黒髪狼少女は、白髪の青年に何を思う？

氷の国アイシス編

噂

　狩夜達はアイシスの宿付近まで戻っていた。

「ふ～、正直疲れた.....」

　クウは疲れ切った表情でげっそりしている。
　子供の見た目の割に元気が少ないようだ。
　まあ、人間の姿のまま探索させたので消耗が激しいだけかもしれないが...。
　狩夜は宿に戻る前に討伐数を報告して報酬をもらう。
　10匹討伐しただけで1万ガル、これを何日間か続ければすぐに黒字に転換できるなと考えていると、こんな話が聞こえてきた。

「最近黒い魔物が銀票の滝に出るらしいな」

　その言葉を聞いた狩夜は目の色を変えてその話に混じる。

「その話詳しく聞かせてくれないか？」

　小さく威圧するような声で呟く。
　その話をしていた男達は困惑した表情で狩夜に話し始める。

「銀票の滝っていうこの国の名所があるんだが、最近そこで黒い魔物を見たっていう人が後を絶たないんだ」

　銀票の滝、狩夜は小さく呟きながらその場を後にした。
　その後を追うように2人とも狩夜についていくが宿まで戻ると先に二人に眠るように指示を出して鍵を渡してきた。
　部屋の鍵を受け取った花夜は心配そうに狩夜を見つめていた。

(あんな兄ちゃんの顔見たことない...)

　短い間だが狩夜とは行動を共にしてきて、ある程度は狩夜のことをわかったつもりだった。
　自分の知らない狩夜が居ることに若干の不安を感じたのだ。
　あの話を聞いた時の狩夜はすこし怖い顔をしていた、あの顔は自分のことを考えていない顔だ、ただ目的のために動く危険のサイン。
　違う人であの顔を見たことのある花夜は狩夜の後をこっそり追う。
　クウも呆れた顔をしながらも花夜に付き合う。
　行こう、夜は長い。