塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした

雨宮 叶月

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夏休み⑭

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波の音が、柔らかく包み込む。
売店の布地が風に揺れ、焼き魚や貝の香りが漂ってくるたび、そちらに目を引き付けられる。

「ここ、おいしそう」
前を歩くメンバーの一人が指差した先では、大きな鉄板でホタテを焼いている。殻の上でじゅうじゅうと煮立つバター醤油の香りに、たくさんの声が上がる。


「ここにするか?」
成瀬が軽くみんなを見る。



注文を済ませると、紙皿の上に殻ごと乗ったホタテがやってくる。小さな木のフォークで身を外し、口に運んだ瞬間、海の旨味が広がった。
「……これは正解ですね」
自然と笑みがこぼれる。

少し離れたテントでは、炊きたてのご飯に地元の漬け魚をのせた丼を売っていた。佐伯がそれを手にして近づき、なぜか得意げに「こっちのほうが絶対当たり」と見せつけてくる。


私は、片手にバニラのシェイクと焼き鳥、もう一方にスイカ含めたフルーツと羊肉の串。

交代で皿を回し合い、あちこちのテントを巡る。冷やしきゅうりの串、イカ焼き、しらす入りの玉子焼き……。
砂浜に近い木陰に腰を下ろし、波を見ながらそれらをゆっくり頬張った。

食べ物の香りと潮の匂いが混ざり合い、暑さも不思議と心地よく感じられる。
ふと横を見ると、霧島はペットボトルの麦茶を飲みながら、どこか遠くの水平線を見ていた。
「……なんか、夏って感じしますね」
彼のぼそっとした一言に、私も同じ方角を見やる。
陽射しが海面に反射し、きらきらと揺れていた。

この瞬間だけは、時間がゆっくりと溶けていくようだった。
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