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それにしても、隣国も大丈夫なのか心配よね。
「汚い女め!さっさと出ていけ!」
騎士団長子息が、地面を蹴ると蹴り上げられた土が私に降りかかる。
「なぁ、浄化って、綺麗にすることだろ?魔法でその汚れを綺麗にしてみろよ。もし綺麗にできるんなら、掃除係として家に置いてやるように父上に頼んでやってもいいけど?
ニヤニヤしてしながら義弟が私のスカートを踏んでぐりぐりと足を動かした。
白い制服が土でさらに汚れる。降りかかった土なら払えば落ちるけれど、靴で繊維の奥に押し込められた汚れは洗っても落ちないかもしれない。
と、ちょっとため息が出る。
「できないだろ?そうだよな、浄化魔法なんて使えないんだもんなぁ」
第二王子があざ笑う。
「ぐうの音も出ねぇよなぁ、図星だし、ほら、何か言ってみろよっ!」
第三王子が私の背中を小突いたので、両手をついた。……蹴られたのかな。背中にも靴の汚れがついちゃったかも。
「使えます。浄化魔法……。小さな浄化魔法は、常時使っています」
皇太子殿下が地面についた私の手を踏みつけた。
「嘘つくんじゃねぇよ。嘘をついてまで聖女でいたいかよ!俺とそんなに結婚したいのか?」
首を横に振る。
「いいえ……殿下と結婚したいと思ったことは一度もありません」
本心がするりと口から出る。
顔を上げると殿下がちょっと驚いた顔をしていた。
「婚約破棄ありがとうございます」
深々とお辞儀をすると、笑いが怒った。
「あはは、庶民に振られたねぇ、兄上」
「くっくっく、結婚したくなかったんだとよ」
殿下が私の襟首をつかんで持ち上げた。
強い力で締めあげられ、息ができない。
「国家反逆罪だ、聖女だと偽り、皇太子妃となって国を乗っ取ろうとしたんだ、死刑だ、死刑っ!」
そ、そんな……!
「わ、私は自分から聖女だと言ったことも無ければ、皇太子妃にしてくださいと頼んだ覚えもありませんっ!し、死刑だなんて……あんまりだわ!」
5歳で両親と無理やり引き裂かれ、侯爵家では養女とは名ばかり。一人で別邸に入れられた。
世話役の女性が食事を運び、厳しい教育係が指導する。泣いても誰にも慰められず、日常会話を忘れかけたころ、前世の記憶がよみがえった。
いえ、前世の私が私の体の中に住んでいるといった感じだろうか。
二重人格っぽいねと、前世の私が笑った。
でも、二重人格みたいに私は表に人格として出ないし、あなたとお話できるからどちらかと言えば私は背後霊?守護霊みたいな感じかなぁ?
と、私の知らないたくさんのことを頭の中で話してくれた。
今も……。頭の中で怒りまくっている。あまりにも脳内の前世の記憶がうるさすぎて、殿下たちが言っている言葉が頭に入ってこないくらいだ。
「じゃあ、使って見ろよ、浄化魔法ってやつ。小さなのじゃなくて、飛び切りでっかいやつを!俺らにも分かるように!」
皇太子殿下の言葉に、脳内の前世の記憶が【やっちゃえ、やっちゃえ!】と騒ぎ出す。
「一番、大きな浄化魔法を……?」
確かに、それなら死刑にはならないかもしれない。
「いいんですか?使っても……?」
私の問いに、殿下がいら立って答える。
「いいに決まってんだろ!」
「そうだそうだ。使えるもんなら使えよ」
「使ってはダメだと言われていますとか言って言い逃れできると思わないでね」
「汚い女め!さっさと出ていけ!」
騎士団長子息が、地面を蹴ると蹴り上げられた土が私に降りかかる。
「なぁ、浄化って、綺麗にすることだろ?魔法でその汚れを綺麗にしてみろよ。もし綺麗にできるんなら、掃除係として家に置いてやるように父上に頼んでやってもいいけど?
ニヤニヤしてしながら義弟が私のスカートを踏んでぐりぐりと足を動かした。
白い制服が土でさらに汚れる。降りかかった土なら払えば落ちるけれど、靴で繊維の奥に押し込められた汚れは洗っても落ちないかもしれない。
と、ちょっとため息が出る。
「できないだろ?そうだよな、浄化魔法なんて使えないんだもんなぁ」
第二王子があざ笑う。
「ぐうの音も出ねぇよなぁ、図星だし、ほら、何か言ってみろよっ!」
第三王子が私の背中を小突いたので、両手をついた。……蹴られたのかな。背中にも靴の汚れがついちゃったかも。
「使えます。浄化魔法……。小さな浄化魔法は、常時使っています」
皇太子殿下が地面についた私の手を踏みつけた。
「嘘つくんじゃねぇよ。嘘をついてまで聖女でいたいかよ!俺とそんなに結婚したいのか?」
首を横に振る。
「いいえ……殿下と結婚したいと思ったことは一度もありません」
本心がするりと口から出る。
顔を上げると殿下がちょっと驚いた顔をしていた。
「婚約破棄ありがとうございます」
深々とお辞儀をすると、笑いが怒った。
「あはは、庶民に振られたねぇ、兄上」
「くっくっく、結婚したくなかったんだとよ」
殿下が私の襟首をつかんで持ち上げた。
強い力で締めあげられ、息ができない。
「国家反逆罪だ、聖女だと偽り、皇太子妃となって国を乗っ取ろうとしたんだ、死刑だ、死刑っ!」
そ、そんな……!
「わ、私は自分から聖女だと言ったことも無ければ、皇太子妃にしてくださいと頼んだ覚えもありませんっ!し、死刑だなんて……あんまりだわ!」
5歳で両親と無理やり引き裂かれ、侯爵家では養女とは名ばかり。一人で別邸に入れられた。
世話役の女性が食事を運び、厳しい教育係が指導する。泣いても誰にも慰められず、日常会話を忘れかけたころ、前世の記憶がよみがえった。
いえ、前世の私が私の体の中に住んでいるといった感じだろうか。
二重人格っぽいねと、前世の私が笑った。
でも、二重人格みたいに私は表に人格として出ないし、あなたとお話できるからどちらかと言えば私は背後霊?守護霊みたいな感じかなぁ?
と、私の知らないたくさんのことを頭の中で話してくれた。
今も……。頭の中で怒りまくっている。あまりにも脳内の前世の記憶がうるさすぎて、殿下たちが言っている言葉が頭に入ってこないくらいだ。
「じゃあ、使って見ろよ、浄化魔法ってやつ。小さなのじゃなくて、飛び切りでっかいやつを!俺らにも分かるように!」
皇太子殿下の言葉に、脳内の前世の記憶が【やっちゃえ、やっちゃえ!】と騒ぎ出す。
「一番、大きな浄化魔法を……?」
確かに、それなら死刑にはならないかもしれない。
「いいんですか?使っても……?」
私の問いに、殿下がいら立って答える。
「いいに決まってんだろ!」
「そうだそうだ。使えるもんなら使えよ」
「使ってはダメだと言われていますとか言って言い逃れできると思わないでね」
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