元Sランククランの【荷物運び】最弱と言われた影魔法は実は世界最強の魔法でした。

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第二章 大迷宮バルキオン

22話 合流

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 彼の強さに恐怖した。

 一人の人間がここまで強くなれるものなのかと思った。

 いったいどのような修練、経験を積めばそこまでの境地にたどり着けるのだろうか。

「はぁ……少し時間をかけすぎたな」

 大迷宮バルキオン深層75階層のボスモンスター『岩窟たる土竜』を倒して最初に出た彼の言葉はそんな淡白なものだった。

 まるで通過点。
 そこら辺にいるスライムモンスターを倒したような感覚。彼は既に傍らに倒れているボスモンスターから興味は失せていた。

 それは現在置かれている状況を考えれば仕方の無い事だったのかもしれない。
 大切な仲間が見つからない。すぐにでも仲間を見つけて無事を確認したい。
 そんな不安が常に私たちの中にはあった。

 だが、それにしてもほんの数分でターニングポイントのボスモンスターを討伐するのは異常であった。

「ごめんユネルさん。このまま76階層も攻略に入っていいかな?」

「……問題ありません。すぐに行きましょう」

「ありがとう」

「いえ」

 そんな短いやり取りの後に私たちは早々に75階層を後にして、76階層の攻略に取り掛かる。

 感覚が狂いつつあった。
 普通では有り得ない攻略ペース。一日で何階層も攻略するのが当然のようになってしまった。

 これでも彼は私に気を使ってかなりペースを落としてくれていた。ただ階層を降りていくだけでいっぱいいっぱいの私に合わせてくれていた。彼一人なら本当はもっと速く先に進めたというのに嫌な顔をひとつせず、私を見捨てることなく導いてくれた。

 私──ユネルは彼の強さに恐怖していた。それと同時に彼のその強さに強い敬意を抱いていた。


 ────ウォオオオオオオオオオンッ!!


 その獣の咆哮が聞こえたのは75階層から76階層へと続けざまに攻略をしていて、階段部屋がもう少しで見えてくるだろうかと言うところでのことだった。

 かなりの距離から木霊するように聞こえてきた狼の遠吠え。
 一瞬、新手のモンスターかと警戒をするが彼の反応は全く逆だった。

「───ッ!!」

 ずっと待ち望んでいたかのような、切望していたかのような、探し物がようやく見つかった時のような、そんな何とも表現し難い嬉々とした感情が伝わってきた。

 警戒するどころか彼はその場で棒立ちになり、呆然と遠吠えがした方を見つめ続ける。
 何か声をかけるべきか迷っていると彼は動き出す。

「ユネルさん。もう行ける?」

「えっ? あ、はい」

「よし。じゃあ行こう!」

 私に確認を取ると彼は走り出す。それを慌てて追いかけた。


 ────ウォオオオオオオオオオンッ!!


 2度目の遠吠えが聞こえたのは76階層から77階層へと続く螺旋階段を降りている最中だった。
 先程よりもか細く遠くへ届けるかのような遠吠え。それに私は妙な違和感を覚えた。

 このすぐ下は77階層のセーフティポイントのはず。なのにどうしてモンスターの遠吠えがすぐ下から聞こえてくるのだろうか。

 そんな違和感を感じていると先頭で階段を下っていた彼が足を急に止める。
 急にどうしたのかと様子を伺ってみれば、彼の表情は驚きや焦り、怒りなどが綯い交ぜになった複雑なものに変わっていた。

 いったいどうしたのかと訪ねようかと思えば彼はこう言った。

「……先に下に行く。ラーナが……アイリス、エルバートが危ない……!!」

「えっ……ちょ、ファイクさん!?」

 私の返事を聞かずにファイクさんは走り出した。

 この先にエルバート様がいる?

 一瞬にして姿が見えなくなったファイクさんを私も急いで追いかけた。

 ・
 ・
 ・

 螺旋階段を駆け下りてセーフティポイントへとたどり着いた瞬間に視界に映り込んだのは、白銀の大狼があと少しで串刺しになるかと言うところだった。

 初めて見たその狼型のモンスター。全身は傷だらけで、綺麗な銀の毛並みは自身の血で濡れている。

 どうしてセーフティポイントなのにモンスターがいるのか。なんて疑問は浮かばない。
 全てを諦めて衰弱しきった瞳と視線が重なる。

 俺はこの大狼を知っている。容姿が変わったとしても忘れるはずがない。それは俺の大事な相棒のひとりだ。

「ッ……!!」

 瞬間、魔力を熾し身体中に循環させていく。心像するまでもなく影は勝手に蠢き、振り下ろされた斧槍から大狼を守ろうと影の障壁を展開する。

「なッ………!!」

 間一髪のところで攻撃を防御する。
 困惑と驚きの声を上げた男の声が直ぐに聞こえてくるが、今は無視だ。

「よく頑張ったな。ラーナ」

 依然として弱々しく地面に倒れている大狼の元へと駆け寄り、その血で濡れてしまった綺麗な銀の毛並みを優しく撫でてやる。

 本当にここまでよく頑張ってくれた。ラーナが頑張ってくれたお陰で間に合った。

 状況の整理をする。
 大迷宮バルキオン深層77階層、セーフティポイント。
 そこはセーフティポイントと言うことを忘れてしまいそうなほど荒れすさんでいた。

 魔法の行使によって地面は抉れ、壁や天井も崩れている。至る所に戦いに敗れた無数の荒くれ者が無造作に倒れている。
 確かにそこには戦闘の後があった。

 そこに立っているのは二人の男。どちらも見覚えのある人物だ。
 一人は50階層で俺に不意打ちをしかけてきたローブの男。この集団のリーダーだろう。
 もう一人は迷宮都市バルキオンに来て直ぐに一度だけ会ったことがある。

「……」

 まあ今は目の前の二人の男のことなどどうでもいい。
 それよりも目に付くことがある。
 それはずっと探していた二人の仲間──アイリスとエルバートだ。
 これはいったいどういうことだ?

 二人とも随分と疲れきった顔をしている。それにパッと見でも戦闘によって負った傷がかなり多く見られるし、どういう訳か簡易魔導具で手足を拘束され、身動きが取れなくなっているではないか。加えて中途半端に装備を剥かれて生肌がチラホラと見え隠れしている。

「……」

 これはいったいどういうことだ?

 まるで今の二人の状況は、悪党に敗れその結果として慰みものに……犯されそうになっている女性のソレではないか。

 ──これは、いっタイ、ドウイウコトダ。

「おっ、お前がどうして…………どうしてここにいる!?」

 二人の姿を見て考え込んでいると、不意に腹の立つ煩い声が聞こえてくる。
 声のする方を無意識に見遣ると直ぐに合点がいく。

「──ああ、そうか。オマエか」

 自分でも驚くほど低く重たい声が出た。

 こんなに怒りを覚えたのはいつ以来だろうか?
 どうしようもなく身体が疼いて、腹の底からフツフツと何かが熱く煮え滾る。無意識に全身の力が入り、ドクドクと血が巡っていくのが分かる。

 いや。こんな感情は初めてだ───

「オマエがヤッたんだな──」

 ───誰かを本気で殺したいと思ったのは初めてだ。

「……ひっ!!」

 改めて目の前の男を標的にする。
 色々と聞きたいことはあったがコイツから聞くのはヤメだ。

 ──耐え難い。

 目の前で怯えてるのも耐え難い。助けてくれと命乞いをしているのも耐え難い。自分の仕出かした事を棚に上げているのも耐え難い。恐怖で怯えているのも耐え難い。そこに立っているのも耐え難い。息をしているのも耐え難い。存在しているのも耐え難い。

 もう何もかもが耐え難い。
 この男は、即刻、この場で、極刑に処す。

「ひぃいいッ! やっ、やめてくれ!!」

 指示を出す前に影は目の前で逃げようとするいけ好かない男を影で拘束する。
 両手、両足、両目、両耳、腹、胸、動こうとする全ての部位を影で強く締め上げる。

「ほ、ほんの出来心だったんだ! 頼む! やめてくれ!!」

 敢えて口だけは自由にさせる。
 煩くて仕方がないがせめてもの慈悲として最後の言葉くらいは聞いてやろう。

「───」

 全身の魔力を活性化させる。
 怒りで気が狂いそうなのに、その反対で不思議と落ち着いた気分だ。
 知らなかった。怒りと平静は共存するものなんだな。

 心像イメージするのは処刑人を裁く、断罪の処刑台。

「殺さないでくれ! 俺にも大切な人がいるんだ! こんなところで死ぬ訳にはいかないんだッ!!」

 視界が一気に開く。
 押さえ込もうとしても影はその支配領域を拡張して行く。
 感情のままに影は辺りを侵食していく。

「いくらでも謝る! 金もやる! バルキオンで欲しいがままの最高の地位を用意する! お前……いやっ! 貴方様に絶対の忠誠を誓う! なんでも言うことを聞く! だから殺さないでくれ!!」

 なんとまあ都合のいい言葉ばかり吐き出てくる口なんだろうか。ここまできてしまえば怒りを通り越して関心……哀れにさえ思えてくる。

「なんでも言うことを聞く?」

「はい、そうです! だから殺すのは───」

 俺の問いかけに目の前の男は絶望の淵に見えた希望に縋るように頷く。

 そうか、なんでも言うことを聞いてくれるのか。

 心像イメージし想起する。
 それは無慈悲な暴虐の黒。

 それなら一つだけお願いしよう。

 ───影遊・顎門惨影。

 魔を帯びた言葉と共に影は蠢き、男の頭上に一つの門が顕現する。罪人を裁く絶対の惨殺。それは抗いようの無い絶望のカタチだ。
 禍々しい黒い獄門の天には腹を空かせた悪魔の口が存在し、一口で男の胴半分を噛みちぎる。

「それじゃあ死んでくれ」

「──────えっ?」

 間抜けな声と同時に鮮血が咲く。
 下半身だけになった男は勢いよく血を撒き散らしながら、ダランと地面に倒れて絶命する。

 魔法越しに感じる慣れない肉を断ち切る感触。モンスターのソレとは違う、柔らかくて脆い肉の感触。普通では経験することのない感覚を妙にあっさりと受け入れる。

「───」

 意外と呆気ないものだ。
 もう少し何か感じると思っていたが、後悔も喪失感も別に来やしない。

 まあ、こんなものか。

 それが初めて人を殺した感想だ。

「さて───」

 不格好な下半身だけの死体から目線を切って、次の標的の方を見る。
 感慨に浸るのもそこそこだ。

「ッ!!」

 俺が男を殺してる間に逃げることも出来ただろうに、杖を両手で握りしめたスキンヘッドの男は棒立ちのまま怖気付いたような顔をする。

 このスキンヘッドの男、見覚えはあるが名前は思い出せない。
 エルバートと口論になって、暴力沙汰にまで発展しそうになったのはしっかりと覚えているのだが……なんという名前だったろうか。

「お前、名前は?」

「ッ…………バルゼル・ジンドット……」

 考えても分からないので直接ハゲ頭に聞く。
 そうだそういえばそんな名前だったな。確かBランクの探索者だとロドリゴが言っていたはずだ。

「よし、バルゼル。俺は今からお前にいくつか質問をする。それに嘘偽りなく端的に応えろ。いいな?」

 こいつもあの男の仲間ならば殺すのは確定事項だが、直ぐには殺さない。理由としてはコイツには色々と聞きたいことがあるからだ。

 本当はあの男に直接聞いた方がいいのは分かりきっていたが、我慢が効かなかった。
 男を殺して少し冷静になった今では、さっきまでの自分の行動は早計で考え無しもいいところだ。反省しなければいけない。

 だが、やってしまったものは仕方がない。この失態は今後に生かすとして今はある物でなんとかするしかない。

「わっ、わかった」

「それじゃあ一つ目の質問だ。お前たちは何だ?」

 俺の言葉に素直に頷いたバルゼルに質問をする。

 結局コイツらはなんなのか。
 今、このセーフティポイントにいる集団の数は約20ちょっと。50階層で襲われた時はもっと数が多かった。
 多種多様な毛色の違う探索者たちが集まり、それを取り仕切っていたのはSランククランのリーダーと来たもんだ。どう考えても普通の集まりではない。

「俺達はそこの男……アッシュ・ワモルドに雇われたんだ」

「雇われた?」

「ああ。ここにいる纏まりのない探索者達は全員『憤怒の鎌』に雇われて、コイツらの依頼する仕事を受けていた。荷物運びの雑用から、様々なコイツらの探索の手助け、大迷宮の前で騒ぎを起こすなんて言う変な仕事もあった。聞いた話によれば正式な探索者じゃない奴がいたり、殺しなんかもやってたらしい。気に入らない有望株な探索者クランを迷宮内で秘密裏に殺すなんてことを──」

 ──ああ。そういうことか。

 バルゼルの説明でコイツらが何なのか分かった。
 雇用主と労働者の関係。不特定多数の探索者が探協の手続きもなしに徒党を組み、迷宮内で様々な悪事を行う。加えて非正規の探索者の迷宮入場。これは完全に────。

「お前らアウトハンターか」

「まあ……そういうことになる……」

 俺の確認に煮え切らない返事をするバルゼル。
 何を今更取り繕う必要があると言うのか、コイツらのやっていることは完全に違法のソレだ。

 自分は違うと言いたげな態度をとるバルゼルに嫌悪感を覚えながら俺は続けて質問する。

「それじゃあお前たちが俺たちを襲った目的は、俺たちを殺したかったからだな?」

「あ、ああ。アッシュはお前を酷く恨んでいた。お前を殺して、他の女どもは全部自分のモノにすると言っていた……」

「チッ…………そういうことか」

 バルゼルの言葉で再び怒りが再燃焼しそうになる。

 あの時のコイツらのナンパ……そこからの決闘での圧倒的敗北。
 恨まれる理由はあれど、全てコイツらの自業自得だ。ホントくだらないことに巻き込まれたもんだ。

「はあ……」

 大きく息を吐いて頭の中を整理する。

 大体の一連の流れは分かった。
 本当に今回の出来事は最悪なものだ。腹が立って仕方がない。
 こんなくだらないことはさっさと終わらせよう。

「自分がどうなるか分かってるよな?」

「……ああ」

「ここまで色々と話してくれたせめてもの慈悲だ。苦痛を味合わずに殺してやるよ」

「ッ…………!」

 影から潜影剣を作り出してバルゼル・ジンドットに刃先を向ける。
 バルゼルは覚悟がもう決まっているのか、下手な抵抗はせずに強く目を瞑っている。

 懸命な判断だ。

 そう思い。潜影剣を一気に振り抜く。
 瞬間、バルゼルの両手に握られた杖が妙に気になり振り抜いた剣を既のところで止める。

「……おい。その杖はなんだ?」

「えっ…………ああ、これか。これは『賢者の魔導ワイズ・レプリカ』っていう魔導具らしい」

「賢者の魔導……知ってるかスカー?」

 その初めて聞く単語に俺は潜影剣を影に戻して賢者に聞く。

「知らんな」

「だよな。おい、できるだけその魔導具の知ってることを話せ」

『賢者の魔導』なんともきな臭い名前の魔導具だ。スカーも知らないと言うし、俺もリイブさんから聞いた覚えはない。いったいどんな魔導具なんだ?

「あ、ああ。と言っても俺も詳しいことはあまり分からない。元々この魔導具はアッシュの物なんだ。それでも──」

「──いいから話せ」

「わ、分かった」

 オドオドと情けなく前置くバルゼルにイラつきながら話を聞く。

 なんでもその『賢者の魔導』とやらは七賢者の魔法が記憶された簡易魔導具らしい。しかも適正属性のない共通魔導具。
 その具体的な能力というのが、一時的なモンスターの精神支配だという。
 この魔導具の能力のお陰でコイツらは深層を生き抜いて来たらしい。

 深層のモンスターをも簡単に精神支配して操る簡易魔導具。その能力は破格だが、代償として使用する際に使用者の魔力を尋常ではないほど消費する。それこそ一回、多くても三回使えば使用者は魔力を全消費して死に至る程だと言う。

 色々と引っかかる点は多いが強力な魔導具であることには変わりない。

「これをどこで手に入れたか分かるか?」

「悪いが分からない。この魔導具をどこで手に入れたのかはアッシュしか分からないと思うぞ……」

「そうか……」

 バルゼルの分かりきっていた答えに溜息を吐く。
 やはりあの男を殺すのは早計だった。

 とりあえずこの魔導具は回収だな。
 一度、リイブや他の賢者に意見を仰ぎたい。もしかしたら賢者の知識を狙う治者たちと関係があるかもしれない。

「はあ、話は分かった。それじゃあその杖よこせ。没収だ」

「あ、ああ」

 色々とまた面倒な問題が出てきなと考えながらバルゼルから不気味な紫の魔法石が付いた杖を受け取り、影の中に入れておく。

 さて、色々とグダグダになってしまったがそろそろ本当に終わりにしよう。

「…………やめた。一気にシラケた。お前を殺すよりも色々と考えなきゃいけないことができた」

「…………え?」

 と思ったが、もうなんだかどうでもよくなってきた。
 正直、もう冷静を通り越してシラケた。誰かを殺す殺さないなんて考える気分ではない。
 それなら速くアイリス達の様子を確かめたい。

「お前、もう消えてもいいぞ。殺す気失せた、死ぬなら勝手に死ね」

「えっ、いや、ちょ…………はぁ!?」

 突然の俺の発言にスキンヘッドは口をあんぐりと開いて驚く。

「そんじゃあな。運良く拾った命だ。せいぜい足掻けよ」

 まだ状況を理解出来ずに呆然としているスキンヘッドに、一方的にそう言うとラーナの元へと歩く。
 先ずはラーナの手当てからだ。

「ワンッ!」

 俺が近づくとボロボロだと言うのにラーナは立ち上がり、しっぽを振って抱きついてくる。思いっきり甘えるように顔を舐めたり、頬擦りしたりとやりたい放題だ。

 手当てしようにもこの暴れようでは無理だ。本当に怪我してるよね?
 まあ落ち着くまではしばらく好きにさせてやろう。

 そんなこんなで一方的にラーナに遊ばれていると、ちょうどユネルが上から降りてくる。
 一瞬、この荒れに荒れた場の状況に驚いていたが、直ぐにアイリスとエルバートの姿を見つけるとそちらに近づいて二人の手当てを始めてくれた。

 これを見ても直ぐに冷静さを取り戻すとはさすが大人なユネルさんだ。とても頼りになる。

「はあ。全員無事にとはいかなかったけど──」

 ──なんとか全員合流することが出来た。

 何度目かの溜息を吐く。
 しかしそれは気落ちや、マイナスな感情を意味するものではなく。安堵からくるとても心地の良いモノだった。
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