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プロローグ
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それはきっと、母国滅亡となる日。
城下はおびただしい数の屍で埋め尽くされ、すでに悲鳴の一つも聞こえない。むせかえるような血と、肉が焦げる臭い。城門も破壊され城内にわずかに残った衛兵たちは、敵兵が引き連れたひとりの戦闘奴隷の手によって斬り伏せられその数を減らしてゆく。奴隷は慣れた足取りで城の奥へと進んで行き、ある一室の扉を迷いなく開けた。
「アトラエル!!」
懐かしい女性の声が名を呼ぶ。
奴隷の目の前で、
奴隷と同じ顔をした『別人』に向かって、
奴隷の名を、呼ぶ。
そして、僕から庇うようにしてその『別人』を抱きしめ、身を小さく丸めた。
「王妃と王子を御守りしろ!」
替え玉。
そうまでして、正妃の子という存在が必要だったということか。
そして、
「ははっ」
無意識のうちに、渇いた笑いが口からこぼれ出た。身につけているローブのフードを目深にかぶっているせいで、目の前の奴隷が王子と同じ顔をしていることに気づいた様子の者は一人もいない。尤もフードなどなくともその薄汚れた姿では気づかれることはなかったであろう。
誰も『僕』を捜してなんかいなかった。必要だったのは『正妃の子』であって、誘拐され奴隷の身に堕ちた僕なんて、どうでもよかったのだ。誘拐された事実を公表するでもなく、替え玉をたてることで、起きた事実そのものを無かったことにしていたのだろうから。
奴隷のわずかに残っていた意識は真っ黒に塗りつぶされる。
その後の記憶はない。
城下はおびただしい数の屍で埋め尽くされ、すでに悲鳴の一つも聞こえない。むせかえるような血と、肉が焦げる臭い。城門も破壊され城内にわずかに残った衛兵たちは、敵兵が引き連れたひとりの戦闘奴隷の手によって斬り伏せられその数を減らしてゆく。奴隷は慣れた足取りで城の奥へと進んで行き、ある一室の扉を迷いなく開けた。
「アトラエル!!」
懐かしい女性の声が名を呼ぶ。
奴隷の目の前で、
奴隷と同じ顔をした『別人』に向かって、
奴隷の名を、呼ぶ。
そして、僕から庇うようにしてその『別人』を抱きしめ、身を小さく丸めた。
「王妃と王子を御守りしろ!」
替え玉。
そうまでして、正妃の子という存在が必要だったということか。
そして、
「ははっ」
無意識のうちに、渇いた笑いが口からこぼれ出た。身につけているローブのフードを目深にかぶっているせいで、目の前の奴隷が王子と同じ顔をしていることに気づいた様子の者は一人もいない。尤もフードなどなくともその薄汚れた姿では気づかれることはなかったであろう。
誰も『僕』を捜してなんかいなかった。必要だったのは『正妃の子』であって、誘拐され奴隷の身に堕ちた僕なんて、どうでもよかったのだ。誘拐された事実を公表するでもなく、替え玉をたてることで、起きた事実そのものを無かったことにしていたのだろうから。
奴隷のわずかに残っていた意識は真っ黒に塗りつぶされる。
その後の記憶はない。
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