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倉庫女子になった日
しおりを挟む大学を晴れて卒業し、私が就いた仕事は倉庫業である。
まだまだ男性社員が多く、今後は女性の活躍が期待される業界だと聞き、よく分からないまま入社することになった。
採用してくれた会社の人も、「君なら絶対に活躍できるよ!」とはやし立てるものだから、そっそれなら…!とニマニマしながら就職した。
実のところ、生まれてこの方それらしい恋愛もしていなかったため、倉庫業に就けば男性も多くて結婚も出来るんじゃ…という下心があったことはここだけの話である。
初配属は生まれ育った地元からかなり離れた場所になった。
元々物欲も少なく、荷物をまとめる中で要らないものを捨てに捨てたため、荷物は某宅急便会社の一番大きいサイズの段ボール5箱に収まった。
家具家電付きの借り上げ社宅。
希望は倉庫から自転車で通える距離とした。
引っ越し予定日の2週間前、会社から待ち望んだ住宅の案内が届いた。
え?
倉庫から自宅の距離…6キロあるんですけど…
どうやら片道6キロは自転車で通う距離だったみたいだ。
大急ぎでマップを見て、片道何分かかるのかと調べたところ、片道40分であることがわかった。
「ならもう、車買えばいいじゃん!」との声が聞こえてきそうだが、あいにくとこの小娘、ペーパードライバーなもので、毎日命懸けで通勤するのなんてごめんだった。
まあ、6キロ。されど、6キロ。
都会で電車に揺られて1時間かけて通っている人もいるし、早く帰れば問題ないだろうと納得することにした。
この時はまだ、倉庫業の実態もろくに知らず…
そんなこんなで、今更とやかく言うことも出来ず、腹を括って引っ越しをした。
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4月某日、研修期間を終えて初めて倉庫に出勤した。
大きすぎる建物、ズラリと並ぶトラック、やたらと大きい駐車場。
何もかもが新鮮だった。
配属先は、冷凍と冷蔵の倉庫で常時13℃くらいの温度で働く場所。
冷凍庫となると-20℃から-40℃になる。
入って一番の感想は「寒い」。この1点だった。
「動いてたら心地良くなるから大丈夫だよ!」と直属の上司になる男性(私は「マッシュルームさん」とあだ名を付けている)に言われて、頭に?を浮かべながら、ニコニコと「そうなんですねー」と受け答えた。
「さて、まずはこの倉庫を一通り回ってみようか!」
そう言われて、安全靴を履き、指定の作業服と帽子、ヘルメットを被り倉庫内を歩くことになった。
4階建ての倉庫であったが、社員は少なく、そのほとんどがパート、アルバイトさんだった。
主婦層の女性たちが、段ボールからものを取り出しては、オリコンと呼ばれる四角い入れ物に入れている。
時折エラー音がけたたましく、ビー!ビー!と鳴っていた。
トラックに荷積みをしている作業員もいて、出荷する荷物が間違いないかについても、パートの女性がとてつもない速さで検品し、紙に丸印を付けていた。
なるほど………
ふむ………
女子多くない!?えー!?女子、多くない??!
ワイの結婚、どうするのよ!?
男性社員がいると言っても、高校を卒業して就職した私より年下か、両親よりも年上な人。
悟ってしまった。
あぁ、夢ついえると………。
男性ならドライバーさんも沢山いるが、この時はそんな発想も出ず、未婚倉庫女子確定だな…とかなり落胆した。
まあ、なんだかんだ女性が多いなら、働きやすいだろうし、負担も少ないだろうしでいい所に就職したなと自分を肯定することで初日を乗り越えた。
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出勤2日目。
私はDASと呼ばれる、段ボールから小物を取り出し、行先に書いてあるオリコンに指定の個数を詰める仕事を任されることになった。
作業員としての仕事、スタートである。
商品についてあるバーコードを読み取り、指定のオリコンに表示された個数の商品を入れていく。
この繰り返しである。
思っていたよりも単純で、開始2時間もあれば、何となく動けるようになるくらいには簡単な仕事だった。
間違った個数さえ入れなければ、どんな顔で、どんなことを考えながらでも仕事が出来た。
生まれつき妄想するのが好きだったため、頭の中で「あわわー、期待のイケメン新人入ってこないかなー」などと考えながら、黙々と作業をこなした。
作業員として初めての1日が終わり、「新人は定時で帰りなよ」と催促をされ、17時には退勤を押した。
帰路6キロを自転車で帰りながらふと、
バイトと何が違うんだ
なんて考える。
実際、初任給はそこそこいいにも関わらず、やっていることは単純。
それでいて、この仕事はとりあえず3ヶ月はやってもらうからと言われたものだから、バイトくらいの仕事でバイト以上の給料を貰えることが確定した。
(まあ、そんな単純な話な訳はないが…)
ちょっと待てよ、、、神がかった仕事じゃないか!!
この時はそんなことを考えていた。
こうして、私は倉庫女子になったのである。
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