塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした

雨宮 叶月

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夏休み⑦

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海辺の余韻がまだ体に残るなか、全員は宿泊先のラウンジスペースに集まっていた。
天井が高く、ウッド調の内装。窓の外には夕闇が広がり、虫の声が心地よい。

「じゃーん、トランプ持ってきたよー!」
天城が得意げに取り出したのは、一回り大きめの赤いケース。

「何するの?」

「ババ抜き?」

「神経衰弱……はやめよう。疲れてる」

「大富豪だな」

空気がまとまる。

こうして、即席で3グループに分かれて、大富豪大会が始まった。

私の入ったテーブルには、佐伯・霧島・天城の3人。

「よーし、今日こそ仕返ししてやりますよ黒宮さん~~」

「え?……」


「……その必要はありません」
私は静かにカードを切る。手慣れた様子。無駄な動きなし。

ゲーム開始。初手、佐伯。

「じゃあ、6の2枚で」

「パス」霧島。

「パス」天城。

「……2の2枚で」
と私。


そして上の手札を使う。


「次、7の4枚です。」

「えっ、4枚って……」





「7、7、7、ジョーカー。革命です」






「はああああああ!?」

「おいちょっと! 初手革命やめろ!」
佐伯と天城の叫びが室内に響く。

だが、そこからが私の本領発揮だった。


「……え、もう終わった?」
霧島がまだカードを5枚持っている段階で、スッと最後のカードを出す。

「上がりです」

「…………」

「えっ、ちょ、あれ……佐伯さん?」
天城が顔を覗き込む。

「…………やばい、無理。わたし今日もう“大貧民”しかなる気がしない……」
佐伯はソファに崩れ落ちていた。

私はというと、ひとつ息をついて淡々とカードをまとめ直す。

「では、次のゲームを」
「待って……! 誰か止めて……この人、本当に“黒の大富豪”……!!」

一方、隣のテーブルでは望月が盛大に失敗し、
さらに成瀬は「大富豪なのに一番に上がれない」という謎現象に遭遇していた。

そんな混沌の中で、私だけは、
完璧な配牌、完璧な流れ、完璧な表情管理で──

ひとり、静かに勝ち続ける。


(これこそが、一番楽しい)



夜はまだ長い。

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