勇者パーティーの賢者、女奴隷を買って無人島でスローライフする

黒須

文字の大きさ
61 / 97
二章

第61話 奴隷と吸血(ディープキス)

しおりを挟む

 俺達は公園入り口付近の森に出現した。ここから歩いて海沿いに行く。

「ここで1時間くらい散歩したら帰ろうと思うけど、それでいいか?」

「ああ、でもその前に……トイレに行きたい。映画を観ていたらパンツが濡れてしまって……」

 気持ちはわかる!
 俺も起立したからな。今は礼して着席状態だが……。
 ウィスタシアは何でも正直に言ってしまう。自分を隠さない。まぁそこが良いんだけど。

「普通そういうことは男には言わないんだぞ」

「こんな恥ずかしいこと誰にも言わないよ。ゴロウだけに言うなら問題ないだろう?」

「それなら問題ないか……」

 ん?問題ないの?
 けど恥ずかしいって認識はあるんだね。それらまぁいいか……!

「替えのパンツあるけど使う?」

「うん」

 俺は異次元倉庫からパンツを出してウィスタシアに渡した。

 公衆トイレに寄ったあとは歩いて海へ向かった。因みに汚れたパンツは異次元倉庫にしまった。

 森が開けて海沿いに出ると目の前には光り輝く東京の夜景が海面に浮かび、それが何処までも広がっていた。
 ネットでデートスポットを調べまっくたら、ここが評判良くて来てみたけど良い景色だな。

「この光は全て電気なのだろう……。蝋燭で生活している我々の世界とは雲泥の差だな」

「俺は星空が綺麗なあっちの世界も好きだけどな」

「ここでは星は殆ど見えないのだな……」

「街の光が明る過ぎて星の小さな光が霞んでしまうんだよ」



 それから俺達はのんびり海沿いを歩いた。すると……。

「ゴ、ゴロウ……」

 さっきから夜景ではなく沿岸に設置されたベンチに座るカップルをチラチラ見て頬を染めるウィスタシアが俺の服裾を掴んだ。

 言いたいことはわかる!
 既に20組くらいカップルを見たが、偶然なのか何なのか……全てのカップルがキスをしていたのだ。

 この公園、何かおかしい。俺達を煽ってるのか!?

「私達も……、す、座らないか……」

「そ、そうだね……!」

 周りのキスカップルに翻弄され、緊張した雰囲気の俺達二人は頬を染めてベンチに座る。

「「 …… 」」

 俺達が座ると、木陰から隠れて見ていたんじゃないか?って勢いで直ぐに両隣のベンチにカップルが同時に座った。俺達はカップルに挟まれてしまった。

 右のカップル。
『好きだよ♡ ちゅ♡』
『俺も大好きだ♡ ちゅっ♡ ぶちゅんんんん~♡』

 左のカップル。
『今日もいっぱいエッチしような。 ちゅ♡』
『やだぁ~♡ エッチぃ~♡ レロレロレロレロ♡』

 両隣カップルはただちに愛を囁き合いキスを始める!
 ベンチ間の距離約3メートル。めっちゃ近い。

 いや、向こうでやってくれよ!
 この公園おかしいでしょ!?煽りムーブが半端ない……!

「ゴ、ゴロウ……」

 呼ばれてウィスタシアを見ると、表情はとろけ、赤い瞳は潤み、頬は桜色に染まっている。
 プクっと膨らんだ可愛らしい唇が夜景の光を反射して艶々に輝いている。

「私もキス……してみたい」

 俺とウィスタシアはR18映画を観て、キスするカップルたちを見て、体と心が温まっている。
 キススタンバイ状態でいつでもドッキング可能な雰囲気なのだ。

 それに今日は彼女の誕生日。なるべく要望には答えたい……。

 つまり、これはもう……。


「ここは落ち着かないから別の場所に行こう」

 俺は重力魔法を発動させてウィスタシアと一緒にゆっくり空へ浮いた。

『嘘、でしょ!?』
『人が浮いてる……』
『何これ、どうなっての……?』
『あり得ない!』

 ざわつくカップルを無視しして2階くらいの高さまで浮く。
 俺はウィスタシアの手を握り、海へ向かってゆっくり飛んだ。

「どこへ行く?」

「海面……」

 暫く飛んで沖に出たところで。

「第五位階水魔法、アクアハーデン!」

 これは水をコンクリートのように固めて、獲物を水中に閉じ込める魔法。
 空にいた俺とウィスタシアは海面に着地する。

「海に落ちるかと思ったが……水が地面のように硬い」

「魔法でここら辺の海面を固めた。あっちに行ってみよう」

 360度開けた海上で見る夜景は最高に美しい。
 少し歩いていると丁度波が隆起してベンチ代わりなる場所があった。

「あそこに座ろうか」

 俺達は固まった波の上に座った。
 岸までは300メールくらいある。ここなら誰もいないから落ち着いて彼女を向き合える。

「ふふっ、魔法でこんなこともできるんだな。凄いよ……」

「ウィスタシア、聞いてくれ」

 朗らかに微笑むウィスタシアに俺は真剣な顔で言った。

「俺はウィスタシアが好きだ。素直で努力家で家族思いで可愛いからな。でも今はキスはできない」

「どうして……?」

「うちのやつらは全員公平に接したいからだ」

「……?」

「前にも話したけど、俺は奴隷を自分の嫁にするつもりで買った。当然彼女達が希望すればの話だが。だから将来、全員の進路が決まるまでは誰ともそういう関係になるつもりはないんだ」

 最近、ココノとタマはセブンランドから出て行かないと言っている。

 それで二人の将来がどうなるかはわからないけど、俺が特定の誰かと関係を持ってしまったら、彼女達に嫁になる選択はできないだろう。

「では、皆ゴロウと一緒になりたいと言ったら、全員嫁にするのか?」

「もちろんだ。全員特別で公平に愛して死ぬまで一緒にいるつもりだ」

 ウィスタシアは少し嫉妬深い。俺の方針が嫌ならヴォグマン領に帰るだろう。それならそれでいい。

 他にも嫁希望者が現れたら自分の方針を伝えつもりだ。嫌ならそれまでだと思っている。

「将来っていつなんだ?」

「せめてココノが15歳になって成人するまでだな」

 あと7年待たせることになる。普通に考えてながいよな。

 それからウィスタシアは暫く黙った。
 ぼんやり夜景を見ながら考え事をしているようだった。

「わかった……。では、ゴロウの血を吸わせてくれないか?」

「えっ!?〈吸血〉したらどうなるかわかっているだろう?いいのかよ?」

「ああ」

 ヴァンパイア族のスキル〈吸血〉は最初の一回だけ、スキル使用者が存在進化して肉体が強くなり魔力量が増えるなどパワーアップする。
 問題なのはその際に生じる〈結血ゆうけつ〉という制約で、女性ヴァンパイアの場合、男の血を〈吸血〉すると子供を産めるようになるかわりに、最初に〈吸血〉した男性の子供しか孕めない体になってしまう。
 おそらく卵子がそう変化してしまうのだろう。

 つまり、ウィスタシアは物理的に俺の子供しか産めない女になる……。

「7年も待たせるんだぞ」

「父上は2000年以上生きているし母上など4000年以上生きている。ヴァンパイアにとって7年はたいした時間ではない」

「他に妻を娶ってもいいのか?」

「それは……、父上は婿養子だから母上だけであったが、お祖父様は100人以上〈吸血〉させたと言っていた。貴族は妻を複数娶るのが常識だ。それに今いる顔ぶれは私も好きだから構わない」

 ウィスタシアはいつになく真剣な表情だ。
 真紅の瞳には決意が宿っている。

 女の子にここまで言わせたんだ。俺も腹を括ろう。

「なら俺に断る理由はない。俺だってウィスタシアのことが好きだ。できればこの先もずっと一緒にいたい」

「私もゴロウが好き……。 では、吸うからな!」

「ひと思いに吸ってくれ!」

 ウィスタシアは立ち上がると対面になって俺の股間を跨いで座る。
 それから俺の首に両腕を回し、俺達は見つめ合う。

 こうして見るとウィスタシアは本当に美しい。とにかく綺麗だ。今までに見たどんな人もより綺麗だと思った。

「ゴロウ、好きだ。……大好き」

「ウィスタシア……俺も君が好きだよ」

「目……閉じて……」

「うん」

 俺は目を閉じる。
 これでこの子は俺の子供しか産めない体になる。俺はその責任を取らなければならない。

 すると唇に感触が……。

 あれ?これキスしてるよね?

 鼻を抜ける甘い香り、唇から伝わる彼女の体温と柔らかい感触。

 目を開けるとやっぱりキスしていた。

「血、吸うんじゃないのか……?」

「唇から吸おうと思ったの……。ゴロウ……硬くなってるぞ」

 俺の股間に跨いで座って、しかもグリグリ股を押し付けられるだけでヤバいのに、キスまでしたらそうなるよ!

 俺はウィスタシアの腰と背中に腕を回して彼女を抱きしめた。

「唇から吸ってもいいから……ほら。ちゅっ♡」

「そんな一瞬じゃ吸えない。ちゅっ♡ちゅっ♡んんん♡」

 唇を重ねて、舌と唾液を絡ませて、強く抱き合いながら俺達は見つめ合う。

「ほら、早く、ちゅ♡吸わないと、ちゅくちゅ♡んん♡」

「あっ♡んあっ♡ゴロウの舌、激しくて吸えない……。んんん~♡むちゅ♡」

「ウィスタシア好きだ、ちゅ♡」

「私もすき♡ちゅ♡ゴロウ、だいしゅき♡ちゅっ♡んんん♡」

 結局30分くらいなかなか上手く血が吸えなくて、俺達は色々方法で唇からの吸血を試みた。
 映画で5分くらいキスシーンがあってよくやるよって思ったけど、こんなのいくらでもやれるってわかってしまった!

「そろそろ、帰らないと皆待ってるから……」

「ああ、そ、そうだな。では首筋から吸うぞ」

「えっ!あ、ああ、そうしてください……」

 唇からだとまた始まっちゃうからね!
 ヴァンパイアには尖った犬歯がある。ウィスタシアそれを俺の首に突き立てて血を吸った。

 血を吸った彼女は嬉しそうに微笑んだ

「ふふっ、これで私はお前の女だな……ゴロウ」

「ああ、これからよろしくな。ウィスタシア」

「あーあ、せっかく着替えたのに、またパンツを濡らしてしまったよ」

「もうノーパンでいいんじゃないか?」

 こうして俺達は異世界に戻ったのであった。





 旅館に帰ると既に豪華な夕食の準備ができていて皆で料理を楽しんだ。
 そして最後にケーキが出てきて、蝋燭に灯りをともし皆でウィスタシアに誕生日ソングを歌った。

 レモニカが頑張ってくれたおかげで美味しいケーキが食べられて皆大満足だ。

 ケーキを食べながら俺はウィスタシアに誕生日プレゼントを渡す。
 安物のネックレスだけど皆から羨ましがられてウィスタシアは満足そうだった。
 早速着けてあげると凄く喜んでくれた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...