勇者パーティーの賢者、女奴隷を買って無人島でスローライフする

黒須

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一章

第8話 元A級冒険者パーティー壊滅

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「警告はしたからな。悪く思うなよ」

 俺は右手でハンドガンサインを作り人差し指をエルフ少女を担いだ男に向ける。

「バン!」

 指先から勢いよく飛び出したBB弾サイズの魔力弾は銃弾の如き速さでエルフ少女を抱えた大男の二の腕に吸い込まれた。
 圧縮した魔力玉の中に大量の空気を発生させる魔法。俺は〈魔空〉と呼んでいる。

 バフッ!――腕の中で破裂した〈魔空〉によって男の胴体と腕が切り離される。

「ぐぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あああぁッッ!」

 腕と一緒に少女も落ちたから。

「グラビティ」

 地面に落ちる寸前、俺が放った重力魔法でエルフ少女の体はフワッと宙に浮く。そのまま空を飛んで俺の両腕に落ちた。

 俺はお姫様抱っこしたエルフ少女を地面に下ろしてあげる。

「大丈夫か?立てるな?」

「……うん。怖かったけど……大丈夫」

「ぐぎぎぎぎ、俺の腕がぁああああッ!」

 片腕を落とした大男が騒ぐなかキラービーメンバーが2人、静かに姿を消した。

「アサシン職か。はぁー、殺人は好きではないからな……」

 隠蔽魔法で姿を消した暗殺者2人は短剣を抜き俺に迫っている。一人は足元、もう一人は上か。
 しかし、姿は目で見えなくとも、俺がこのテント全体に張り巡らせた探知魔法で位置や動きをはっきり捉えている。

「バン バン」

 俺が何もない空間に〈魔空〉を撃つと片足を吹き飛ばされ、そこから血を噴き出した男二人が姿を現し地面に転がった。

「あ゛、足がぁああああああ!」
「いっでぇえええええええ!」

 更に他のメンバーが動く。

「こいつヤベぞ!全力でいく!」
「ああ!」

「「赤き竜の御霊、全てを焼き尽くす灼熱の息吹、業火の……」」

 少し離れた場所にいた魔法使い2人が詠唱を始めた。これは第三位階炎魔法〈ドラゴンブレス〉。そんな大魔法を使ったら辺り一面焼野原になるぞ。

「「ドラゴンブレス!!」」

「ディレイトマジック」

 ドラゴンブレスの炎が発生した瞬間、すぐにそれは四散した。

「お、俺の魔法が……消えたッ!」
「な!何をしやがった!?」

「魔力をかき消すディレイトマジックだ。知らないのか?」

「知るか!そんなもん!」

 これは第三位階魔法で大魔帝国軍の幹部は普通に使っていたが……。A級冒険者ならこんなものなのかもしれない。

「まぁいいや。バン バン」

 魔法使い二人は詠唱できないよう口を吹き飛ばした。口が無くなり言葉を出せない二人は顔を押さえ地面に倒れて悶絶している。

「これで5人か。なぁそろそろ止めないか?さっきも言ったけど、俺や俺の奴隷に危害を加えなければ別にお前たちを殺したりはしない」

「ふざけるな!貴様何をしているッ!?詠唱していないってことは魔法ではないのか!?」

 リーダー格の男が叫んだ。

「いや、魔法だよ。俺が使ったのは第四位階の風魔法だ。威力は1000分の1程度に抑えているけどな」

 こんなところで空気の大爆発を起こしたらテントが吹き飛ぶからね。

「ふざけるな!無詠唱などありえない!第四位階の魔法は存在しない!それに魔法の威力を調整する?そんなことできるわけないだろう!デタラメぬかすなッ!」

 実際今あんたの前でやったじゃん!ただここで言い争ってもしょうがない。
 それに5人も戦闘不能にしたから俺が買った奴隷の女の子達がめっちゃ引いている。完全にヤバイ奴だと思われたよ。こいつらのせいで。
 まぁ俺の横にいるエルフ少女とラウラは瞳をキラキラさせてるけど!ん?赤髪の子も俺を尊敬の眼差しで見詰めているような?

 俺が呆れていると会長がリーダーに言った。

「本当に魔法なら彼はそろそろ魔力切れになる筈です。宮廷魔法師だって第三位階の大魔法を4、5回使えば魔力切れになると言います。彼は既にそこの奴隷に高位の回復魔法を多様していますからもう限界でしょう」

 それは違うな。例えば奴隷紋は第四位階の催眠魔法だが、魔法を使えない一般人の魔力でも発動できる。魔力消費は魔法で起こす事象の規模と比例する。位階は魔法の難度を現しているに過ぎない。

「ぐへへへ、それもそうだな。おい!お前は万が一の為、奴隷を人質にとれ」

 リーダー格の男が仲間に指示を出す。

「へい。任せてください」

「こいつを奴隷にするのは止めだッ!痛めつけて確実にぶっ殺す!泣いて命乞いしても許さねーッ!残ったメンバー全員で行くぞ!」

「「「おう!」」」

 キラービーメンバー4人は剣を抜き俺に襲いかかってきた。1人は短剣を抜き奴隷に向かって駆け出した。

「グラビティ」

「「「「ぐはっ!!」」」」

「急に体が重く……ぐお……何をしやがったッ!?」

「重力魔法だよ」

 リーダー格の男にそう答えた。
 男5人は抜いた剣を手放し、地面に倒れ張り付いている。

「重力魔法、だとぅ?黒竜族が使う魔法じゃねーか!?お前、ドラゴニアンなのか!?」

 ヴァンパイア族と同等、最強種族の一角だな。

「リ、リーダー、こここいつもしかして……5年前の勇者パーティーメンバーじゃ?た、確か……12歳のヤバい魔法使いがいたはず……」

「その黒髪。そうか……思い出したぞ。ぐはっ。……第四次人魔大戦で最も魔族を殺し魔王を討ち取った魔法使い、大賢者……ゴロウ……ヤマダ……」

「ああ、俺がそのゴロウ・ヤマダだ」

 魔族と言っても精霊眼のラウラやヴァンパイア少女と同じで人族と変わらない。大戦時、俺はそれを数え切れない程、……殺している。

「ひぃ、じにたくない」
「ごろさないでぐれ」
「だ、だのむぅー。だずげでぐれぇー。おでたちが悪かったー!」

 リーダー格の男は重力に押し潰され地面に体が張り付いている。それが泣きながら命乞いしてきた。

「俺を確実に殺す。命乞いしても許さないって言ってたよな?」

「あでは……ぶべ」

「奴隷になるなら助けてやろうか?」

「なぶっ!なぶがら、ぶへッ!」

 キラービーメンバーの体は本来の半分程度まで潰れて煎餅のようだ。
 重力魔法を解除すると男達は既に虫の息だった。

「さて、先にこいつ等を奴隷にするか」

 俺は奴隷紋のスクロールを使わなくても直接、奴隷催眠魔法を付与できる。が、リーダー格の男の腰袋に丁度11枚、奴隷紋スクロールが入っていたから、それを同時にグラビティで宙へ浮かせた。そして倒れている10人の首筋にスクロールを飛ばし同時に魔力を流し込んで奴隷紋を刻む。

 1枚余ったな。取り敢えずポケットに入れておくか。


    
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