異世界で手に入れた能力『自己犠牲』のせいで第二王子と愛の逃避行

miian

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番外編 神の存在とは?

神の存在とは? ムヒアスside

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 ようやくオークスに言われた場所へとたどり着いた。あのグルファン王国の騎士が用意した馬車は、大きな揺れとすごいスピードなことから恐らく超加速の実をいくつも食べさせたのだろう。現れたオークスに掴みかかる。

「ルアは?ルアはどこだ?!」
「あぁ、もうとっくの前に死んだよ」
「なっ……うぐぁ」

 ルアが死んだ?お腹の子は?ルアは生きてない?オークスの言葉で頭を真っ白にさせていると、オークスが剣を引き抜き、お腹に突き刺した。その痛みにめまいがし、お腹を手で押さえるも、血がドクドクと流れ出る。

「なっ……!おいっ!ムヒアス!」

 ここまで連れて来た私の心配をする少年を見た。名はトモヤと言っていた。こんな時にまで私の心配をするこの少年を不思議に思った。


ーー神はどうしてこの子をこちらの世界に呼んだのだろう?


 時折考える。小さい頃、苦しい生活から抜け出せますようにと願った。でも、いつまで経っても苦しかった。普通の家庭が分からなかった。母は私の意見など聞かず、神官に応募した。でも、そのおかげでルアに出会うことができた。ルアと付き合ううちに多くの幸せを知った。子供が出来たと聞いて神に感謝した。子供が生まれる楽しみもあったが、多くの不安もあった。自分には小さな頃から父親がおらず、ちゃんとした親になれるのか心配だったからだ。でも、いつもその不安をルアに伝えると、ルアは明るく励ましてくれた。子供は勝手に育つものよ、と。


ーー神はどうして私に神託を下ろしたのだろう?


 ルアは言った。タルラーク国は昔から神を信仰していて、そのせいで血が苦手だと言われていると。ルアが妊娠した時、出産の時の血は大丈夫なのか心配になった。それでルアが死んでしまっては嫌だから。

「子を産むときの血は大丈夫なのだろうか?」
「出産時の血は、不浄な血ではなく聖なる血だから大丈夫と言われてるわ。でも、私は普通に怖い。血が苦手なのもあるし、出産も無事に産めるか心配だわ」

 明るく朗らかなルアが珍しく気弱になってそう答えた。だから、ムヒアスは「必ず傍にいる」と言った。


ーーどうして神は私とルアを引き合わせたのだろう?


 国の危機が陥る時にその助けとなる召喚者を神官に告げる神。その神はこうなることを予測したのだろうか?

 血が嫌いなルアは連れ去られ、国を救うと言われた召喚者の少年は今、こうやって利用されようとしている。ルアと出会って愛を知ったはずの私はテヒシタを殺し、手蜂に汚れ、今はもう命の灯が消えかかっている。


ーー神の存在とは一体何なのだろう。


ーーもし本当に神がいるのならば、ルアとお腹の子をどうか……


 意識がどんどん消えてゆく。恐らく自分はもうすぐ死ぬのだろう。
 ルアに会いたかった。愛しい子供に会いたかった。
 彼女は出産の血に怯えていたのに。傍にいてあげれなくてごめん。

 ルア、ルア、愛してる。

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