいつもよりはずっと綺麗に結ばれているけれどどうせ、屋敷に戻ったらほどいて後は眠るだけなのだ。
それなのに気にする必要なんてどこにもないと思う。
「それに、ニコ。俺はあなたに言いたいことがある。俺たちはこんな時にしか会わないけどそういうのを抜きにして、まずはすこしだけの間でも俺たち二人で……」
なんだかもじもじとして言葉を考えながらいうグレンの話を僕は聞いていなかった。
綺麗にまとめられた髪をうしろに流して、次に何をするべきだったかあれこれと考える。
……グレンのケアは終わったし後は、アラン様のところにも顔を出して、フィルにもそろそろサボりすぎだと怒られるし。僕があんまり忙しくしいてるとメロディ姉さまのストレスが酷い事になるからなぁ。
それも気を付けて、具体的にルシアがいつ頃来るのか備えないと……。
「……会う日が欲しい。ニコラス。思えばあなたのことを俺は多く知らない。こんなに体を重ねてるのに」
「……うん。……そだね」
……今は大人しくしてくれてるけど、絶対あれ嵐の前の静けさ的な奴だよ。うわっ、そう思うと怖すぎる。
っていうか、あんまり目を離していると気がついたらキマってるときあるからな。
そうなるとひどいしやばいし! あの時の姉さまの目怖いんだよっ。
メロディ姉さまのとある日の酷い状態を思い出してぞっとして、それからこんなことで本当に、大丈夫かと猛烈に不安になった。
なんせ彼女はとんでもないのだ。
「俺の話聞いてる。ニコ」
「聞いてるって、聞いてるけど…………う、うう~っ、はぁ、胃が痛くなりそう!」
「聞いてないね。ニコはそういうところだ。本当に」
「でもでもだってっ、もうダメかも……グレン。君はいいやつだから、僕を助けると思って君が主人公のヒーローになって!」
「……だから、何言ってるかわからないって。ニコ。全部説明してくれたら協力できるけど」
そんな風にグレンがそう言ってくれても僕は本当に何も言えやしない。
誰がこの世界が乙女ゲームの世界で、姉が悪役令嬢で困ってるなんて言って信じてくれるだろうか。
普通に、メロディ姉さまの行動は悩むに値することではあるが、断罪が決まってっていて、ついにその破滅へのカウントダウンが始まろうとしているからいつも以上に切羽詰まっている。
だって、僕は死にたくない。
「言えたら苦労してないんだってばっ」
「……はぁ、そういうと思った。ニコはいつもそうやって急いでばっかりで俺の事も……」
「なんだよ。マメに来てるじゃん。それにほら今日だって可愛くしてきた。それにそろそろ、グレンも女嫌いが治ったはず!」
「勝手だな」
「イイじゃんっ、グレン。君にだけなんだから甘えさせてよ」
彼にはわからないと知っているのに言葉を吐き出して、苦しい気持ちを何とか抑える。
いつだって決して折れたりしない打たれ強さだけが取り柄の僕だが、今回のことばかりは、久々に緊張していて日々が苦しい。
本当はぎゅっとハグして慰めて? とキスをせがむぐらいはしたいのだ。
しかしあいにくそういう関係でもないし、彼は普通にノンケである。
そして、ノンケで乙女ゲームの攻略対象であるのだ。そして女嫌い属性になったとっても深いわけがあって治療中なのだ。
男に甘えられたって、気色が悪いだけだろう。
なので考えを切り替えて、ヨシッと拳を握ってグッと顔をあげた。
「まぁ、こんな風に君に甘えてても始まらないよね。そもそも僕はメロディ姉さまの行動を贖うためにここにいるだけだし、君は僕にやさしくする理由もないし、むしろ未だにぶん殴られても文句言えないし!」
「ニコラス。もう俺はそんな風に思ってないって」
「じゃあ、姉さまが大罪を犯して死ぬって時に僕ら二人とも助けてくれる?」
「…………少し時間が欲しい」
「無理しなくていいって、わかってるからさ! んじゃ、そろそろ僕行くから、寮内のお風呂閉まっちゃってるよね? お屋敷に戻ってからいっかぁ」
「まっ、ニコ……夜も遅いし泊っていったら?」
「え~、いいよ。僕、男だよ。そんな風に気なんて使わなくっていいって!
屋敷にちゃちゃっと帰るだけだから、じゃあね、グレンおやすみ、バイバイ!」
そういって引き留めようとするグレンに、今日も律儀だなぁと思いながら手を振って別れを告げる。
帰りながらもグレンが何か言いたげであったという重要な情報をすっかり忘れて帰路に就く。
やっぱり頭の中はもうすぐ始まる原作の事で頭がいっぱいになっていたのだった。
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