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第56話
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「騙されたも何も……。貴方がナタリーを選んだのよ?伯爵様に認めて貰える様に貴方も協力してあげたら?」
「正直……父は他の家に適当な令嬢がいないか探ってるようだが……伯爵位以上のご令嬢で直ぐに婚姻出来る様な女性が見当たらない。
かといってナタリーがパトリック伯爵家に相応しい淑女になれるかどうか……」
もう少ししたらハロルドは二十一歳になってしまう。この状況、待ったなしだ。
だからと言って私がハロルドやナタリーにしてあげられる事は何もない。それに、日中見たあの女性の事だって……。それをハロルドに詰め寄るつもりはないが。
そんな事を考えていると、ハロルドが私の手をそっと取って握った。
上の空だった私は咄嗟に反応出来なかった。
「ちょっと!離して……っ!」
「少し見ない間に、エリン……綺麗になったな。本当に僕か馬鹿だったよ。君はあんなに僕の事を好きで、相応しくなろうと努力してくれていたのに」
案外強い力で握られた手は振りほどけず、私は困惑した。
確かに、ハロルドと釣り合う様な人間になりたいと努力はしていたし、好意もあった。それを否定するつもりはないが、今更、口に出されても嬉しくも何ともない。
ナタリーは家に居るのだ。この庭だって何処からか見られているかもしれない。ナタリーがこの状況を見たら面倒くさくなる事間違いなしだ。
「もう……っ!離し……」
と言ってハロルドの顔を睨もうと顔を上げた瞬間、ハロルドの首に剣が当てられているのが見えて、私は『ヒュッ』と息を呑んだ。
「妻の手を離せ。でなければ殺す」
物凄く物騒な事を言って、ハロルドの首元に剣を突きつけている相手……
「レナード様!」
「………!な、なにをす、するんだ」
声を震わせたハロルドが私の手をそっと離して、抵抗をしないことを示すかの様に、両手をそっと上げた。その手も震えている。
レナード様はハロルドの首に当てていた剣を鞘に収めながら、私に近付くと、抱きかかえる様にして私の姿をハロルドから隠した。
「妻に触るからだ」
「だからと言って剣を向けるとは!」
「嫌なら触れるな。何なら視界にも入れるな」
とレナード様は無理な事を言っている。
「レ、レナード様落ち着いて……」
私はレナード様の背中に隠されながら声をかける。
「俺は落ち着いている」
確かに声は落ち着いてるようなんですけど、体が熱いんです!
怒りなのか、それとも先程まで王宮で剣の手合わせをしていたせいなのか……そんな事を考えていると、ハロルドが
「ふん。エリンも可哀想だ。お前みたいな野蛮な奴に嫁がされるとは」
と苦し紛れの暴言を吐く。
そう言われたレナード様の体がピクリと揺れて私の方を振り向いたのだが、何故か顔が青い。……ご気分でも悪いのかしら?
私はレナード様の様子が気になりながらも、反論のため少しレナード様の後ろから顔を覗かせた。
「レナード様は野蛮ではありません!!貴方よりよっぽどお優しい方です!訂正して謝罪して下さい!」
「剣を突き付けられた僕がなぜ謝らなければならないんだ?!謝るのはそちらの方だろ?!」
と私達が揉めていると、声が聞こえたのか、ナタリーが庭に現れた。
「ハロルド、まだ帰ってなかったの?まさか……!お姉様と此処で会う約束でもしていたんじゃないわよね?!」
そんな事を私がするわけがない。自分が私の目を盗んでハロルドと密会していたからって、私まで一緒にしないで欲しい。私はとても不快になったてつい顔を顰めた。
「正直……父は他の家に適当な令嬢がいないか探ってるようだが……伯爵位以上のご令嬢で直ぐに婚姻出来る様な女性が見当たらない。
かといってナタリーがパトリック伯爵家に相応しい淑女になれるかどうか……」
もう少ししたらハロルドは二十一歳になってしまう。この状況、待ったなしだ。
だからと言って私がハロルドやナタリーにしてあげられる事は何もない。それに、日中見たあの女性の事だって……。それをハロルドに詰め寄るつもりはないが。
そんな事を考えていると、ハロルドが私の手をそっと取って握った。
上の空だった私は咄嗟に反応出来なかった。
「ちょっと!離して……っ!」
「少し見ない間に、エリン……綺麗になったな。本当に僕か馬鹿だったよ。君はあんなに僕の事を好きで、相応しくなろうと努力してくれていたのに」
案外強い力で握られた手は振りほどけず、私は困惑した。
確かに、ハロルドと釣り合う様な人間になりたいと努力はしていたし、好意もあった。それを否定するつもりはないが、今更、口に出されても嬉しくも何ともない。
ナタリーは家に居るのだ。この庭だって何処からか見られているかもしれない。ナタリーがこの状況を見たら面倒くさくなる事間違いなしだ。
「もう……っ!離し……」
と言ってハロルドの顔を睨もうと顔を上げた瞬間、ハロルドの首に剣が当てられているのが見えて、私は『ヒュッ』と息を呑んだ。
「妻の手を離せ。でなければ殺す」
物凄く物騒な事を言って、ハロルドの首元に剣を突きつけている相手……
「レナード様!」
「………!な、なにをす、するんだ」
声を震わせたハロルドが私の手をそっと離して、抵抗をしないことを示すかの様に、両手をそっと上げた。その手も震えている。
レナード様はハロルドの首に当てていた剣を鞘に収めながら、私に近付くと、抱きかかえる様にして私の姿をハロルドから隠した。
「妻に触るからだ」
「だからと言って剣を向けるとは!」
「嫌なら触れるな。何なら視界にも入れるな」
とレナード様は無理な事を言っている。
「レ、レナード様落ち着いて……」
私はレナード様の背中に隠されながら声をかける。
「俺は落ち着いている」
確かに声は落ち着いてるようなんですけど、体が熱いんです!
怒りなのか、それとも先程まで王宮で剣の手合わせをしていたせいなのか……そんな事を考えていると、ハロルドが
「ふん。エリンも可哀想だ。お前みたいな野蛮な奴に嫁がされるとは」
と苦し紛れの暴言を吐く。
そう言われたレナード様の体がピクリと揺れて私の方を振り向いたのだが、何故か顔が青い。……ご気分でも悪いのかしら?
私はレナード様の様子が気になりながらも、反論のため少しレナード様の後ろから顔を覗かせた。
「レナード様は野蛮ではありません!!貴方よりよっぽどお優しい方です!訂正して謝罪して下さい!」
「剣を突き付けられた僕がなぜ謝らなければならないんだ?!謝るのはそちらの方だろ?!」
と私達が揉めていると、声が聞こえたのか、ナタリーが庭に現れた。
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