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昇級決闘編
第79話 迷宮踏破(2)
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数度の魔物との戦闘を経て、第一階層の最奥へと来ていた。もう少しで下の二階層へと続く連絡通路が見えてきてもおかしくはない頃。
「〈氷槍〉!!」
一度目の時ならばこの時点で相当体力を消耗し、次の階層に行こうなんて考えずに即決で撤退を選んでいたことであろう。それを思うと随分と自分が成長したように思えたし、それと同時に仲間に恵まれたなと痛感する。
「〈光弾〉!!」
全員が【第四級】以上の実力者、それも扱う魔法が血統魔法と来ればその戦力は一般人でも確と理解できることであろう。本当に敵の殲滅力と言うか、速さが尋常ではない。
────分かっていたことだけど、改めて考えると凄いメンツだよな。
血統魔法の扱いに長けた令嬢二人と、勇者の末裔にこの国の王子殿下。一度目では考えられない光景である。
────俺、浮いてないよね???
これだけ豪華なメンバーだと気後れ……はしないが、思えば過去のトラウマの総出演で少し前の俺ならこれだけで卒倒していたことだろう。
────人間、慣れるもんなんだなぁ……。
しみじみと感慨に耽っているとフリージアが前方を指さした。
「ねえ、あれって下への階段じゃない!?」
「先ほど見た地図的に間違いないだろうな」
彼女の言葉通りそれは下へと続く連絡通路で間違いない。クロノス殿下もそれを認めて、俺達はそのまま連絡通路のある部屋へと侵入しようとするが────
「いったんストップ。先客がいるな……」
俺は寸前で待ったを掛ける。
『────!!』
『────???』
『────』
微かではあるが話し声が聞こえる。間違いなく、俺達よりも先行していたどこかの〈派閥〉だと言うのは間違いなく。果たして、それが何処の〈派閥〉なのかが問題であるわけだが────
「考えても仕方がない。相手がやる気なら迎え撃つだけだ」
俺達としてはやることは変わらない。誰よりも早く最深層へと向かい、王冠を奪取する。
────その過程で邪魔が入るなら排除するってだけだ。
そう覚悟を改めて、部屋に近づくと先にその場にいた〈派閥〉の連中もこちらに感づいたらしい。まだ敵意のようなものは感じない。それよりも別の……この酷く背筋がざわつく感覚は覚えがあった。
「あー、誰かと思ったらクレイム君じゃない~」
部屋に入った瞬間に酷く甘ったるい声が俺達を出迎えた。それと同時に俺はここに足を踏み入れたことを酷く後悔した。
「痴女集団……」
視界に入ってきたのは見眼麗しい女生徒のみで構成された〈派閥〉。しかしてそれは仮初の姿であり、化けの皮を剥がせば淫魔が飛び出てくる驚き箱だ。
────男のセイキを悉く吸い尽くすんだから間違いではない。
実際にその毒牙にかけられたことはないが、やはりと言うべきかあの後からボロボロとこいつらの悪評が耳に届いてきた。
やれ干からびた下半身がむき出しの男子生徒が目撃されたとか、やれ夜な夜な第二学舎の空き教室から甘いお香の香りと変な奇声が聞こえてくるとか……うん、俺の判断は正しかった。そして再び、貞操の危機である。
エルフの国のお姫様が率いる痴女集団────〈妖艶の派閥〉は俺達を見つけると這いよるように近づいてきた。咄嗟に武器を構えようとするが、それを慌てたようにグランフォレスト先輩が待ったを掛ける。
「ちょっとちょっと!そんなに警戒しないでよ!私たちに敵意はないわ!」
両手を上げて無害を主張する彼女たちにそれでも俺達は態度を改める気はない。
そもそも、この状況で無防備に接近を許す方がどうかしているだろう。本当に敵意がなくとも今は〈昇級決戦〉の最中であり、競い合う派閥同士なのだ、友好的に行く必要もない。それに────
「エリューレ・グランフォレストと眼は合わせるなよ。万が一、魅了でもされれば、俺はお前たちを殴り飛ばして正気に戻さなければいけなくなる」
「そ、それは勘弁かな……」
敵意はないと口では宣うくせに、その瞳は以前の時のように妖しく光っている。
曰く、それと目が合うと心を掌握され、魅了されるのだとか。曰く、その怪しく光る瞳は魔眼の一種であるのだとか……。
────本当に油断ならない女だ。
あのまま接近されていたら確実にヴァイスや殿下は魅了されていたことだろう。そうしてそのまま二人は奴らにひん剥かれて美味しく頂かれていたに違いない。そこまで想像できてしまった。想像できてしまったことが悲しかった。
「所かまわずおっぱじめようとしやがって……年中発情期かよ……」
「正解!!」
「正解!!」じゃねえよ。マジでふざけんな。場所と場合を考えろ、どこの誰が大事な〈昇級決戦〉、迷宮の中でおっぱじめよって言うんだ……いや、少なくともここにはいるのだが────
「考えたところでか……」
ある種、これが彼女たちの常套手段。敵を篭絡することが彼女たちをここまで押し上げてきたと思えば、侮るわけにもいかない。
依然として眼前の淫魔どもはこちらに取り入る隙を伺っている。これで男だけの〈派閥〉であったら一瞬で食いものにされていただろうが、残念ながらこちらにも負けず劣らず見眼麗しい女性が二人もいる。
彼女たちにエリューレ・グランフォレストの魔眼の類は効果が無いようで、確実な牽制になってくれている。これ以上の問答は不要。あいつらに敵意はなくとも、性欲はあるので排除するのは確定である。
「フリージア、グラビテル嬢、エリューレ以外の相手を任せてもいいか?」
「もちろん!」
「……承りました」
安全を重視してヴァイスと殿下には周囲の警戒に徹してもらう。変な問答で時間を浪費してしまった。
「速攻で終わらせるぞ」
「ええッ!!」
「はい……!!」
早く先に進むまなければ王冠が他の派閥の手に渡ってしまうではないか。俺達三人は一気に地面を蹴って飛び出す。
「あ!まってまって!本当に待って!戦うのは勘弁よ~!!」
慌てふためく痴女集団。きっとこれも油断を誘うための策略なのだろうけれど相手が悪かったな。と言うか、一度目で効果がなかったのだから素直に諦めればいいものを────
「安心しろお望み通り戦いにはならない」
「えっ……それってもしかして……!!」
俺の言葉に何やらエリューレ・グランフォレストは期待の眼差しを向けてくるが、勘違いはしないでほしい。痛めつけないと言うだけで、無力化はさせてもらう。
「〈血束〉」
手首を切って血を曝け出す。それらを魔力で制御し、以前のように縄の形状を模して眼前の発情エルフの身柄を拘束する。
「あ!この感じ久しぶり!!」
「黙ってろエロエルフ」
なんとも煽情的な悲鳴にぐらりと気が揺れる。接近しすぎた所為で魔眼の引力に少しでも魅かれてしまったらしい。やはりこの眼は危険だ。
「序でにその眼も封印だ!!」
「ああ!やっぱり緊縛プレイなんてニッチすぎるわ!!」
「うるせぇ黙ってろ!!」
やはりこのエルフ、終わっている。早く何とかしなければ……。あっさりと……と言うか自ら望んで拘束されにきたエロフを一瞥して、俺は他の痴女を任せた二人の様子を伺う。
彼女らは彼女らであの程度の生徒に後れを取るはずもなく、問題なくそれぞれの魔法で拘束に成功していた。
「よし、それじゃあ先に進むぞ」
「あ、あのまま放置していても大丈夫なの?」
踵を返して二階層へと続く連絡通路へと進もうとすると、ヴァイスがおずおずと尋ねてきた。まあ、迷宮の中に身動きが取れない状態で放置するのは鬼畜すぎるが、心配は無用だ。
「安心しろ。そもそもこの部屋は安全地帯だし、数分もすれば拘束は解ける」
「そ、それならよかったよ……」
慈悲深い勇者殿は痴女にまで優しい。そこに貴賤はないのだ。大変、勇者らしいではないか。しかし────
「あいつらだけには隙を見せちゃいけない。ヴァイスはいつまでも純粋なままでいてくれ……」
「なんの話!!?」
まだ無垢な少年よ、願わくばあんな痴女の魔の手だけには落ちないでくれ。
「〈氷槍〉!!」
一度目の時ならばこの時点で相当体力を消耗し、次の階層に行こうなんて考えずに即決で撤退を選んでいたことであろう。それを思うと随分と自分が成長したように思えたし、それと同時に仲間に恵まれたなと痛感する。
「〈光弾〉!!」
全員が【第四級】以上の実力者、それも扱う魔法が血統魔法と来ればその戦力は一般人でも確と理解できることであろう。本当に敵の殲滅力と言うか、速さが尋常ではない。
────分かっていたことだけど、改めて考えると凄いメンツだよな。
血統魔法の扱いに長けた令嬢二人と、勇者の末裔にこの国の王子殿下。一度目では考えられない光景である。
────俺、浮いてないよね???
これだけ豪華なメンバーだと気後れ……はしないが、思えば過去のトラウマの総出演で少し前の俺ならこれだけで卒倒していたことだろう。
────人間、慣れるもんなんだなぁ……。
しみじみと感慨に耽っているとフリージアが前方を指さした。
「ねえ、あれって下への階段じゃない!?」
「先ほど見た地図的に間違いないだろうな」
彼女の言葉通りそれは下へと続く連絡通路で間違いない。クロノス殿下もそれを認めて、俺達はそのまま連絡通路のある部屋へと侵入しようとするが────
「いったんストップ。先客がいるな……」
俺は寸前で待ったを掛ける。
『────!!』
『────???』
『────』
微かではあるが話し声が聞こえる。間違いなく、俺達よりも先行していたどこかの〈派閥〉だと言うのは間違いなく。果たして、それが何処の〈派閥〉なのかが問題であるわけだが────
「考えても仕方がない。相手がやる気なら迎え撃つだけだ」
俺達としてはやることは変わらない。誰よりも早く最深層へと向かい、王冠を奪取する。
────その過程で邪魔が入るなら排除するってだけだ。
そう覚悟を改めて、部屋に近づくと先にその場にいた〈派閥〉の連中もこちらに感づいたらしい。まだ敵意のようなものは感じない。それよりも別の……この酷く背筋がざわつく感覚は覚えがあった。
「あー、誰かと思ったらクレイム君じゃない~」
部屋に入った瞬間に酷く甘ったるい声が俺達を出迎えた。それと同時に俺はここに足を踏み入れたことを酷く後悔した。
「痴女集団……」
視界に入ってきたのは見眼麗しい女生徒のみで構成された〈派閥〉。しかしてそれは仮初の姿であり、化けの皮を剥がせば淫魔が飛び出てくる驚き箱だ。
────男のセイキを悉く吸い尽くすんだから間違いではない。
実際にその毒牙にかけられたことはないが、やはりと言うべきかあの後からボロボロとこいつらの悪評が耳に届いてきた。
やれ干からびた下半身がむき出しの男子生徒が目撃されたとか、やれ夜な夜な第二学舎の空き教室から甘いお香の香りと変な奇声が聞こえてくるとか……うん、俺の判断は正しかった。そして再び、貞操の危機である。
エルフの国のお姫様が率いる痴女集団────〈妖艶の派閥〉は俺達を見つけると這いよるように近づいてきた。咄嗟に武器を構えようとするが、それを慌てたようにグランフォレスト先輩が待ったを掛ける。
「ちょっとちょっと!そんなに警戒しないでよ!私たちに敵意はないわ!」
両手を上げて無害を主張する彼女たちにそれでも俺達は態度を改める気はない。
そもそも、この状況で無防備に接近を許す方がどうかしているだろう。本当に敵意がなくとも今は〈昇級決戦〉の最中であり、競い合う派閥同士なのだ、友好的に行く必要もない。それに────
「エリューレ・グランフォレストと眼は合わせるなよ。万が一、魅了でもされれば、俺はお前たちを殴り飛ばして正気に戻さなければいけなくなる」
「そ、それは勘弁かな……」
敵意はないと口では宣うくせに、その瞳は以前の時のように妖しく光っている。
曰く、それと目が合うと心を掌握され、魅了されるのだとか。曰く、その怪しく光る瞳は魔眼の一種であるのだとか……。
────本当に油断ならない女だ。
あのまま接近されていたら確実にヴァイスや殿下は魅了されていたことだろう。そうしてそのまま二人は奴らにひん剥かれて美味しく頂かれていたに違いない。そこまで想像できてしまった。想像できてしまったことが悲しかった。
「所かまわずおっぱじめようとしやがって……年中発情期かよ……」
「正解!!」
「正解!!」じゃねえよ。マジでふざけんな。場所と場合を考えろ、どこの誰が大事な〈昇級決戦〉、迷宮の中でおっぱじめよって言うんだ……いや、少なくともここにはいるのだが────
「考えたところでか……」
ある種、これが彼女たちの常套手段。敵を篭絡することが彼女たちをここまで押し上げてきたと思えば、侮るわけにもいかない。
依然として眼前の淫魔どもはこちらに取り入る隙を伺っている。これで男だけの〈派閥〉であったら一瞬で食いものにされていただろうが、残念ながらこちらにも負けず劣らず見眼麗しい女性が二人もいる。
彼女たちにエリューレ・グランフォレストの魔眼の類は効果が無いようで、確実な牽制になってくれている。これ以上の問答は不要。あいつらに敵意はなくとも、性欲はあるので排除するのは確定である。
「フリージア、グラビテル嬢、エリューレ以外の相手を任せてもいいか?」
「もちろん!」
「……承りました」
安全を重視してヴァイスと殿下には周囲の警戒に徹してもらう。変な問答で時間を浪費してしまった。
「速攻で終わらせるぞ」
「ええッ!!」
「はい……!!」
早く先に進むまなければ王冠が他の派閥の手に渡ってしまうではないか。俺達三人は一気に地面を蹴って飛び出す。
「あ!まってまって!本当に待って!戦うのは勘弁よ~!!」
慌てふためく痴女集団。きっとこれも油断を誘うための策略なのだろうけれど相手が悪かったな。と言うか、一度目で効果がなかったのだから素直に諦めればいいものを────
「安心しろお望み通り戦いにはならない」
「えっ……それってもしかして……!!」
俺の言葉に何やらエリューレ・グランフォレストは期待の眼差しを向けてくるが、勘違いはしないでほしい。痛めつけないと言うだけで、無力化はさせてもらう。
「〈血束〉」
手首を切って血を曝け出す。それらを魔力で制御し、以前のように縄の形状を模して眼前の発情エルフの身柄を拘束する。
「あ!この感じ久しぶり!!」
「黙ってろエロエルフ」
なんとも煽情的な悲鳴にぐらりと気が揺れる。接近しすぎた所為で魔眼の引力に少しでも魅かれてしまったらしい。やはりこの眼は危険だ。
「序でにその眼も封印だ!!」
「ああ!やっぱり緊縛プレイなんてニッチすぎるわ!!」
「うるせぇ黙ってろ!!」
やはりこのエルフ、終わっている。早く何とかしなければ……。あっさりと……と言うか自ら望んで拘束されにきたエロフを一瞥して、俺は他の痴女を任せた二人の様子を伺う。
彼女らは彼女らであの程度の生徒に後れを取るはずもなく、問題なくそれぞれの魔法で拘束に成功していた。
「よし、それじゃあ先に進むぞ」
「あ、あのまま放置していても大丈夫なの?」
踵を返して二階層へと続く連絡通路へと進もうとすると、ヴァイスがおずおずと尋ねてきた。まあ、迷宮の中に身動きが取れない状態で放置するのは鬼畜すぎるが、心配は無用だ。
「安心しろ。そもそもこの部屋は安全地帯だし、数分もすれば拘束は解ける」
「そ、それならよかったよ……」
慈悲深い勇者殿は痴女にまで優しい。そこに貴賤はないのだ。大変、勇者らしいではないか。しかし────
「あいつらだけには隙を見せちゃいけない。ヴァイスはいつまでも純粋なままでいてくれ……」
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