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第26話
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「お母様、どういう事なの?」
兄と共に執務室に居た母へと問い質す。
私が帰宅すると、既にレナード様は領地へと戻られた後だった。
母と兄との間にはまだ少し蟠りがある様に見えるが、兄はここを継ぐ決心をして戻って来たのだから、これからはしっかりと務めて貰いたい。
私の声に母と兄は同時に顔を上げた。
「エリンおかえりなさい。卒業おめでとう。……ところで、どういう事って何が?」
と首を傾げる母に、
「レナード様との結婚式よ。一週間後って……」
「あぁ……それね。私も難しいのではないかと伝えたのだけど『大丈夫』の一点張りで」
と母が言えば、隣で兄も、
「だから、今、僕が母上の代わりに仕事出来る様に急いで申し送りを受けている所だ」
とまた書類に目を落としながら答えた。
「……という事は……」
「貴女と一緒に、私もクレイグ領へ向かうのよ。大切な娘の結婚式ですもの。お父様の分までお祝いしなくてはね」
と母は微笑んだ。正直、参列者の事などすっかり頭から抜け落ちていたが、母に来て貰えるとわかって、とても嬉しい。
「ジュード、もしわからない事があれば、アーサーに訊いて。結婚式が終われば直ぐに戻るけど、それでも一週間は留守にするわ」
そう聞いて私は父の事が心配になった。
「でも……お父様が……」
母が不在の間に父に何かあったらどうしよう……そう思うが口に出すのは憚られる。その気配を察した母は、
「初めての土地に嫁ぐ娘を一人になんてさせるものですか。それにね……貴女に嬉しいお知らせがあるの」
そう母が言ったタイミングで、執務室をノックする音が聞こえた。
「バーバラです。お呼びだとお聞きしたので」
私の侍女であるバーバラの声だ。
「バーバラ入って。貴女に話があるの」
母の声に、バーバラは一礼して部屋へと入って来た。
母は、
「バーバラ、エリンは明後日ここを発ってクレイグ伯爵領へと向かいます。その準備をしてちょうだい。それと……貴女も自分の持ち物を整理して。クレイグ伯爵領は冬には雪が降るそうよ。バーバラ、貴女も厚手のコートを買うと良いわ」
そうバーバラに告げる。
「……奥様……それは……」「お母様……それって?」
「貴女もクレイグ領へ行くのよ。エリンと共に。ずっとエリンを貴女に任せてきたわ。バーバラが一緒ならエリンも心強いでしょう」
「え?では、私もお嬢様と一緒に行けるのですか?」
「お母様、レナード様が許可を?」
私とバーバラが同時に母へと質問する。
「フフフ。一度に二人の質問には答えられないわ。この提案はレナード様からの申し出よ『慣れない土地では心細いだろうから、侍女がいるのなら是非一緒に……と」
私は母のその言葉を聞いて、思わずバーバラに抱きついた。
「バーバラ、私と一緒にクレイグ領へ来てくれる?」
「もちろんでございます。私はお嬢様がいらっしゃる所なら、何処まででもお供いたします」
パトリック伯爵家には侍女を連れて行く事は断られていたから、すっかり諦めていた。バーバラが一緒なら、こんなに心強い事はない。
抱き合う私達に、
「今言った様に、ここを発つのは明後日。これは何とかレナード様に譲歩して頂いたの。それなら、式の前日までにはクレイグ領へ到着出来るはずよ。そのかわり、時間は明後日まで……いえ準備する時間は今日と明日しか残されていないの。そうと決まれば、さっさと準備に取り掛かってちょうだい」
と言う母に、バーバラは
「畏まりました。直ぐに」
と言って執務室を退出した。
兄と共に執務室に居た母へと問い質す。
私が帰宅すると、既にレナード様は領地へと戻られた後だった。
母と兄との間にはまだ少し蟠りがある様に見えるが、兄はここを継ぐ決心をして戻って来たのだから、これからはしっかりと務めて貰いたい。
私の声に母と兄は同時に顔を上げた。
「エリンおかえりなさい。卒業おめでとう。……ところで、どういう事って何が?」
と首を傾げる母に、
「レナード様との結婚式よ。一週間後って……」
「あぁ……それね。私も難しいのではないかと伝えたのだけど『大丈夫』の一点張りで」
と母が言えば、隣で兄も、
「だから、今、僕が母上の代わりに仕事出来る様に急いで申し送りを受けている所だ」
とまた書類に目を落としながら答えた。
「……という事は……」
「貴女と一緒に、私もクレイグ領へ向かうのよ。大切な娘の結婚式ですもの。お父様の分までお祝いしなくてはね」
と母は微笑んだ。正直、参列者の事などすっかり頭から抜け落ちていたが、母に来て貰えるとわかって、とても嬉しい。
「ジュード、もしわからない事があれば、アーサーに訊いて。結婚式が終われば直ぐに戻るけど、それでも一週間は留守にするわ」
そう聞いて私は父の事が心配になった。
「でも……お父様が……」
母が不在の間に父に何かあったらどうしよう……そう思うが口に出すのは憚られる。その気配を察した母は、
「初めての土地に嫁ぐ娘を一人になんてさせるものですか。それにね……貴女に嬉しいお知らせがあるの」
そう母が言ったタイミングで、執務室をノックする音が聞こえた。
「バーバラです。お呼びだとお聞きしたので」
私の侍女であるバーバラの声だ。
「バーバラ入って。貴女に話があるの」
母の声に、バーバラは一礼して部屋へと入って来た。
母は、
「バーバラ、エリンは明後日ここを発ってクレイグ伯爵領へと向かいます。その準備をしてちょうだい。それと……貴女も自分の持ち物を整理して。クレイグ伯爵領は冬には雪が降るそうよ。バーバラ、貴女も厚手のコートを買うと良いわ」
そうバーバラに告げる。
「……奥様……それは……」「お母様……それって?」
「貴女もクレイグ領へ行くのよ。エリンと共に。ずっとエリンを貴女に任せてきたわ。バーバラが一緒ならエリンも心強いでしょう」
「え?では、私もお嬢様と一緒に行けるのですか?」
「お母様、レナード様が許可を?」
私とバーバラが同時に母へと質問する。
「フフフ。一度に二人の質問には答えられないわ。この提案はレナード様からの申し出よ『慣れない土地では心細いだろうから、侍女がいるのなら是非一緒に……と」
私は母のその言葉を聞いて、思わずバーバラに抱きついた。
「バーバラ、私と一緒にクレイグ領へ来てくれる?」
「もちろんでございます。私はお嬢様がいらっしゃる所なら、何処まででもお供いたします」
パトリック伯爵家には侍女を連れて行く事は断られていたから、すっかり諦めていた。バーバラが一緒なら、こんなに心強い事はない。
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「今言った様に、ここを発つのは明後日。これは何とかレナード様に譲歩して頂いたの。それなら、式の前日までにはクレイグ領へ到着出来るはずよ。そのかわり、時間は明後日まで……いえ準備する時間は今日と明日しか残されていないの。そうと決まれば、さっさと準備に取り掛かってちょうだい」
と言う母に、バーバラは
「畏まりました。直ぐに」
と言って執務室を退出した。
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