塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした

雨宮 叶月

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明るい?

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「颯真くんってさ、誰にでも優しくて、場を明るくできるタイプじゃん? 私、そういうタイプと波長合うんだよね~」



控室に入るなり、佐伯詩織がさっそく言った。



その向かいで望月颯真は、ニコニコといつもの笑顔で「え~、ほんとっすか? 嬉しいな~」と返していたが、目だけは死んでいた。

――またですか、みたいな目だった。





「じゃあ今日は望月さん中心に、今後のSNS対応方針のすり合わせと、取材の受け答え確認をお願いします」



「はい!」



「っていうか、私そういう“コメント作る系”得意なんですよね! メンバーの代わりに答えてあげたり、けっこう適役だと思うんです!」



……誰が頼んだ。



「でも私、そういうのって“素”が大事だと思ってて。だから無理に台本通り答えると、逆に不自然に見えるっていうか?」



「じゃあ佐伯さん、例として答えてみてくださいます?」



「えっ?」



「“最近よく聴く音楽は?”って質問がきた場合、望月さんに代わってなんて答えますか?」



「えーっと、そうですね~、颯真くんって明るいし、ポップ系? なんかアイドルっぽいやつ? あ、でも意外とギャップで洋楽とか?」



「ふわっとしてますね♡」



「じゃ、なんて答えるのが正解なんですか?」



望月が笑いながら言った。



「最近は落語聴いてます。“間”の勉強に」



佐伯、目をまんまるにして絶句。



「……え、なんで」



「いやいや、笑わせる“間”って、勉強になるんすよ」



「マジで……? え、ちょっと、ギャップ……すご……」



「佐伯さん、息してくださ~い♡」





その後も、佐伯の“自分アゲ”は続いた。



「私、メンバーの笑いどころってけっこう見抜けるんですよ? 颯真くんってツッコミ側だし!」



「……僕、だいたいスベるの見て笑ってる側っすけどね」



「え? そうだったの?」



「“ツッコミ”ってより、“静観”って感じっすね」



「あっ……でも私、“静観してる人を笑わせる自信”あるんで!」



颯真がにこにこと笑いながら私に言った。



「黒宮さんって……こういう時どうやって耐えてるんすか?」



「お薬の時間ですぅ♡」



「その返し、好きです」





休憩中、佐伯が他のスタッフに軽く吹聴していた。



「颯真くんって、なんか最近“私といる時が一番楽しそう”に見えません? やっぱ私、ムードメーカーなんですよ~」



それを聞いていた霧島がぽつりと一言。



「……そもそも“楽しそう”って言われる時点で、本人は楽しくない可能性ある」



「深いな」



天城が感心していた。






会議が終わり、私と望月が隅で少し確認していたとき。



「そういや、黒宮さん。あの“逆ハイテンション”処理、いつもどうしてるんですか?」




「企業秘密です。でも望月さん、どんな相手にも崩さないの、すごいですね」



「いやいや、僕も人間なんで。実は、無になってる時間あります」



「……じゃあ、あの笑顔は?」



「防御です。ある意味、僕も塩です」



「へ~♡ 仲間ですねぇ♡」

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