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yoyo

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   今日は定時で上がれて、いつもの地下鉄のホームはやや混雑いていた。でもそんな事は気にならないくらい、早く帰れることに孤坂十季こさかときはウキウキしていた。最近の晩飯は、一緒に住んでいる大倉碧おおくらあおいに任せてしまったり、弁当や外食になる事も多かったから、久しぶりにご飯は何にしようかと地下鉄が来るまで考えていた。

「なんでもっと早く言わないの!!」

   女の人の金切り声が聞こえ、声の方へ顔を向けると3、4歳くらいの男の子に、母親らしき人がヒステリックに大声を上げている。俯く男の子の足元には、水たまりが出来ており、トイレに間に合わなかったことが推測された。
   十季は息苦しくなりながらも、その男の子から目が離せなくなるが、地下鉄が来たタイミングで磁石で引かれるように現実に引き戻された。だけど、先ほどまでのウキウキ感はすっかり姿を消して、あの金切り声がまだ聞こえてくるような、ザラッとした感覚に襲われる。買い物に寄ったスーパーでも気持ちは晴れなくて、ご飯を作る気は消え失せ、お惣菜だけ買って家路に着いた。



「あれ?今日はご飯気合い入ってたんじゃないの?」

   食卓に並べたお惣菜の餃子を見て、碧が不思議そうに声を出す。会社を出た直後、ご飯は任せとけ的なメールを送っていたのだ。

「あーいや……何かこの餃子めっちゃ美味しそうに見えちゃって、つい……わるい、明日はちゃんと作る」
「いや、別に、ボクも餃子好きだし、全然これでオッケーだよ。ご飯も手作りにこだわってる訳じゃないし、お互い負担が無ければそれでいいじゃん」

   確かにご飯当番を決めてる訳ではなくて、お互い食べたいものを作ったり買ったり、食べに行ったりしていた。ただ、出来るだけご飯は一緒に食べようということだけ共通認識がある。今日はご飯を食べて、一緒に映画見る時間もあるかなーなんて考えていたのに、モヤッとし膜に包まれたまま気分は優れなかった。
   何度か碧には「調子悪いの?」と聞かれたけど、別に具合が悪い訳ではなかったし、実際自分自身でもよくわからなくて、何て言っていいかもわからなかったから「大丈夫」と言葉を濁した。
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