婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第27話

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急な話に驚きっぱなしだが、何とか身の回りの物を整理し、クレイグ領へと向かう為の準備が出来た。
レナード様の為人を尋ねようと兄の元を訪れても、兄は兄で書類に掛り切りで忙しそうだ。

正直、あの栞はレナード様の手作りではなかったのでは?と考えていた。だってあの大きな手で……あんな小さな花を綺麗な栞にするなど至難の業の様に思えていたからだ。
あの体躯では騎士を続けた方が良さそうに思う。子爵を継ぐのが少し勿体なく感じた。


「お嬢様、何とか準備出来ましたね」

「バーバラ手伝ってくれてありがとう。でも、バーバラと一緒に嫁げるなんて、本当に嬉しいわ」

「私もです。辺境に行ってしまえば、そうそう会う事は叶わないと諦めておりました。レナード様のお心遣いに感謝しかありません」

「急に結婚式を一週間後に……って言われた時には驚いたけど、お兄様も戻って来たし、私としては卒業後無駄にここで我が物顔で過ごすより良かったと、今になるとそう思うわ。ナタリーに『ごめんなさいね、お姉様より先に結婚して』なーんて言われて過ごすのは居心地が悪かったと思うし」
私の少し自嘲気味な言葉にバーバラは少し眉を下げて、

「お嬢様……出来ればお嬢様の本心をお聞かせ願いたいのですが……ジュード様が戻った今、ハロルド様の言っていた状況が変化してしまいました。今ならお嬢様がパトリック伯爵家に嫁げない理由はありません……本当によろ」

「私がハロルドとの婚約を解消されたのはそんな理由じゃないわ。あれはハロルドの心変わり……いえ、最初から私の事を愛していたわけではないだろうから、心変わりと言うのも変な話ね。
ハロルドはナタリーが好きだった。そこに丁度良い理由が見つかったってだけの事よ。それに……私もハロルドを愛していたわけじゃなかったと、最近気付いたの。もちろん婚約者として好意は持っていたし、好きだったと思うわ。でも私が一番悲しかったのは、ハロルドがナタリーを選んだ事よ。心の狭い姉だと呆れられるかもしれないけど、赤の他人を好きになったって言われた方がマシだったと思うの。私って凄くナタリーへコンプレックスがあったのね、それは認めるわ」

『よろしいのですか?』と続きそうなバーバラの言葉を私は遮った。
私の言葉にバーバラは、

「一定数、ああいった女性を好きな殿方はおられますしね。……仕える家のご息女に対しては不敬だと思いますけど、私から見れば『見る目がないな』としか思えません」
とケロッと言った。
本当なら咎める立場なのだろうけど、私はバーバラのこういう所が大好きだ。

私とバーバラは一緒になって笑った。
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