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第3話
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話題のカフェは大人気だったが、ハロルドが予約してくれていたお陰で、眺めの良いテラス席へと案内された。
「凄い!素敵!!ねぇ、ねぇ、ハロルド様、見て見て!」
と誰よりもはしゃいで、ハロルドの腕を引っ張っているのは、私……ではなくナタリーだ。
ハロルドもそんなナタリーを諌めるでもなく、
「本当だ。綺麗だね」
と何故か横に並んでいるナタリーを見てそう言った。………婚約者は私の筈なのに、私は何故か二人の背中を見守る様な格好だ。お陰で綺麗な景色すら見えやしない。
綺麗なのは景色?……それともナタリー?
ナタリーは少し小柄で綺麗なブロンドにピンク色の瞳の可愛らしい容姿をしている。私はややくすんだブロンドに鳶色の瞳、そして女性にしてはやや高い背丈。別に卑下するわけではないけれど、ナタリーの容姿を羨ましく思う事は多々あった。
「ねぇ、二人共席に座らない?」
私はなるべくイライラした気持ちを表に出さない様に心掛けて二人へ声を掛ける。二人は振り返ると、
「あぁ……そうだな。ナタリー座ろうか」
とハロルドはナタリーをエスコートして椅子に座らせた。
二人は話が合うのか、とても楽しそうに会話をしているが……私はまるで蚊帳の外。
そんな私に申し訳なく思ったのか、ハロルドが急に、
「ジュードはまだ見つからないんだろう?」
と尋ねてきた。
「ええ。置き手紙には『領主なんて嫌だ!俺は旅に出る』と書いてあったけど、それからは全くの音信不通。兄が居なくなってもうそろそろ三ヶ月になるわ」
と私はため息混じりに答えた。
するとナタリーが、
「ねぇ、お姉様。結婚、延期したら?」
とサラリと言った。……実は私も少しだけ考えた事があるのだ。父の体調も思わしくない。次期当主である兄のジュードは行方知れず。執事や、ハモン、母、それと私でなんとか父の代わりを果たしてはいるが、今、お祝い事など……という気持ちも大きい。それに、私は結婚してら家を出る身。母に頼られている自覚があるからこそ、私も悩んだ。しかし……
「……それは困るよ。もう僕は二十歳なんだ。うちの家には仕来りがあって、次期当主は二十歳の内に結婚しなければならない」
そう……これが原因で、私は約半年後に迫った学園の卒業と同時に結婚が義務付けられていた。
なので、延期など言い出せる筈もなく、クヨクヨと悩んだ夜もあったのだ。しかし、そんな私を見て、母は『きっとそれまでにお父様も良くなるし、ジュードだって帰って来るわ。貴女は心配しないで、ハロルド様に飛び込めば良いのよ?』と言って、私の背中を押してくれたのだ。
しかしナタリーは、
「え~、でもお姉様が居なくなってしまったら、うちはどうなるの?お母様だってお姉様に頼りきりじゃない」
と口を尖らせた。
自分が私の代わりに母を支えようとは全く思っていない妹に呆れてしまう。
「ナタリー……貴女、少しは家の事を手伝ったらどう?今はアーサーも領地に居て、ただでさえ忙しいのに……」
と私が眉を潜めると、
「…私はお姉様みたいに優秀じゃないもの。学園の課題で精一杯だし、お父様のお仕事の内容なんてチンプンカンプンなのよ?どうやって手伝えと言うの?」
と怒った様に反論するナタリーにイライラする。
私も思わず、
「私だって最初から出来たわけではないわ。一生懸命学んでいるの。お父様のお仕事の手伝いをしろとは言わないから、少しはお父様のお世話を……」
とつい強い口調になってしまうのを抑えられない。
すると、ナタリーは目に涙を浮かべて
「お姉様には、私の気持ちなんてわからないのよ……」
と唇を噛んだ。
ナタリーの気持ちって何?家族で支え合おうと言う私が間違っているの?
私がナタリーの様子に困惑していると、
「まぁ、まぁ。二人共落ち着いて。折角の景色と料理が台無しじゃないか。エリン、君は優秀だからか、少し人の気持ちが理解出来ていない時があるよ。お姉さんなんだから、あまり妹に辛く当たるなよ」
とハロルドが間に割って入って……ナタリーの涙を優しくハンカチで拭いた。
そのハンカチは……私が刺繍してプレゼントした物だったのだが、それを見た私は何故かとても惨めな気分になったのだった。
「凄い!素敵!!ねぇ、ねぇ、ハロルド様、見て見て!」
と誰よりもはしゃいで、ハロルドの腕を引っ張っているのは、私……ではなくナタリーだ。
ハロルドもそんなナタリーを諌めるでもなく、
「本当だ。綺麗だね」
と何故か横に並んでいるナタリーを見てそう言った。………婚約者は私の筈なのに、私は何故か二人の背中を見守る様な格好だ。お陰で綺麗な景色すら見えやしない。
綺麗なのは景色?……それともナタリー?
ナタリーは少し小柄で綺麗なブロンドにピンク色の瞳の可愛らしい容姿をしている。私はややくすんだブロンドに鳶色の瞳、そして女性にしてはやや高い背丈。別に卑下するわけではないけれど、ナタリーの容姿を羨ましく思う事は多々あった。
「ねぇ、二人共席に座らない?」
私はなるべくイライラした気持ちを表に出さない様に心掛けて二人へ声を掛ける。二人は振り返ると、
「あぁ……そうだな。ナタリー座ろうか」
とハロルドはナタリーをエスコートして椅子に座らせた。
二人は話が合うのか、とても楽しそうに会話をしているが……私はまるで蚊帳の外。
そんな私に申し訳なく思ったのか、ハロルドが急に、
「ジュードはまだ見つからないんだろう?」
と尋ねてきた。
「ええ。置き手紙には『領主なんて嫌だ!俺は旅に出る』と書いてあったけど、それからは全くの音信不通。兄が居なくなってもうそろそろ三ヶ月になるわ」
と私はため息混じりに答えた。
するとナタリーが、
「ねぇ、お姉様。結婚、延期したら?」
とサラリと言った。……実は私も少しだけ考えた事があるのだ。父の体調も思わしくない。次期当主である兄のジュードは行方知れず。執事や、ハモン、母、それと私でなんとか父の代わりを果たしてはいるが、今、お祝い事など……という気持ちも大きい。それに、私は結婚してら家を出る身。母に頼られている自覚があるからこそ、私も悩んだ。しかし……
「……それは困るよ。もう僕は二十歳なんだ。うちの家には仕来りがあって、次期当主は二十歳の内に結婚しなければならない」
そう……これが原因で、私は約半年後に迫った学園の卒業と同時に結婚が義務付けられていた。
なので、延期など言い出せる筈もなく、クヨクヨと悩んだ夜もあったのだ。しかし、そんな私を見て、母は『きっとそれまでにお父様も良くなるし、ジュードだって帰って来るわ。貴女は心配しないで、ハロルド様に飛び込めば良いのよ?』と言って、私の背中を押してくれたのだ。
しかしナタリーは、
「え~、でもお姉様が居なくなってしまったら、うちはどうなるの?お母様だってお姉様に頼りきりじゃない」
と口を尖らせた。
自分が私の代わりに母を支えようとは全く思っていない妹に呆れてしまう。
「ナタリー……貴女、少しは家の事を手伝ったらどう?今はアーサーも領地に居て、ただでさえ忙しいのに……」
と私が眉を潜めると、
「…私はお姉様みたいに優秀じゃないもの。学園の課題で精一杯だし、お父様のお仕事の内容なんてチンプンカンプンなのよ?どうやって手伝えと言うの?」
と怒った様に反論するナタリーにイライラする。
私も思わず、
「私だって最初から出来たわけではないわ。一生懸命学んでいるの。お父様のお仕事の手伝いをしろとは言わないから、少しはお父様のお世話を……」
とつい強い口調になってしまうのを抑えられない。
すると、ナタリーは目に涙を浮かべて
「お姉様には、私の気持ちなんてわからないのよ……」
と唇を噛んだ。
ナタリーの気持ちって何?家族で支え合おうと言う私が間違っているの?
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「まぁ、まぁ。二人共落ち着いて。折角の景色と料理が台無しじゃないか。エリン、君は優秀だからか、少し人の気持ちが理解出来ていない時があるよ。お姉さんなんだから、あまり妹に辛く当たるなよ」
とハロルドが間に割って入って……ナタリーの涙を優しくハンカチで拭いた。
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