婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第22話

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「どうしたの?」
アーサーと揉めて(?)いるのはレナード様だった。

「あ!お嬢様!クレイグ辺境伯ご子息様が此処には泊まらず、他の宿を探すと」
とアーサーが私に報告する様に話すと、

「……レナードで良い」
とポツリと彼は呟いた。

「レナード様、何かこちらに不手際が御座いましたでしょうか?」
私が尋ねると、

「…理性がたない……ゴホン!いやいや、迷惑をかけたくない」
何故かレナード様は咳込みながらそう言った。

「迷惑だなんて、そんな。兄が大変お世話になったお礼もまだですのに……」

「礼など必要ない」

「いえ。準備が不十分で満足なおもてなしは出来ないかもしれませんが、湯と温かな食事ぐらいは。せめて今晩だけ。疲れた体をお休めになって下さい……それに……」

「それに?」

「栞のお礼もまだです」
と私が微笑めば、レナード様は顔を真っ赤にして俯いた。




「お兄様……今後はどうするつもり?」
食事が終わり、湯浴みを済ませた兄の部屋を訪れた私が尋ねる。兄は一人で湯浴みをするのが難しいらしく、使用人に手伝って貰っていた。想像以上に足の怪我は重そうだ。

「僕の我が儘が許されるとは思っていない。でも……僕がここを支えていくよ。一応領主となるべく勉強はしてきたんだ。反発心があったとしても、やるべきことはやっていたつもりだ。父上の代わりに仕事をするよ」

「……お父様に会いに行った?」

「あぁ、母上が湯浴みしている隙にな。随分と痩せた」

「栄養を血管に流していても、食べ物をとっていないもの。お父様が倒れてからもう半年以上よ?……お医者様にも何度か覚悟した方が良いと言われたわ。お母様もそれで参ってしまっているの」
と私が顔を伏せると、

「本当に……すまなかった!」
と兄は椅子に腰掛けたまま深々と頭を下げた。

「私に謝っても……。でもね、お兄様が原因でたくさんの人に迷惑を掛けた事は忘れないで。マリアベル様だって……」

「アーサーに聞いた。賠償金も支払ったと。……僕は本当に馬鹿だ。自分の事しか考えていなかった」

いくら後悔しても、もう遅い。だが兄を責めた所で、事態が好転するわけではない。
せめて、母の負担を減らしてくれるのを期待するしかない。


兄の部屋を後にした私は、母の部屋へと向かう途中、薄暗くなった庭に人の気配を感じて、窓の側へと近寄った。

「……レナード様……?」
目を凝らして見ると、庭に居るのはレナード様だった。
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