塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした

雨宮 叶月

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サバサバ系よりサバサバしてる最年少

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今日は“天城蓮”担当日。

マネジメント強化会議の一環で、個別意見交換と称したよくわからない企画が進んでいる。

進行役はもちろん私。そしてもう一人、なぜか張り切ってる人がいる。



「はーい、今日の進行、私が補佐しまーす! なんたって“対話力”が私の強みなんでっ!」



天城がやや引いた顔でこちらを見ていたのは、たぶん気のせいではない。



「……それ、昨日も言ってましたよね?」



「昨日も今日も“本質”は一緒ってことです!」



「いや、違いを出す気ゼロじゃないすか」



進行前から天城がバッサリいった。





「じゃあ、天城さん。普段からマネジメント面で感じてること、何かありますか?」



私が問いかけると、天城は一瞬だけ目を伏せたあと、さらっと答えた。



「黒宮さんの指示って、全部“無駄がない”んですよね。質問しようと思ってる内容が、もう書類に書いてあるとか」



「ありがとうございます。それが仕事ですから」



「そういうとこ、“マジで仕事人間”って感じで、かっこいいと思います」



「え、 嬉しいですっ!」



横から佐伯が大きな声で割って入る。



「私、意外と段取り得意なんですよ。 黒宮さんって“書類仕事”は上手でも、現場の空気とかちょっと読みにくいっていうか~」



なぜか比較。誰も頼んでない。



天城は一拍置いてから言った。



「……そうですか? 昨日、佐伯さんが“空気読んで”早めに片づけようとしたロケ弁、まだ食べてないメンバーいたし。俺、それで昼食逃したんすよね」



「えっ、あれって……あ、そうだったんだ……」



佐伯が珍しく言葉を詰まらせる。



「てか、“空気読む”って、“気まずい沈黙を笑って誤魔化すこと”じゃないですよ?」



「……なんか今日、キレキレですね?」



「朝ごはん食べそびれたんで、イライラしてるだけっす」



天城はこういう“脱力トーン毒舌”が得意で、あまり感情を表に出さない。でも、それが逆に効く。





休憩中、佐伯がメンバーにそれとなく話しかけていたのを聞き逃さなかった。



「蓮くんって、一見大人っぽいけど、けっこう“拗ねる”ところありますよね? ああいうの、私見抜けるタイプなんで~」



近くにいた霧島がぼそっと言った。



「……ああいうの、“拗ねてる”って言わないよ」



「むしろ、佐伯さんのほうが感情の起伏……」



成瀬が止めた。「やめとけ、地雷だ」






後半の会話。



「蓮くんは、自分で“最年少”って意識する?」



「しますよ。だから基本、何も主張しない。すると損するんで」



「損って?」



「最年少が目立つと“調子乗ってる”って言われるじゃないですか」



「そんなことないよ~! 私はけっこう蓮くんの“素直さ”とか、好きですよ? なんか、黙ってるのに考えてそうなとこ?」



私は、すぐに蓮の表情がほんの少し固まったのを見逃さなかった。



「……それ、“ペット褒めてる”ときの語彙っすね」



「あっ、ちがうちがうちが……!」



焦る佐伯。




全体会議終了後。



「蓮くんは、最年少なのに一番空気見てるな」



そう成瀬が漏らすと、朝倉も続いた。



「“発言しない”ことで場を制するタイプだよな」



すると佐伯がふいに言った。



「いやいや、でも逆に、私とかみたいに“率先して発言する人”がいないと空気停滞しません?」



私が笑顔で返す。



「“空気”と“独演会”は、意味が違うんですぅ♡」



「……なんか最近その笑顔がムカついてきたんですけど」



「それ、褒め言葉ですかぁ?♡」
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