勇者パーティーの賢者、女奴隷を買って無人島でスローライフする

黒須

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一章

第12話 奴隷と遊ぶ

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 ラウラ、ヒオリ、エルフ殿三人の険悪なムードに一番小さなウサギの子は小刻みに震え怯えている。
 猫の子と狐の子はご飯食べたら寝ちゃった。
 犬の子はめっちゃ尻尾振りながらキラキラした目で俺を見ている!?もっとご飯食べたいのか?

「あ、そうだ!待ってる間暇だからトランプでもやらない?」

「「「トランプぅ~?」」」

 俺は異次元倉庫からトランプを取り出して皆に見せる。

「このカードで遊ぶんだよ。順位を競い合ったり勝負したり……」

「ほう、勝負ですか、これは面白い。その板を手裏剣の如く投げ合うのですね!ふふ、是非、某も参加させてくだされ!」

「そんな物騒なことしないからね」

 この世界の武の達人は肉体や武器に魔力を纏い強化して戦う。トランプを投げて首を飛ばすことも可能だ。

「最初は簡単なババ抜きがいいかな?」

「「「ババ抜きぃ?」」」

 そうだ、チョコを景品にして逆ババ抜きにしよう。その方が盛り上がる。
 俺は異次元倉庫からチョコを取り出して、皆にチョコとジョーカーカードを見せる。

「最後にこのカードを持っていた人が勝ちで、このお菓子を食べられる。数字を合わせてるだけの簡単なルールだからやりながら教えるよ」

「面白そう!ボクやるよ!」

「私はやらない」

 エルフ殿がそう言うとラウラはきょとん顔で首を傾ける。

「ん?逃げるの?」

「あははははっ!魔族殿ぉ~、臆病者にその様な言い方は可哀想ですよぉ~」

「はぁ?バッカじゃないの!やるわよ!やってやるわよ!それであんた達をボコボコにしてあるげるわ」

 煽るラウラもどうかと思うがヒオリの言い方がまた性格悪い。そして安い挑発に簡単に乗ってしまうエルフ殿。

「アズダールの子も一緒にやる?そういえば名前、まだ聞いてなかったね」

「わたくしは……ア、アンヌです。お誘い大変光栄です。はい、わたくしも参加させてもらいますわ」

「俺はゴロウ・ヤマダ、ゴロウでいいよ」

「ええ、……存じております」

 青ボブは上目遣いで俺を見ながら頬を染めて呟いた。
 ん?どこかで俺を見たことあるのか?勇者パーティー時代、戦勝パレードとかよく街中でやっていたからな。
 民衆の歓声が上がる中、笑顔で手を振りながら歩いたな。懐かしい。

「友達二人もやる?」

「えっと……わわわたし達は……」

「ゴロウ様のせっかくのお誘いですから、二人もやりましょう」

「「はい」」

 友達と言うより部下だな。

「二人はアンヌの侍女なの?あと名前聞いてなかったね……」

「ええっと……はい。あ、あの、わわわたしはレナ、とお申します」
「リタです」

 レナはおっとりした顔で、あがり性なのかな?リタは顔も性格もクールな感じ。
 関係を聞かれて3人は少し動揺した。何か事情がありそうだ。

「ココノとモモもやるか?」

 ココノは兎の獣族でこの中で一番小さい。モモは褐色肌の犬の獣族で一番大きい。

「ココノん見てるの」
「あたしもルールとか分からないからさ、この子と一緒に見てるよ」

「そっか、まぁやりたくなったらいつでも参加してくれ」

 こうして最後にババを持っていた人が勝ちというルールで逆ババ抜きが始まった。


 そして、3回目の勝負を終えて――。

「やったね!またボクの勝ち♪」

「ぐぬぬぬ、よりによってまたこの女が……」
「くぅ~魔族殿強すぎですぞ」
「ラウラさんお強いですわね」

 結果はラウラの三連勝である。

「これすっごく美味しいんだよね。パク!……んん~、甘くて美味しい~♪」

 途中から参加した兎のココノと犬のモモも含め全員、ラウラがチョコを食べる口元を凝視している。因みにモモはよだれを垂らしている

「ラウラ、もしかして未来を見てるのか?」

「えっ……ゴロウはさっき精霊眼って言っていたけど、ボクの目のことを知ってるの?」

「ああ、その水色の瞳は天空眼といって未来を見る予知能力があるらしいぞ」

「なっ!卑怯ではありませぬか!某もチョコ食べたいのにぃ!」
「そうよ!わ、私だって勝ちたいのにぃ!」

「まぁまぁ落ち着いて。ラウラ目痛くないか?」

「うん、ゲームに興奮して未来を見ちゃったから……少し痛い」

 それもそのはず、この子が纏ってる禍々しい膨大な魔力は勇者や魔王と同じレベルなのだ。
 こんな幼い子供がこの規模の魔力を纏えばいつか目を壊してしまう。
 おそらく彼女は、この力でずっと先の未来を見るなど強力な力を行使して目を潰したのだろう。

「楽にしてやるよ。マジックドレイン」

 俺はラウラの目の前に手をかざし彼女から魔力を吸い取った。魔力規模を10分の1程度まで抑えることができた。

「目が凄く楽になった……。あれ?それにずっと続いていた頭痛も治ったよ?」

「ラウラには魔力制御を教える。覚えるのに数年かかると思うけど、できるようになれば目の痛みや頭痛はなくなる。それまではたまにこうやって楽にしてあげるからな」

「うん。ボク覚えたい。ゴロウ……ありがとう」

「良かったですなぁ、魔族殿ぉ~。で、続きはどうなさるお積もりですかな?よもやまだイカサマを続ける積りでは御座いませぬな?」

「今度やったら布で目を縛るから」

 とエルフ殿。それじゃ何も見えないぞ。
 しかしあれから1時間半くらい経つな。このテント全体に張り巡らせた探知魔法で人の動きを全て把握しているが、奴隷の健康確認は全て終わっているようだ。

 あの会長、直ぐにどこか行ったけど、今どこにいるんだ?このテントにはいない。
 魔力探知を広げよう。

「ささぁーゴロウ殿、続きをやりましょう!」
「ココノんも次、やりたいの」
「やっとルールを覚えたから次はあたしも!」
「ゴロウ様?」

 俺は魔力探知を広げながら皆と話す。

「ゲームは終わりだな。そろそろ帰るから家でまたやろう」

 そう言うと皆ショボンとなった。余程楽しかったんだな。まぁここ娯楽なんて無いだろうし。
 後でチョコも食べさせてやろう。

 探知魔法をテントから商会全体へ、そしてこの王都全体へと広げていくと会長を発見した。

 馬車に乗って王城方面へ向かっている。
 何だよこいつ。ヴァンパイア少女を無償で譲る約束を反故にして、憲兵にでもたれ込むつもりか?


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