異世界で手に入れた能力『自己犠牲』のせいで第二王子と愛の逃避行

miian

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番外編 宿屋の娘と王女

大切な人を護るためなら スキルside

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 アオフモア国の人々、皆が怯え、家にこもり、戦争の行く末を見守るしかなかった。今、特に激しい争いが起きているユグラシア国は、マルア国の支配下になるのも目前だった。ユグラシア国はアオフモア国の真下にあり、隣接している国だ。そして、嫌な噂も聞こえてきた。


ーーマルア国の王が、王族の娘か、精霊の加護を受けた者を寄越せと言っていると……


 その時、精霊のモルが何かを伝えようと慌てた様子でやって来た。その仕草からアビーに何かあったのだと分かり、城へと急いで向かった。アビーとはこの状況なので久しく会えていなかった。お城にいれば安全だと思っていたのに何かあったのだろうか?スキルはただの宿屋の娘だが、小さい頃から良く知っていた門番はすぐに開けてくれた。

「スキル様、今、外に出ては……」
「アビーは?アビーに何かあったの?!」

 昔からアビーの傍にいる執事のオフカが、スキルを出迎えた。その時、1人の騎士がやって来た。

「オフカ様、グルファン王国の騎士も救援してくれていますが、厳しい状況です……」

 慌ててやって来た騎士はそう言った。

「恐らくもうユグラシア国は滅ぶでしょう。そして、ユグラシア国を占領した後は、マルア国はアオフモア国へ信仰するかと思われます」
「ルゥ国もルクア国も救援に動いていますが、精霊たちが怯え、精霊の加護を受けている者たちの体調もすぐれず、ほとんどの人が伏せっている状況です。救援は遅れる見込みです。それにマルア国の戦力には到底……」
「それってアビーも?アビーももしかして……」
「……伏せっています」

 執事のオフカから答えを聞くよりも先にスキルもそう直感していた。小さい頃、精霊の力が強すぎて伏せっていたとアビーは言った。アビーのことは心配だが、今から自分が伝えることをアビーには聞いて欲しくなかったので、良かったのかもしれない。

「マルア国が王族の娘か、精霊の加護を持っている者を寄越すなら侵略はやめてやると聞きましたが、それは本当ですか?」

 執事のオフカと騎士は驚いた表情をした。そして、悩みながらも頷いた。アオフモア国に王族の娘は1人しかいない。アビーだ。もちろん行かせるつもりもない。それに、精霊の加護がある者がマルア国に嫁いだところで、その約束が守られるか分からない。

「私が……私が行きます。マルア国はきっとすぐにこの国へやってきます」
「スキル様!スキル様が行くなんて断じてなりません。いえスキル様だけでなく、我が国は誰も行かせるつもりは……」
「アビーはまだ年端も行かない少女よ?!行かせないわ!もし宿屋の娘で嫌だと言われたら、歌が上手で精霊を魅了する声と、精霊の加護がついているって言えばいいわ。それにもう1つの条件も私は満たしています」

 先ほど執事のオフカも騎士も何も言わなかったがマルア国の王はもう1つの条件を提示していた。ーー純潔であることーー私はその条件を満たしている。精霊の加護は私にはついていないが、マルア国の人間に精霊が見えるとは思わない。その時、もう1人違う騎士が慌てた様子でやって来た。

「大変です!もうマルア国の傭兵たちが目前に迫ってきています!」
「私が行きます。すぐに連れて行って」
「ですが……」
「いいんです。例え、約束が守られなくても時間稼ぎにはなるでしょう?」

 ルゥ国もルクア国も戦うことには不向きだ。だから、一番期待できるのはグルファン王国が助けに来てくれるのを待てばいい。私が行って、この国を護れるのなら十分だし、約束が守られずこの国を侵攻しようとすればグルファン王国は動いてくれるだろう。

 こうしてスキルはマルア国の傭兵の元へと自分の意志で向かうことにした。
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