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二章
第57話 奴隷とケーキ作り
しおりを挟む基本的に俺は奴隷に注意はするが怒ったり、怒鳴ることはない。
何故なら8割の人間は怒られると萎縮してしまい成長しないからだ。
残り2割は怒られても成長するが、そういう奴はそもそも優秀な人間で何もしなくても勝手に伸びる。
やってみせて、やらせてみせて、褒めてやらねば人は成長しない。と昔の偉い人も言っていた。
つまり、人は褒めて育てた方が伸びるのだ……!!
「あわわわわわわっ!」
ガシャンッ!
皆の食事を作る旅館の厨房に、皿の割れる音が響く。これで今日、何度目だろう……。
「ふええええん!また割っちゃいましたぁ~!」
と割れた皿の前で涙目になるのはアズダール王国ドレナード伯爵家三女レモニカ・ドレナードである。彼女は垂れ目のおっとり顔で、青いウェーブがかった髪を肩まで伸ばしている。
ウィスタシアやヒオリ、アストレナを筆頭に美人系が多いうちの奴隷の中で彼女とココノは可愛い系美少女だ。
「怪我しなかったか?」
「ははははい……。な、何度もすみません」
「大丈夫大丈夫、こっちの皿は綺麗に洗えてるじゃん。えらいえらい。さっ、この後は料理だから頑張ろう」
「はい!」
レモニカはうちの料理が気に入ったようで、自分も美味しい料理作って皆に振る舞いたいと料理の勉強を始めた。料理担当のゴロウズが彼女に教えている。
この子は一生懸命だけど、あがり症ですぐにテンパる。それに真面目だから失敗すると毎回落ち込む。
こういう子は叱らず褒めて伸ばさないとな。
しかし、可愛い系で真面目で献身的なレモニカが料理上手になったらお嫁さんにしたい奴隷ナンバー1になっちゃうな。
で、暫くすると。
「あわわわわ!お、お酒とお酢、間違えちゃいましたぁ~~!」
「大丈夫大丈夫、酢豚みたいになって美味しいかも」
「あわわわわ!こ、胡椒と一味、間違えちゃいましたぁ~~!」
「大丈夫大丈夫、俺辛党だからそれは俺が食べるよ。結構うまそうじゃん」
「あわわわわ!し、塩10グラムなのに10キロ入れちゃいましたぁ~~!」
「大丈夫……大丈b……」
「あわわわわ!ま、またっ」
「こぉ~~らぁ~~~!」
「ごめんなさぁ~~い!」
今はお嫁さんにしたくない奴隷ナンバー1だけど……き、きっと成長してくれるだろう……きっと……!?
「大丈夫大丈夫、怒ってないから。いくらでも失敗していいから怪我だけは気を付けるんだぞ」
「……はい。ふえええええん」
まだ始めたばかりだ。1年も学べばそれなりにできるようになる。長い目で見てあげよう。
それから俺はレモニカに明日の料理を相談する。
「明日ウィスタシアの誕生日だろ。ケーキを作ろうと思うんだけど、俺も初めて作るから、コレ一緒に見よう」
「これ……、なんですか?」
「タブレットっていうんだけど」
俺はタブレットの電源を入れてNewTubeを開く。
「あわわわわ!えええ絵が動いていますよぉ~!?」
「あ、そうだ、コイツを耳に嵌めるな」
小さな魔石で作ったイヤフォンをレモニカの耳に挿した。
「ゴ、ゴロウ様の声が……き、聞こえます……」
この魔石は無限記憶書庫と連携していて日本語をこの世界の言葉に翻訳してくれる。
但し、音声は俺の声である。
それから二人でショートケーキとチョコレートケーキ作りの動画を見た。
「美味しそうですね」
「そうだね。明日二人で作ろう。そう言えば、昔ベークドチーズケーキに嵌って何度も作ったんだけど、食べてみる?」
「たたた食べたいです!」
俺は異次元倉庫からホールケーキから一切れ切り取ったベークドチーズケーキを取り出した。一切れだけ食べて、保管しておいたやつだ。
異次元倉庫は収納した時点で時間が止まるから結構昔に作ったケーキだけど当時のまま。
それを一切れ斬って皿に乗せてフォークと一緒にレモニカに渡した。
「焼き上がったあと生地を20時間程、冷蔵庫で寝かせると旨味が凝縮して美味しくなるんだ。食べてみて」
「いいいいただきます!……んんんんん~~っ!おいしいぃ~~っ!凄く美味しいですぅ~~!!」
「はははっ、良かった」
滅茶苦茶幸せそうに食べるな。
で、暫く食べていると。
「ゴ、ゴロウ様って……す、凄くお優しいです……」
「俺は厳しいぞ」
「ど、どこが……ですか?」
ん?
こうして俺達の料理は続くのであった……!
◇
デートプランを決められず俺は行き詰っていた。
こんなにも悩み考えたのは人生初めてだ。
前世も含め俺にはデート経験がない。
パリピな男女が「うぇーい」とか言ってテーマパークで遊んだあとラブホに行くイメージしかないのだ。
ラブコメとかだと映画とか水族館なんだけど、それでいいのか?
結局俺はウィスタシアに何をしたいか聞くことにした。
夕飯の後、風呂に向かうウィスタシアを呼び止める。
「ウィスタシア……明日のデートなんだけど行きたい場所とかやりたいことはあるか?」
「ゴロウがやりたいことなら何でも良いが……、二人だけで、その、遊ぶのだよな?」
「ああ、そうだな」
するとウィスタシアは頬を染めて黙ってしまった。
「何でもいいぞ。付き合うから……」
「は、恥ずかしいな……」
え?あのウィスタシアが恥ずかしい?
そんなことがあるのか……この世に?
お天道様の下で生ケツ晒しても顔色一つ変えない女だぞ!
「言ってくれ」
「じゃぁ……えっと……その……」
「大丈夫だ。話してみろ」
「こ、この前、水晶で見たやつ、また一緒にみたい……」
却下だ!却下!
初デートがAV鑑賞ってどうなのよ!?
なんだろう彼女。言ってしまったら吹っ切れたのか、鼻息を荒くして期待の眼差しを向けてくるぞ。
あの時も興味津々で、釘付けになって見てたもんな……。
明日はウィスタシアの誕生日。彼女が喜ぶことをするのは当然だ。だから無下に一蹴するわけにはい。
「わ、わかった……じゃぁ……そ、それで……!」
「うん!」
俺の返事を聞いて、クールな彼女が嬉しそうに顔を綻ばせた。
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