婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?

初瀬 叶

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第40話

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「だが、君からの言葉はどれも嬉しくて……俺は君からの手紙が楽しみになった」

「それは私も同じです。それに、いつも可愛らしい栞も……」

「気に入ってくれたか?」

「もちろんです!たくさん頂きましたので、本のイメージに合うお花の栞を選んで使い分けております」
私がそう言うと、レナード様は口の端を上げた。喜んでくれているようだ。

「それは良かった……。うん。……まぁそれでだな、俺は結婚までに君と仲良くなろうと……俺もそう考えるようになったんだ。時間はたっぷりある。こんな俺でも何とか出来るだろうか……と」
こんな俺とは?私が首を傾げると、

「さっきも言った様に、君との婚約が決まる前に数人の令嬢に会った時、『つまらない』『顔が怖い』『何を考えているのかわからない』と散々言われてきたのでな」
と少しだけ肩を竦めた。

「レナード様もとてもまめにお返事を下さいました。嬉しかったです。仲良くなるには……少し時間が足りなかったのかもしれませんが」
と私が微笑めば、

「そ、それは……心配だったから」
とレナード様は俯いた。心配とは?レナード様はは続けて、

「ジュードがまさか君の兄とは知らず。奴の正体を知った時には本当に驚いた。……ある意味運命……」
と少し顔を赤らめた。

「確かに私も驚きましたわ。まさか兄が騎士になろうとしていたなんて。しかも辺境伯様の所で」

「ジュードは後悔していた。父君の話を……そして君の話を聞いて。全て自分のせいだと。だから連れ帰った。俺に出来ることはあれぐらいだ。後は家族の問題。俺には手が出せない」

「しかし……今更ですが、何故結婚を急がれたのです?確かに兄が戻って来てくれた事で、私が母や執事の手伝いをしなければならないと言う事はなくなりましたけど……」
私がそう質問すると、レナード様は唇を少し噛みしめる様にした。言いたくないのかしら?

少し間をおいて一つ大きく息を吐くと、レナード様は、
「……理由を聞いても笑わないか?」

「もちろんです。笑わないと誓います」

「君が前の婚約者と…………ヨリを戻してしまうかもしれないと思ったら……シンパイデヨルモネムレナカッタ」
最後の一言は早口過ぎてよく聞き取れなかったが、ヨリを戻して……とは、私がハロルドと、って事かしら?

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「そうだ。パトリック伯爵令息と婚約解消した理由は……ジュードが行方知れずになっていた事が大きかったのだろう?なら……それが解決してしまったら……」

なるほど。ハロルドとナタリーの事を知らないのだもの。誤解されても仕方ない。
私は真実を話した方が良いのだろうと思いながらも、少しだけ胸が痛む。……未だにナタリーのコンプレックスから逃げられない自分に嫌気がさした。

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