塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした

雨宮 叶月

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メンバー④ 最年少の気持ち

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控室で資料を整理していると、天城蓮が静かに近づいてきた。
「黒宮さん、今の次のスケジュール、確認してもいいですか?」

最年少ながら、メンバー内でも群を抜いて落ち着いた物腰の蓮。
けれどどこか、素直に甘えられない最年少らしい距離感がある。

そして、彼の丁寧さは、気遣いを感じさせる。



撮影スタジオでの待ち時間、蓮はメンバーの中でも静かな観察者だった。
霧島が機材の位置を確認するのを横目で見て、
「奏、今日の動きはもう少し滑らかにしたほうがいい。観客に違和感が残る」

望月が驚いて振り返る。
「蓮、そんなことまで見てるのか?」

「細かいところを見ないと、完成度は上がらないと思うから」

その言葉に颯真は小さく笑った。
「やっぱり最年少とは思えないな」

そんな天城に、佐伯詩織が珍しく声をかけた。
「天城って、真面目すぎない? もっとリラックスしたら?」

蓮は一瞬考え込み、すぐに答えた。
「そうですね。でも緊張感がないと、ミスは増えますよ」

「だから固いって言われるんだよ」

「固い、ですか」

天城はそれを否定せず、ただ静かに周囲を見回した。

私は彼らの会話を聞きながら、内心で思う。
“天城は最年少だけど、軽さが全くない。むしろ私より落ち着いている時もあるくらい”

だが、その“理知的な重み”は、決して重苦しくなく、メンバーたちに安心感を与えている。



ある日のリハーサル後。
天城は少しだけ疲れた表情を見せた。

私は声をかける。
「無理してない?」

「いえ。僕はここで失敗できませんから」

「そういうとこ、ちゃんと直していこう」

しばらく黙ってから、
「ありがとうございます。…でも黒宮さんはどうですか? いつも冷静すぎて、感情が読めないって言われませんか?」

微笑みながらも無表情のまま、
「よく言われる」

蓮は軽く笑った。
「それ、意外と便利ですよね」


数日後、佐伯がぽつりと言った。
「蓮ってさ、やっぱり最年少なのにしっかりしてるよな。ていうか何考えてるか分かんないけど」

「天城さんは自分のペースを守っているだけですぅ♡無理せず、自分の中の基準を崩さないんだと思います♡」


佐伯はため息をついた。


スタッフと話している天城の声が聞こえてくる。
「ありがとうございます。期待に応えられるよう、頑張ります」

私はふと、思った。
“最年少だけど、誰よりも頼れる存在。これが彼の魅力なんだ”

それは単なる年齢の問題ではなく、彼自身が選び取った居場所の形だった。
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