74 / 80
第三章 愛の逃避行
手に入れた石
しおりを挟む
「そうそう、それでじゃ、おぬしたちはきっとこの石も必要なのじゃ。欲しいか?欲しいじゃろう?」
なんか腹立つな……。なんなんだこいつは。ちょっとラウリアを思い出したぞ。
「欲しいならくれてやっても良いぞ?」
「……欲しいです」
「ふぉっふぉっふぉ、くれてやろう。ただしおぬしの髪をひと房くれぬか?」
「「…………」」
「断じて変なことには使わぬと誓おう。精霊の加護があった者の髪が必要なのだ」
「分かりました。私の髪で良ければあげましょう」
「おい、トルデンッ!」
「トモヤ、別にいいんです。あ、でも私には……」
「ふぉふぉふぉ、言わんでも分かっておる。大丈夫じゃ。ふむ、それによく見たら微かに残っておるぞ」
2人の会話が何か分からないがトルデンはスっと剣で髪を切ると、アルトロに渡した。占いに必要だと言い訳しながら、トルデンの髪をもらうと臭いを嗅いだりしていて2人でドンびきになった。
「ゴホンゴホン、ほれ、これをやろう」
トルデンがその石を受け取るのを見た後、すぐにオレはここから出ようと言ってトルデンとオクアル国を後にした。別にいいと言っているのにアルトロは見送りについて来てぺちゃくちゃと喋っている。「泊まって行かれればワシが占いをしてみせますのに」とか「触ると運気が上がる壺がある」とかずっと喋ってて胡散臭さを最後の最後まで醸し出していた。ようやく門のところまでたどり着いて別れの挨拶をした時もずっと喋ってたけど、国の外へは一歩も出なかった。最後の別れの言葉は「ワシが外に出ると碌なことがないのでな」で、オレたちに対する言葉は特になかった。
「なんだか疲れましたね」
「あぁ、疲れた……」
精神的疲労が凄くて2人でどっと疲れていたら何故か笑いが込み上げてきた。疲れた理由が胡散臭いおっさんに絡まれてたって言うのが面白くて2人で笑い合った。
「結局あれはなんだったんだ?」
もうすっかり夜も更けていて、輝く満月が道を照らしていた。オレの問いかけにトルデンがポケットを探り、取り出すとその石は光り輝き始めた。それは月の光を集めるかのように白く輝き神秘的な空間を作り出した。それは綺麗で目を奪われる光景だった。
「……祈りの魔法石です。月の明かりを集めることが出来るみたいです」
その時、ぴらっとトルデンのポケットから紙が一枚滑り落ちた。オレがそれを拾うと月明りに照らされ、紙に書かれた文字をはっきりと読むことが出来た。
『大評判占星術師アルトロ様直筆サイン』
「「…………」」
このまま捨ててしまおうか……。オレが破ろうとしたら、トルデンが引き留めた。あんな奴の為に優しいな、なんて思っていたら「森にゴミを捨ててはいけません」と言った。たまに冷徹なことを言うんだよな、トルデンって。2人で笑い、綺麗に輝く祈りの魔法石を眺めながら眠りについた。
なんか腹立つな……。なんなんだこいつは。ちょっとラウリアを思い出したぞ。
「欲しいならくれてやっても良いぞ?」
「……欲しいです」
「ふぉっふぉっふぉ、くれてやろう。ただしおぬしの髪をひと房くれぬか?」
「「…………」」
「断じて変なことには使わぬと誓おう。精霊の加護があった者の髪が必要なのだ」
「分かりました。私の髪で良ければあげましょう」
「おい、トルデンッ!」
「トモヤ、別にいいんです。あ、でも私には……」
「ふぉふぉふぉ、言わんでも分かっておる。大丈夫じゃ。ふむ、それによく見たら微かに残っておるぞ」
2人の会話が何か分からないがトルデンはスっと剣で髪を切ると、アルトロに渡した。占いに必要だと言い訳しながら、トルデンの髪をもらうと臭いを嗅いだりしていて2人でドンびきになった。
「ゴホンゴホン、ほれ、これをやろう」
トルデンがその石を受け取るのを見た後、すぐにオレはここから出ようと言ってトルデンとオクアル国を後にした。別にいいと言っているのにアルトロは見送りについて来てぺちゃくちゃと喋っている。「泊まって行かれればワシが占いをしてみせますのに」とか「触ると運気が上がる壺がある」とかずっと喋ってて胡散臭さを最後の最後まで醸し出していた。ようやく門のところまでたどり着いて別れの挨拶をした時もずっと喋ってたけど、国の外へは一歩も出なかった。最後の別れの言葉は「ワシが外に出ると碌なことがないのでな」で、オレたちに対する言葉は特になかった。
「なんだか疲れましたね」
「あぁ、疲れた……」
精神的疲労が凄くて2人でどっと疲れていたら何故か笑いが込み上げてきた。疲れた理由が胡散臭いおっさんに絡まれてたって言うのが面白くて2人で笑い合った。
「結局あれはなんだったんだ?」
もうすっかり夜も更けていて、輝く満月が道を照らしていた。オレの問いかけにトルデンがポケットを探り、取り出すとその石は光り輝き始めた。それは月の光を集めるかのように白く輝き神秘的な空間を作り出した。それは綺麗で目を奪われる光景だった。
「……祈りの魔法石です。月の明かりを集めることが出来るみたいです」
その時、ぴらっとトルデンのポケットから紙が一枚滑り落ちた。オレがそれを拾うと月明りに照らされ、紙に書かれた文字をはっきりと読むことが出来た。
『大評判占星術師アルトロ様直筆サイン』
「「…………」」
このまま捨ててしまおうか……。オレが破ろうとしたら、トルデンが引き留めた。あんな奴の為に優しいな、なんて思っていたら「森にゴミを捨ててはいけません」と言った。たまに冷徹なことを言うんだよな、トルデンって。2人で笑い、綺麗に輝く祈りの魔法石を眺めながら眠りについた。
13
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【完結】ホットココアと笑顔と……異世界転移?
甘塩ます☆
BL
裏社会で生きている本条翠の安らげる場所は路地裏の喫茶店、そこのホットココアと店主の笑顔だった。
だが店主には裏の顔が有り、実は異世界の元魔王だった。
魔王を追いかけて来た勇者に巻き込まれる形で異世界へと飛ばされてしまった翠は魔王と一緒に暮らすことになる。
みたいな話し。
孤独な魔王×孤独な人間
サブCPに人間の王×吸血鬼の従者
11/18.完結しました。
今後、番外編等考えてみようと思います。
こんな話が読みたい等有りましたら参考までに教えて頂けると嬉しいです(*´ω`*)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる