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第30話
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「遠路遥々、ようこそおいで下さいました」
頭を下げた初老の男性に、私と母は挨拶をした。彼の名前はセフィロス。ここクレイグ辺境伯の執事だと言う。白髪混じり髪をピシッと撫でつけて、背筋をピンと張った姿はとても若々しく見えた。
「お初にお目にかかります。エリン・ストーンです」
母と共に挨拶を済ませると、私は早速部屋へと案内された。
「こちらは今後エリン様にお使いになっていただく、お部屋となっております。隣は夫婦の寝室、その向こうが……」
と言うセフィロスの説明に私は待ったをかける。
「えっと……ここはクレイグ辺境伯様のお屋敷と認識しているのですが、私はここに暮らすのですか?」
私は戸惑いながらセフィロスへと質問する。
私が嫁ぐのはクラーク子爵となるレナード様だ。それなのに、このお屋敷で暮らすのかしら?
クラーク子爵領はここクレイグ辺境伯領に隣接していると聞いていた。近いからと言って同居……?
すると、私の質問にセフィロスは不思議そうに眉を顰めると、
「えぇ……。もちろんで御座います。このお屋敷がエリン様のお住いになります故」
と答えた。
あれ……?私が恐る恐る、
「あの……私はクラーク子爵領にお屋敷があるものだとばかり……。勘違いをしてしまったのかしら?」
と尋ねる。同居……は流石に少し息苦しい。
「クラーク子爵領にももちろん屋敷は御座いますが……そこにエリン様のお部屋は御座いませんよ?」
……もしや、別居?私はここで暮らして、レナード様は子爵領で暮らすのかしら?
私は理由がわからず首を傾げた。
見かねた母が、
「レナード様はどちらでお暮らしに……?」
と尋ねる。母も私と同じ疑問を持ったようだ。
「レナード様はこのお部屋の……夫婦の寝室を挟んだ向こう側に決まっております」
セフィロスは至極当然といった風に、そう答えた。
困惑する。どういう事だ?
そうこうしていると、少し息を弾ませたレナード様が私達の前に現れた……と同時に顔を赤くして俯いた。……走ってきたから苦しいのかしら?
「こんばんはレナード様。遅くなって申し訳ありません」
私が腰を落としながら挨拶すると、
「よく来た。少しゆっくりすると良い」
レナード様はそう言うと、
「セフィロス。夕食は少し時間を下げろ」
と執事に命令した。セフィロスは「畏まりました」
と頭を下げて、
「侍女の方はおられる様ですが、何かありましたら遠慮なくそこのベルを鳴らして下さい。直ぐにメイドが駆けつけます。では、伯爵夫人。客間へと案内いたします」
と母を先導する形で部屋を去っていく。母は、
「じ、じゃあ……エリンまた後でね」
と少し戸惑いながら、セフィロスの背中を追いかけた。
私はレナード様と共に取り残される。もちろんバーバラも居るけど。
レナード様は目を合わさずに、
「また夕食に声を掛ける」
と言って彼もまた去っていった。私はバーバラと顔を見合わせて、
「どういう事かしら?」
と疑問を感じずにはいられなかった。
頭を下げた初老の男性に、私と母は挨拶をした。彼の名前はセフィロス。ここクレイグ辺境伯の執事だと言う。白髪混じり髪をピシッと撫でつけて、背筋をピンと張った姿はとても若々しく見えた。
「お初にお目にかかります。エリン・ストーンです」
母と共に挨拶を済ませると、私は早速部屋へと案内された。
「こちらは今後エリン様にお使いになっていただく、お部屋となっております。隣は夫婦の寝室、その向こうが……」
と言うセフィロスの説明に私は待ったをかける。
「えっと……ここはクレイグ辺境伯様のお屋敷と認識しているのですが、私はここに暮らすのですか?」
私は戸惑いながらセフィロスへと質問する。
私が嫁ぐのはクラーク子爵となるレナード様だ。それなのに、このお屋敷で暮らすのかしら?
クラーク子爵領はここクレイグ辺境伯領に隣接していると聞いていた。近いからと言って同居……?
すると、私の質問にセフィロスは不思議そうに眉を顰めると、
「えぇ……。もちろんで御座います。このお屋敷がエリン様のお住いになります故」
と答えた。
あれ……?私が恐る恐る、
「あの……私はクラーク子爵領にお屋敷があるものだとばかり……。勘違いをしてしまったのかしら?」
と尋ねる。同居……は流石に少し息苦しい。
「クラーク子爵領にももちろん屋敷は御座いますが……そこにエリン様のお部屋は御座いませんよ?」
……もしや、別居?私はここで暮らして、レナード様は子爵領で暮らすのかしら?
私は理由がわからず首を傾げた。
見かねた母が、
「レナード様はどちらでお暮らしに……?」
と尋ねる。母も私と同じ疑問を持ったようだ。
「レナード様はこのお部屋の……夫婦の寝室を挟んだ向こう側に決まっております」
セフィロスは至極当然といった風に、そう答えた。
困惑する。どういう事だ?
そうこうしていると、少し息を弾ませたレナード様が私達の前に現れた……と同時に顔を赤くして俯いた。……走ってきたから苦しいのかしら?
「こんばんはレナード様。遅くなって申し訳ありません」
私が腰を落としながら挨拶すると、
「よく来た。少しゆっくりすると良い」
レナード様はそう言うと、
「セフィロス。夕食は少し時間を下げろ」
と執事に命令した。セフィロスは「畏まりました」
と頭を下げて、
「侍女の方はおられる様ですが、何かありましたら遠慮なくそこのベルを鳴らして下さい。直ぐにメイドが駆けつけます。では、伯爵夫人。客間へと案内いたします」
と母を先導する形で部屋を去っていく。母は、
「じ、じゃあ……エリンまた後でね」
と少し戸惑いながら、セフィロスの背中を追いかけた。
私はレナード様と共に取り残される。もちろんバーバラも居るけど。
レナード様は目を合わさずに、
「また夕食に声を掛ける」
と言って彼もまた去っていった。私はバーバラと顔を見合わせて、
「どういう事かしら?」
と疑問を感じずにはいられなかった。
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