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第一章 大迷宮クレバス
45話 お祝い会
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「はぁ……はぁ……!!」
「よし。循環率は均一、魔導は使うな。それから───」
鬱屈とした洞窟内に響く少女の荒れた呼吸と、それを気にした様子もなく次々と課題を出していく嗄れ声。
「「「キシャアアアアア!!」」」
彼女たちが対峙する先には蟷螂型モンスター『レイジングマンティス』三体が両手の大鎌を高く振りかざして威嚇している。
「──分かったのなら返事。後は好きなようにやれ……っと言っても今の小娘に出来ることと言えば物理で殴ることぐらいだろうがな」
「はっ、はいッ!!」
現在、大迷宮クレバス第48階層。中流域。
ロル爺の時計工房に懐中時計の修理を頼んだ日から一週間が経った。
そんな中、本日も大迷宮でアイリスの魔法の特訓をしていた。
「いやぁ……まさか一週間で『魔力循環』をマスターするとはなあ……」
「キュッ!」
身体に大量の魔力を熾し、それを完璧な具合で循環させたアイリスは瞬く間に『レイジングマンティス』を細々と斬り伏せていく。
それをある程度離れた距離からラーナと一緒に見守って、呆然と呟く。
懐中時計が治るまでの間、次の行動に移ることが出来ず、時間が出来たのでアイリスの魔法の鍛錬をすることになった。
初めは、スカーの言葉を聞くことが出来ないアイリスに俺が仲介して鍛錬の内容や、魔法の基礎的な使い方を伝えていたが、今ではある程度の『魔力感知』を手に入れて普通にスカーと話せるまでになった。
「吹き荒れなさいッ!!」
心像を具現化する短縮詠唱。
彼女の言葉で無数の暴風が発生し、残り一体となった『レイジングマンティス』を切り刻む。
「ほう……基礎魔法で締めか。まだ循環させながらの基礎魔法の行使は難しいと考えていたがやるな」
最後のアイリスの魔法を見て感心した様子の影の賢者。
今の戦いぶりを見てもらえば分かる通り、アイリスは急成長を遂げた。
『魔力循環』や『魔力感知』の習得はもちろん。基礎魔法……それもかなりの数を習得し、短縮詠唱までも使いこなしている。
この一週間でアイリスは以前の彼女よりも格段に強くなっていた。
それもスカーをこうして唸らせるくらいには。
「これが才能ってやつなのか?」
あまりこう言った言葉を使うのは嫌なのだが、流石にこんな急成長を見せられれば勝手に口から出てしまう。
ある程度の基礎がある状態で教わった俺よりも遥かに速いスピードで『魔力循環』やその他諸々の事をマスターしたアイリス。
……俺なんて『魔力循環』を完璧に使えるようになるまで二ヶ月もかかったと言うのに……たったの一週間で俺が習ってきた事の殆どを学び終えてしまった。
「うむ。一週間で何処まで使い物にできるかと思っていたが、俺の予想を遥かに超えてきたな。とりあえず集中的な鍛錬は今日で終わりだ。これなら最低限の戦闘は出来るだろう」
「……はあ……はあ……ありがとうございます……」
「隙を見てまた稽古を付けてやろう。これから忙しくなるだろうが日々の鍛錬を怠るなよ」
「……はいッ!!」
『レイジングマンティス』との戦闘を最後に一週間続いた鍛錬に一区切り着く。もう完璧に師匠と弟子の空気感だ。
スカーも素質があって飲み込みも早い、何より文句を言わず従順に鍛錬に取り組んだアイリスが気に入ったのだろう、最後の三日間はかなりの熱量を持って指導をしていた。
「ほい、一週間お疲れ様アイリス」
「あ。ありがとうございます、ファイクさん」
両手を両膝について、肩で息をするアイリスに水筒を手渡すと彼女はお礼を言って勢いよくそれを呷る。
「……少し休憩してから上に戻ろうか。時計は明日取りに行くし……今日は無事に鍛錬が終わったお祝いにパァっと飲みにでも行こう。もちろん俺の奢りだ」
「ッ! ホントですか!?」
岩場に腰をかけて呼吸を整えていたアイリスは勢いよく顔をこちらに向けて目を輝かせる。
「ああ。好きなだけ食べて飲んでいいぞ」
彼女の食い気味の確認に頷いて答える。
まさか食事のお誘いをこんなに喜んでくれるとは思わなかった。
「……スカーもお疲れ」
今まで疲れていた表情を晴れやかなものにして楽しそうに笑うアイリスを眺めながら、スカーにも一応労いの言葉を送る。
「ああ。……全く、末恐ろしい小娘だ」
スカーは影の中に戻ると感心したように呟く。
珍しいスカーの反応についこんな質問をしてしまう。
「お前から見てもアイリスの魔法の素質は凄いのか?」
「凄いなんてもんじゃないな。魔力量は一般的だが、飲み込みが早すぎる。魔法を理論的に捉える力に長けているのか、教えてないことまで勝手に覚えてくれる。お前とは大違いだ。少しは……いや、かなり見習った方がいいぞ」
「……」
この質問をした時点で何かしらのお小言を頂戴するとは思っていたが、予想通りやぶ蛇だったか。
このご老人、随分とアイリスの才能に惚れ込んだご様子だ。
「まあそれはいいとして。お前のご要望通り、しっかりとあの小娘は仕上げた。まだまだこれからだが、お前の予想する最悪の事態やこれから挑む深層では遅れをとることはないだろう」
「うん。それは見てれば分かる。っていうか直ぐに俺なんか追い越しそうな勢いでそっちの方が俺は心配だね」
「それは………そうかもしれんな……」
「そこは否定してくれよお師匠さん……」
少し考えた挙句に否定しないということはその可能性が十分にあるということだ。即答で肯定されるよりもメンタルにくる返答だ。
まあそれだけアイリスが強くなってくれると言うのは有難いことだし、俺が心配しなくてもいいということだ。
彼女が俺を追い越して悪いことは無い。
「ファイクさん。もう十分に休みました、帰りましょう」
アイリスの今後の成長に期待していると、彼女は勢いよく立ち上がる。
「えっ、まだ5分も休んでないけど……別に急がなくてもいいよ? こんな数分で疲れなんて取れ───」
「──いえ。もう十分に休ませていただきました。なので早く上に戻ってお食事にしましょう」
「……そ、そう?」
「はい」
食い気味に大丈夫だと言い張るアイリスの謎の圧に気圧される。
そんなにお腹が空いていたのだろうか?
それならばここで食事にしてもいいのだが……それではいつも通りになってしまうので特別感がなくなってしまう。
この案は却下だな。
「分かった。じゃあ戻ろうか」
「はいっ!」
いつになく元気なアイリスの返事に苦笑しつつ身体中に魔力を熾して循環させる。
数秒と待たずに循環した魔力は身体中を賦活させ、身体能力を数段上のレベルへと昇華させる。
「……よし。行こうか」
アイリスが十全に魔力を循環させたのを確認してから一気に地面を蹴る。
その場で突風が起こり、気がつけばそこに俺達の姿は無くなる。
アイリスに無理をさせない程度の速さで各階層を駆け上がる。このペースならば二時間もしないで上に戻れるだろう。
・
・
・
地上に戻った頃、時刻はちょうど午後6時を回ったばかりの夕暮れ時だった。
今日の鍛錬でもかなり汗をかき、装備が土などで汚れていたので、一度解散してお互いの宿に戻りシャワーや着替えをすることにした。
ちょうど一時間後の午後7時に、以前アイリスと訪れた迷宮前の大通りにある酒場『豊穣の祈り』で待ち合わせることにした。
そして只今の時刻は時計台を見遣れば午後6時50分。
予定よりも10分ほど早く酒場『豊穣の祈り』の前に到着してしまった。
ちなみにラーナは『箱庭亭』でメリッサ達とお留守番だ。
辺りを見渡してもアイリスはまだ到着しておらず、そのまま中に入らず外で彼女を待つことにするとスカーから呆れた声が耳朶を打つ。
「……せっかく女と飯を食いに行くと言うのにその格好はどうなんだ?」
「なんだよ。なんか変か?」
スカーの突拍子のないツッコミに自分の身なりを確認する。
別におかしな所なんて一つもないと思うのだが?
晩春もそろそろ終わりを告げてだいぶ外の気温も暖かくなってきた。
迷宮内でもないのにいつも装備ているローブコートのままというのも暑苦しいので、今上に来ている服はよくオフの日に普段使いしている黒のロングTシャツだ。下はいつも装備してるズボンとブーツで代わり映えはない。
確認してみても別におかしな所なんてないと思う。
周りから奇怪な視線を感じることもないし、スカーの言っている意味がわからない。
「……はあ。あの小娘をかなりその気にさせておいて本人は無自覚か……もういい、お前はこのまますぐ訪れるであろう自分の愚かさを悔やめばいいさ」
「は?どういうことだよ?」
一人で完結して全く言葉の意味を説明しようとしないスカーに不信感を抱き、問いただそうとするが奴は黙りを決め込み、途端にその気配さえも遠くに消える。
「……またか」
支配領域の中ならば自由に移動できるようになったスカーは今まで自由に行動できなかった反動なのか、外に出てから支配領域内を一人で勝手に徘徊するようになった。
どれだけ離れていても脳内で会話はできるので直ぐに呼び出すことはできるのだが……それは今はいいか。
スカーと入れ替わるようにして待ち人もちょうど来たようだ。
「すいません! お待たせしてしまいました!!」
前方から聞き慣れた鈴を振るような声がする。
口を噤んでそちらに視線をやれば、小走りでこちらに駆け寄ってくるアイリスの姿がある。
「ッ………」
そこでスカーの呆れ気味に言っていた言葉の意味を悟る。
「その格好はどうなんだ……」と、確かにその通りだ。
俺はこの食事に対する意識が少しズレていた。
仲間同士で和気あいあいと今までの頑張りを称え合う祝い酒。
これが先程まで俺がイメージしていたこれから執り行われるお祝い会だ。
しかし、実際のところは男女二人が一つの事をお祝いする会。
重要なポイントは男女二人と言うところ。しかも一緒にお祝いする相手は明らかにこちらに好意がある女の子。そしてそんな女の子を自分から誘っている。
これはもう傍から見ても、相手からしてもお食事デートと捉えられてもおかしくない条件がその他もろもろも含めて整ってしまっている。
決して俺が最初に思い描いていた、仲間の友情、和気あいあいが入り込む余地のない。なんならそれとはかけ離れた甘酸っぱい雰囲気の中で行われるものだ。
当然、そう捉えられた男女二人のお食事会と言うのはそれなりに気合いの入ったおめかしをして望むものだ。
間違えてもいつも通りの、ましてや休日で楽さを追求した普段着などで望んでいいものなんかではない。
「あの……ファイクさん?」
その証拠に今目の前で少し息を切らして落ち合った彼女の姿は俺が初めて見る姿をしていた。
いつもの動きやすさを重視した装備で無ければ、オフの日に何度か見た事のある服装でもない。
無地の淡藤色のワンピースに肩周りが寒くないようにとパッチワークの施された黒のカーディガン。普段ではすることのないメイクもしているのか薄らと唇に引かれた控えめな色の紅が艶やかだ。いつもは流している白金色の長髪も今日はハーフアップにセットされており髪を止める為の黒のベレッタがとても映えている。
一言で言えば絶世な美しさ。
そんなチンケな感想しか湧いてこない。とにかく何も言葉が思い浮かばない。
そんなことを考えている暇があるならば目の前の彼女の姿をずっと見ていたい衝動に駆られる。
「その……どこかおかしなところがあったでしょうか?」
息を飲んでアイリスの姿に見惚れていると、彼女の不安げな声と表情でさらに気が動転する。
「え!? おかしな所なんて全くないですよ! むしろ綺麗すぎてびっくりしたというか度肝を抜かれたというか……とにかくめちゃくちゃ綺麗ですよ!!? それから───」
どうにかして彼女の暗い表情を変えようととにかく思ったことを口に出す。
「……綺麗………ありがとうございます………」
もう半分ヤケクソで思った事を言っているとアイリスの表情がみるみるうちに真赤になっていく。
「あっ」
そこで我に返る。
店の前で自分がかなり恥ずかしいことを大声で口にしていることに。
「………とりあえず中に入ろうか」
「はい……」
そうしてかなり互いに恥ずかしくなりながら酒場『豊穣の祈り』へとやっと動き出す。
「あっ! イラッしゃーい! そこの席どうぞ~!!」
店の中に入ると溌剌とした店員の声と、楽しげな酒飲みたちの笑い声が出迎えてくれる。
店員に指示された席に座ると直ぐに注文を取りに別の女性店員がやって来る。
「『豊穣の祈り』へようこそ! こちらおしぼりとお通しですね。まず飲み物の注文からお伺いしてよろしいですか?」
「えーと、麦酒でいいよね?」
「はい」
「じゃあ麦酒二つと。おまかせで何か摘める料理をお願いします」
「かしこまりましたァ!! 直ぐにご用意しますのでお待ちくださいね!」
テンポのいい接客で無難に注文を終えて、女性店員はそそくさと厨房の方へと行ってしまう。
女性店員の言った通り、頼んだ麦酒と料理は直ぐに到着して場は整う。
「の、飲み物も来たし乾杯しようか!」
「そ、そうですね」
気まずい空気はそのままで、ぎこちなくグラスを合わせて乾杯する。
カチン、と子気味良くグラスジョッキの音が鳴ると勢いに任せて麦酒を流し込む。
気まずければ酒で誤魔化すしかない。
今更になってもっとちゃんとしたお高めの大人っぽい店を予約しておくべきだったとか、もっとこっちもオシャレをしてくるべきだった、などの後悔と申し訳なさも酒で流し込む。
クズの考え方だが、今は酒で我を忘れなければまともに彼女の顔を見れる気がしない。
「……ぷはぁっ! すいません! おかわりください!!」
「は~い!!」
高らかと一息で空になったジョッキを持ち上げて次の麦酒を注文する。
「……そんな一気に飲んで大丈夫ですか?」
「大丈夫! アイリスも沢山飲んで食べてね! 今日は楽しもう!!」
「は、はい」
明らかに初っ端から飛ばす俺にアイリスは心配してくれる。それを有難く思いつつも勢いだけで答える。
そこからはとにかく飲みまくった。
お祭り騒ぎのような店の雰囲気に溶け込むかのように沢山飲んで、沢山食べて、沢山の話をした。
俺やアイリスの互いの話や、一緒に探索した時の思い出話、俺がいなかった一年間の事や、この一週間のスカーの鍛錬の愚痴。
最初は何やら緊張気味のアイリスも次第に表情が柔らかくなっていき、沢山話して、沢山笑ってくれるようになった。
いい事なのか悪いことなのか、俺も直ぐにさっきまで抱いていた後悔や申し訳なさは忘れていた。
今はただアイリスとこうして一緒に過ごすのが楽しいと、心からそう思った。
しかし、楽しい時間とは永遠には続かない。
酒場の中にある時計を確認すれば時計はとっくに0時を過ぎており、酒場『豊穣の祈り』は店仕舞いの時間へと差し掛かっていた。
「……んあ? もうこんな時間か……そろそろ出ようかアイリス」
「はい。そうですね」
いい感じに酔いも回って呂律も機能しなくなってきている。今夜は少し勢いに任せて飲みすぎた。
「すいませ~ん! お会計お願いしまぁ~す!!」
「はーい!!」
普段では絶対にすることのない陽気なノリで店員さんを呼ぶ。
完全に酔いの回ったお調子者のそれだ。
「ありがとうございました~!!」
恙無く会計を済ませてアイリスと一緒に酒場『豊穣の祈り』を後にする。
外に出た瞬間、心地よいよ風がアルコールで火照った肌を優しく撫でる。
「はあ~、飲んだね~!」
「そうですね」
「いやあ、ごめんね。俺の変な勘違いで普通の酒場でのお祝い会になっちゃって」
酔った勢いと言うべきか、ずっと後悔していた事をアイリスに謝罪する。
「気にしないでください。今日はとても楽しかっです。また一緒にここに来てくれると私は嬉しいです」
そんな俺の言葉にアイリスは被りを振ると優しげに微笑む。
「そう言って貰えると助かるよ。でも、今度は期待しててね」
「はい……!」
アイリスの優しい言葉に感極まるが、彼女の言葉に甘えてばかりもいけない。今度はしっかりと空気を読んだ装い、お店を選ぶことをここに誓う。
「さて、と───」
時刻は先程も確認した通り日を跨いで深夜の0時を過ぎたところだ。
明日は昼前にロル爺のところに治っているはずであろう懐中時計を取りに行って、その日の午後には迷宮都市クレバスを旅立つ予定だ。
旅路の準備は既に整っており、後は本当に時計を取りに行って旅立つだけだが、それでも早起きをして早めの行動が必要だ。
時間的にもちょうどいい時間だろう。
明日──いや、正確には今日か──に備えてここいらで解散としよう。
「──今日はここら辺で解散に───」
そう判断してアイリスと別れの挨拶をしようとした瞬間だった。
服の裾を引かれ、言葉は止まる。
反射的にすぐ隣にいるアイリスの方に目線を移せば、彼女は耳まで真っ赤にさせて下を俯いている。
それを見た瞬間に酒を飲みすぎて具合が悪くなったのかと心配するが、すぐにそれはアルコールによる体温の上気ではなく、恥ずかしさから来るものだと分かる。
言おうと思って出た言葉が急に止まって、数秒の間を置いて彼女の口が開く。
「──その……今日……は……帰りたく……ない……です……」
「………………はえ?」
絞り出すようにようやく口から出た彼女の決死の一言に俺はそんな間抜けな返事しか返せなかった。
「よし。循環率は均一、魔導は使うな。それから───」
鬱屈とした洞窟内に響く少女の荒れた呼吸と、それを気にした様子もなく次々と課題を出していく嗄れ声。
「「「キシャアアアアア!!」」」
彼女たちが対峙する先には蟷螂型モンスター『レイジングマンティス』三体が両手の大鎌を高く振りかざして威嚇している。
「──分かったのなら返事。後は好きなようにやれ……っと言っても今の小娘に出来ることと言えば物理で殴ることぐらいだろうがな」
「はっ、はいッ!!」
現在、大迷宮クレバス第48階層。中流域。
ロル爺の時計工房に懐中時計の修理を頼んだ日から一週間が経った。
そんな中、本日も大迷宮でアイリスの魔法の特訓をしていた。
「いやぁ……まさか一週間で『魔力循環』をマスターするとはなあ……」
「キュッ!」
身体に大量の魔力を熾し、それを完璧な具合で循環させたアイリスは瞬く間に『レイジングマンティス』を細々と斬り伏せていく。
それをある程度離れた距離からラーナと一緒に見守って、呆然と呟く。
懐中時計が治るまでの間、次の行動に移ることが出来ず、時間が出来たのでアイリスの魔法の鍛錬をすることになった。
初めは、スカーの言葉を聞くことが出来ないアイリスに俺が仲介して鍛錬の内容や、魔法の基礎的な使い方を伝えていたが、今ではある程度の『魔力感知』を手に入れて普通にスカーと話せるまでになった。
「吹き荒れなさいッ!!」
心像を具現化する短縮詠唱。
彼女の言葉で無数の暴風が発生し、残り一体となった『レイジングマンティス』を切り刻む。
「ほう……基礎魔法で締めか。まだ循環させながらの基礎魔法の行使は難しいと考えていたがやるな」
最後のアイリスの魔法を見て感心した様子の影の賢者。
今の戦いぶりを見てもらえば分かる通り、アイリスは急成長を遂げた。
『魔力循環』や『魔力感知』の習得はもちろん。基礎魔法……それもかなりの数を習得し、短縮詠唱までも使いこなしている。
この一週間でアイリスは以前の彼女よりも格段に強くなっていた。
それもスカーをこうして唸らせるくらいには。
「これが才能ってやつなのか?」
あまりこう言った言葉を使うのは嫌なのだが、流石にこんな急成長を見せられれば勝手に口から出てしまう。
ある程度の基礎がある状態で教わった俺よりも遥かに速いスピードで『魔力循環』やその他諸々の事をマスターしたアイリス。
……俺なんて『魔力循環』を完璧に使えるようになるまで二ヶ月もかかったと言うのに……たったの一週間で俺が習ってきた事の殆どを学び終えてしまった。
「うむ。一週間で何処まで使い物にできるかと思っていたが、俺の予想を遥かに超えてきたな。とりあえず集中的な鍛錬は今日で終わりだ。これなら最低限の戦闘は出来るだろう」
「……はあ……はあ……ありがとうございます……」
「隙を見てまた稽古を付けてやろう。これから忙しくなるだろうが日々の鍛錬を怠るなよ」
「……はいッ!!」
『レイジングマンティス』との戦闘を最後に一週間続いた鍛錬に一区切り着く。もう完璧に師匠と弟子の空気感だ。
スカーも素質があって飲み込みも早い、何より文句を言わず従順に鍛錬に取り組んだアイリスが気に入ったのだろう、最後の三日間はかなりの熱量を持って指導をしていた。
「ほい、一週間お疲れ様アイリス」
「あ。ありがとうございます、ファイクさん」
両手を両膝について、肩で息をするアイリスに水筒を手渡すと彼女はお礼を言って勢いよくそれを呷る。
「……少し休憩してから上に戻ろうか。時計は明日取りに行くし……今日は無事に鍛錬が終わったお祝いにパァっと飲みにでも行こう。もちろん俺の奢りだ」
「ッ! ホントですか!?」
岩場に腰をかけて呼吸を整えていたアイリスは勢いよく顔をこちらに向けて目を輝かせる。
「ああ。好きなだけ食べて飲んでいいぞ」
彼女の食い気味の確認に頷いて答える。
まさか食事のお誘いをこんなに喜んでくれるとは思わなかった。
「……スカーもお疲れ」
今まで疲れていた表情を晴れやかなものにして楽しそうに笑うアイリスを眺めながら、スカーにも一応労いの言葉を送る。
「ああ。……全く、末恐ろしい小娘だ」
スカーは影の中に戻ると感心したように呟く。
珍しいスカーの反応についこんな質問をしてしまう。
「お前から見てもアイリスの魔法の素質は凄いのか?」
「凄いなんてもんじゃないな。魔力量は一般的だが、飲み込みが早すぎる。魔法を理論的に捉える力に長けているのか、教えてないことまで勝手に覚えてくれる。お前とは大違いだ。少しは……いや、かなり見習った方がいいぞ」
「……」
この質問をした時点で何かしらのお小言を頂戴するとは思っていたが、予想通りやぶ蛇だったか。
このご老人、随分とアイリスの才能に惚れ込んだご様子だ。
「まあそれはいいとして。お前のご要望通り、しっかりとあの小娘は仕上げた。まだまだこれからだが、お前の予想する最悪の事態やこれから挑む深層では遅れをとることはないだろう」
「うん。それは見てれば分かる。っていうか直ぐに俺なんか追い越しそうな勢いでそっちの方が俺は心配だね」
「それは………そうかもしれんな……」
「そこは否定してくれよお師匠さん……」
少し考えた挙句に否定しないということはその可能性が十分にあるということだ。即答で肯定されるよりもメンタルにくる返答だ。
まあそれだけアイリスが強くなってくれると言うのは有難いことだし、俺が心配しなくてもいいということだ。
彼女が俺を追い越して悪いことは無い。
「ファイクさん。もう十分に休みました、帰りましょう」
アイリスの今後の成長に期待していると、彼女は勢いよく立ち上がる。
「えっ、まだ5分も休んでないけど……別に急がなくてもいいよ? こんな数分で疲れなんて取れ───」
「──いえ。もう十分に休ませていただきました。なので早く上に戻ってお食事にしましょう」
「……そ、そう?」
「はい」
食い気味に大丈夫だと言い張るアイリスの謎の圧に気圧される。
そんなにお腹が空いていたのだろうか?
それならばここで食事にしてもいいのだが……それではいつも通りになってしまうので特別感がなくなってしまう。
この案は却下だな。
「分かった。じゃあ戻ろうか」
「はいっ!」
いつになく元気なアイリスの返事に苦笑しつつ身体中に魔力を熾して循環させる。
数秒と待たずに循環した魔力は身体中を賦活させ、身体能力を数段上のレベルへと昇華させる。
「……よし。行こうか」
アイリスが十全に魔力を循環させたのを確認してから一気に地面を蹴る。
その場で突風が起こり、気がつけばそこに俺達の姿は無くなる。
アイリスに無理をさせない程度の速さで各階層を駆け上がる。このペースならば二時間もしないで上に戻れるだろう。
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地上に戻った頃、時刻はちょうど午後6時を回ったばかりの夕暮れ時だった。
今日の鍛錬でもかなり汗をかき、装備が土などで汚れていたので、一度解散してお互いの宿に戻りシャワーや着替えをすることにした。
ちょうど一時間後の午後7時に、以前アイリスと訪れた迷宮前の大通りにある酒場『豊穣の祈り』で待ち合わせることにした。
そして只今の時刻は時計台を見遣れば午後6時50分。
予定よりも10分ほど早く酒場『豊穣の祈り』の前に到着してしまった。
ちなみにラーナは『箱庭亭』でメリッサ達とお留守番だ。
辺りを見渡してもアイリスはまだ到着しておらず、そのまま中に入らず外で彼女を待つことにするとスカーから呆れた声が耳朶を打つ。
「……せっかく女と飯を食いに行くと言うのにその格好はどうなんだ?」
「なんだよ。なんか変か?」
スカーの突拍子のないツッコミに自分の身なりを確認する。
別におかしな所なんて一つもないと思うのだが?
晩春もそろそろ終わりを告げてだいぶ外の気温も暖かくなってきた。
迷宮内でもないのにいつも装備ているローブコートのままというのも暑苦しいので、今上に来ている服はよくオフの日に普段使いしている黒のロングTシャツだ。下はいつも装備してるズボンとブーツで代わり映えはない。
確認してみても別におかしな所なんてないと思う。
周りから奇怪な視線を感じることもないし、スカーの言っている意味がわからない。
「……はあ。あの小娘をかなりその気にさせておいて本人は無自覚か……もういい、お前はこのまますぐ訪れるであろう自分の愚かさを悔やめばいいさ」
「は?どういうことだよ?」
一人で完結して全く言葉の意味を説明しようとしないスカーに不信感を抱き、問いただそうとするが奴は黙りを決め込み、途端にその気配さえも遠くに消える。
「……またか」
支配領域の中ならば自由に移動できるようになったスカーは今まで自由に行動できなかった反動なのか、外に出てから支配領域内を一人で勝手に徘徊するようになった。
どれだけ離れていても脳内で会話はできるので直ぐに呼び出すことはできるのだが……それは今はいいか。
スカーと入れ替わるようにして待ち人もちょうど来たようだ。
「すいません! お待たせしてしまいました!!」
前方から聞き慣れた鈴を振るような声がする。
口を噤んでそちらに視線をやれば、小走りでこちらに駆け寄ってくるアイリスの姿がある。
「ッ………」
そこでスカーの呆れ気味に言っていた言葉の意味を悟る。
「その格好はどうなんだ……」と、確かにその通りだ。
俺はこの食事に対する意識が少しズレていた。
仲間同士で和気あいあいと今までの頑張りを称え合う祝い酒。
これが先程まで俺がイメージしていたこれから執り行われるお祝い会だ。
しかし、実際のところは男女二人が一つの事をお祝いする会。
重要なポイントは男女二人と言うところ。しかも一緒にお祝いする相手は明らかにこちらに好意がある女の子。そしてそんな女の子を自分から誘っている。
これはもう傍から見ても、相手からしてもお食事デートと捉えられてもおかしくない条件がその他もろもろも含めて整ってしまっている。
決して俺が最初に思い描いていた、仲間の友情、和気あいあいが入り込む余地のない。なんならそれとはかけ離れた甘酸っぱい雰囲気の中で行われるものだ。
当然、そう捉えられた男女二人のお食事会と言うのはそれなりに気合いの入ったおめかしをして望むものだ。
間違えてもいつも通りの、ましてや休日で楽さを追求した普段着などで望んでいいものなんかではない。
「あの……ファイクさん?」
その証拠に今目の前で少し息を切らして落ち合った彼女の姿は俺が初めて見る姿をしていた。
いつもの動きやすさを重視した装備で無ければ、オフの日に何度か見た事のある服装でもない。
無地の淡藤色のワンピースに肩周りが寒くないようにとパッチワークの施された黒のカーディガン。普段ではすることのないメイクもしているのか薄らと唇に引かれた控えめな色の紅が艶やかだ。いつもは流している白金色の長髪も今日はハーフアップにセットされており髪を止める為の黒のベレッタがとても映えている。
一言で言えば絶世な美しさ。
そんなチンケな感想しか湧いてこない。とにかく何も言葉が思い浮かばない。
そんなことを考えている暇があるならば目の前の彼女の姿をずっと見ていたい衝動に駆られる。
「その……どこかおかしなところがあったでしょうか?」
息を飲んでアイリスの姿に見惚れていると、彼女の不安げな声と表情でさらに気が動転する。
「え!? おかしな所なんて全くないですよ! むしろ綺麗すぎてびっくりしたというか度肝を抜かれたというか……とにかくめちゃくちゃ綺麗ですよ!!? それから───」
どうにかして彼女の暗い表情を変えようととにかく思ったことを口に出す。
「……綺麗………ありがとうございます………」
もう半分ヤケクソで思った事を言っているとアイリスの表情がみるみるうちに真赤になっていく。
「あっ」
そこで我に返る。
店の前で自分がかなり恥ずかしいことを大声で口にしていることに。
「………とりあえず中に入ろうか」
「はい……」
そうしてかなり互いに恥ずかしくなりながら酒場『豊穣の祈り』へとやっと動き出す。
「あっ! イラッしゃーい! そこの席どうぞ~!!」
店の中に入ると溌剌とした店員の声と、楽しげな酒飲みたちの笑い声が出迎えてくれる。
店員に指示された席に座ると直ぐに注文を取りに別の女性店員がやって来る。
「『豊穣の祈り』へようこそ! こちらおしぼりとお通しですね。まず飲み物の注文からお伺いしてよろしいですか?」
「えーと、麦酒でいいよね?」
「はい」
「じゃあ麦酒二つと。おまかせで何か摘める料理をお願いします」
「かしこまりましたァ!! 直ぐにご用意しますのでお待ちくださいね!」
テンポのいい接客で無難に注文を終えて、女性店員はそそくさと厨房の方へと行ってしまう。
女性店員の言った通り、頼んだ麦酒と料理は直ぐに到着して場は整う。
「の、飲み物も来たし乾杯しようか!」
「そ、そうですね」
気まずい空気はそのままで、ぎこちなくグラスを合わせて乾杯する。
カチン、と子気味良くグラスジョッキの音が鳴ると勢いに任せて麦酒を流し込む。
気まずければ酒で誤魔化すしかない。
今更になってもっとちゃんとしたお高めの大人っぽい店を予約しておくべきだったとか、もっとこっちもオシャレをしてくるべきだった、などの後悔と申し訳なさも酒で流し込む。
クズの考え方だが、今は酒で我を忘れなければまともに彼女の顔を見れる気がしない。
「……ぷはぁっ! すいません! おかわりください!!」
「は~い!!」
高らかと一息で空になったジョッキを持ち上げて次の麦酒を注文する。
「……そんな一気に飲んで大丈夫ですか?」
「大丈夫! アイリスも沢山飲んで食べてね! 今日は楽しもう!!」
「は、はい」
明らかに初っ端から飛ばす俺にアイリスは心配してくれる。それを有難く思いつつも勢いだけで答える。
そこからはとにかく飲みまくった。
お祭り騒ぎのような店の雰囲気に溶け込むかのように沢山飲んで、沢山食べて、沢山の話をした。
俺やアイリスの互いの話や、一緒に探索した時の思い出話、俺がいなかった一年間の事や、この一週間のスカーの鍛錬の愚痴。
最初は何やら緊張気味のアイリスも次第に表情が柔らかくなっていき、沢山話して、沢山笑ってくれるようになった。
いい事なのか悪いことなのか、俺も直ぐにさっきまで抱いていた後悔や申し訳なさは忘れていた。
今はただアイリスとこうして一緒に過ごすのが楽しいと、心からそう思った。
しかし、楽しい時間とは永遠には続かない。
酒場の中にある時計を確認すれば時計はとっくに0時を過ぎており、酒場『豊穣の祈り』は店仕舞いの時間へと差し掛かっていた。
「……んあ? もうこんな時間か……そろそろ出ようかアイリス」
「はい。そうですね」
いい感じに酔いも回って呂律も機能しなくなってきている。今夜は少し勢いに任せて飲みすぎた。
「すいませ~ん! お会計お願いしまぁ~す!!」
「はーい!!」
普段では絶対にすることのない陽気なノリで店員さんを呼ぶ。
完全に酔いの回ったお調子者のそれだ。
「ありがとうございました~!!」
恙無く会計を済ませてアイリスと一緒に酒場『豊穣の祈り』を後にする。
外に出た瞬間、心地よいよ風がアルコールで火照った肌を優しく撫でる。
「はあ~、飲んだね~!」
「そうですね」
「いやあ、ごめんね。俺の変な勘違いで普通の酒場でのお祝い会になっちゃって」
酔った勢いと言うべきか、ずっと後悔していた事をアイリスに謝罪する。
「気にしないでください。今日はとても楽しかっです。また一緒にここに来てくれると私は嬉しいです」
そんな俺の言葉にアイリスは被りを振ると優しげに微笑む。
「そう言って貰えると助かるよ。でも、今度は期待しててね」
「はい……!」
アイリスの優しい言葉に感極まるが、彼女の言葉に甘えてばかりもいけない。今度はしっかりと空気を読んだ装い、お店を選ぶことをここに誓う。
「さて、と───」
時刻は先程も確認した通り日を跨いで深夜の0時を過ぎたところだ。
明日は昼前にロル爺のところに治っているはずであろう懐中時計を取りに行って、その日の午後には迷宮都市クレバスを旅立つ予定だ。
旅路の準備は既に整っており、後は本当に時計を取りに行って旅立つだけだが、それでも早起きをして早めの行動が必要だ。
時間的にもちょうどいい時間だろう。
明日──いや、正確には今日か──に備えてここいらで解散としよう。
「──今日はここら辺で解散に───」
そう判断してアイリスと別れの挨拶をしようとした瞬間だった。
服の裾を引かれ、言葉は止まる。
反射的にすぐ隣にいるアイリスの方に目線を移せば、彼女は耳まで真っ赤にさせて下を俯いている。
それを見た瞬間に酒を飲みすぎて具合が悪くなったのかと心配するが、すぐにそれはアルコールによる体温の上気ではなく、恥ずかしさから来るものだと分かる。
言おうと思って出た言葉が急に止まって、数秒の間を置いて彼女の口が開く。
「──その……今日……は……帰りたく……ない……です……」
「………………はえ?」
絞り出すようにようやく口から出た彼女の決死の一言に俺はそんな間抜けな返事しか返せなかった。
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