12 / 97
一章
第12話 奴隷と遊ぶ
しおりを挟むラウラ、ヒオリ、エルフ殿三人の険悪なムードに一番小さなウサギの子は小刻みに震え怯えている。
猫の子と狐の子はご飯食べたら寝ちゃった。
犬の子はめっちゃ尻尾振りながらキラキラした目で俺を見ている!?もっとご飯食べたいのか?
「あ、そうだ!待ってる間暇だからトランプでもやらない?」
「「「トランプぅ~?」」」
俺は異次元倉庫からトランプを取り出して皆に見せる。
「このカードで遊ぶんだよ。順位を競い合ったり勝負したり……」
「ほう、勝負ですか、これは面白い。その板を手裏剣の如く投げ合うのですね!ふふ、是非、某も参加させてくだされ!」
「そんな物騒なことしないからね」
この世界の武の達人は肉体や武器に魔力を纏い強化して戦う。トランプを投げて首を飛ばすことも可能だ。
「最初は簡単なババ抜きがいいかな?」
「「「ババ抜きぃ?」」」
そうだ、チョコを景品にして逆ババ抜きにしよう。その方が盛り上がる。
俺は異次元倉庫からチョコを取り出して、皆にチョコとジョーカーカードを見せる。
「最後にこのカードを持っていた人が勝ちで、このお菓子を食べられる。数字を合わせてるだけの簡単なルールだからやりながら教えるよ」
「面白そう!ボクやるよ!」
「私はやらない」
エルフ殿がそう言うとラウラはきょとん顔で首を傾ける。
「ん?逃げるの?」
「あははははっ!魔族殿ぉ~、臆病者にその様な言い方は可哀想ですよぉ~」
「はぁ?バッカじゃないの!やるわよ!やってやるわよ!それであんた達をボコボコにしてあるげるわ」
煽るラウラもどうかと思うがヒオリの言い方がまた性格悪い。そして安い挑発に簡単に乗ってしまうエルフ殿。
「アズダールの子も一緒にやる?そういえば名前、まだ聞いてなかったね」
「わたくしは……ア、アンヌです。お誘い大変光栄です。はい、わたくしも参加させてもらいますわ」
「俺はゴロウ・ヤマダ、ゴロウでいいよ」
「ええ、……存じております」
青ボブは上目遣いで俺を見ながら頬を染めて呟いた。
ん?どこかで俺を見たことあるのか?勇者パーティー時代、戦勝パレードとかよく街中でやっていたからな。
民衆の歓声が上がる中、笑顔で手を振りながら歩いたな。懐かしい。
「友達二人もやる?」
「えっと……わわわたし達は……」
「ゴロウ様のせっかくのお誘いですから、二人もやりましょう」
「「はい」」
友達と言うより部下だな。
「二人はアンヌの侍女なの?あと名前聞いてなかったね……」
「ええっと……はい。あ、あの、わわわたしはレナ、とお申します」
「リタです」
レナはおっとりした顔で、あがり性なのかな?リタは顔も性格もクールな感じ。
関係を聞かれて3人は少し動揺した。何か事情がありそうだ。
「ココノとモモもやるか?」
ココノは兎の獣族でこの中で一番小さい。モモは褐色肌の犬の獣族で一番大きい。
「ココノん見てるの」
「あたしもルールとか分からないからさ、この子と一緒に見てるよ」
「そっか、まぁやりたくなったらいつでも参加してくれ」
こうして最後にババを持っていた人が勝ちというルールで逆ババ抜きが始まった。
そして、3回目の勝負を終えて――。
「やったね!またボクの勝ち♪」
「ぐぬぬぬ、よりによってまたこの女が……」
「くぅ~魔族殿強すぎですぞ」
「ラウラさんお強いですわね」
結果はラウラの三連勝である。
「これすっごく美味しいんだよね。パク!……んん~、甘くて美味しい~♪」
途中から参加した兎のココノと犬のモモも含め全員、ラウラがチョコを食べる口元を凝視している。因みにモモはよだれを垂らしている
「ラウラ、もしかして未来を見てるのか?」
「えっ……ゴロウはさっき精霊眼って言っていたけど、ボクの目のことを知ってるの?」
「ああ、その水色の瞳は天空眼といって未来を見る予知能力があるらしいぞ」
「なっ!卑怯ではありませぬか!某もチョコ食べたいのにぃ!」
「そうよ!わ、私だって勝ちたいのにぃ!」
「まぁまぁ落ち着いて。ラウラ目痛くないか?」
「うん、ゲームに興奮して未来を見ちゃったから……少し痛い」
それもそのはず、この子が纏ってる禍々しい膨大な魔力は勇者や魔王と同じレベルなのだ。
こんな幼い子供がこの規模の魔力を纏えばいつか目を壊してしまう。
おそらく彼女は、この力でずっと先の未来を見るなど強力な力を行使して目を潰したのだろう。
「楽にしてやるよ。マジックドレイン」
俺はラウラの目の前に手をかざし彼女から魔力を吸い取った。魔力規模を10分の1程度まで抑えることができた。
「目が凄く楽になった……。あれ?それにずっと続いていた頭痛も治ったよ?」
「ラウラには魔力制御を教える。覚えるのに数年かかると思うけど、できるようになれば目の痛みや頭痛はなくなる。それまではたまにこうやって楽にしてあげるからな」
「うん。ボク覚えたい。ゴロウ……ありがとう」
「良かったですなぁ、魔族殿ぉ~。で、続きはどうなさるお積もりですかな?よもやまだイカサマを続ける積りでは御座いませぬな?」
「今度やったら布で目を縛るから」
とエルフ殿。それじゃ何も見えないぞ。
しかしあれから1時間半くらい経つな。このテント全体に張り巡らせた探知魔法で人の動きを全て把握しているが、奴隷の健康確認は全て終わっているようだ。
あの会長、直ぐにどこか行ったけど、今どこにいるんだ?このテントにはいない。
魔力探知を広げよう。
「ささぁーゴロウ殿、続きをやりましょう!」
「ココノんも次、やりたいの」
「やっとルールを覚えたから次はあたしも!」
「ゴロウ様?」
俺は魔力探知を広げながら皆と話す。
「ゲームは終わりだな。そろそろ帰るから家でまたやろう」
そう言うと皆ショボンとなった。余程楽しかったんだな。まぁここ娯楽なんて無いだろうし。
後でチョコも食べさせてやろう。
探知魔法をテントから商会全体へ、そしてこの王都全体へと広げていくと会長を発見した。
馬車に乗って王城方面へ向かっている。
何だよこいつ。ヴァンパイア少女を無償で譲る約束を反故にして、憲兵にでもたれ込むつもりか?
18
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる