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第62話
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「まさか、ナタリー様がハロルド様と……その……」
辺境伯領に戻ってからバーバラにはゆっくりと、事の顛末を話した。
「わかるわ。口にするのは憚られるもの。私もこちらに戻る前……お母様と話した時、何とも言えない思いをしたわ」
私は頭を抱えた母の顔を思い出していた。
あの婚前旅行の初日。急に降り出した雨のせいで急遽宿泊する事になった宿で、ハロルドとナタリーは体を重ねてしまったのだという。
……あの時の私の嫌な予感は的中してしまったという訳だ。
あの後お兄様が帰って来たり、レナード様から結婚式を早めるという話をされたりで、私もすっかりそんな事は忘れていた。
ハロルドと結婚出来なくなるかもしれないと危機感を持ったナタリーが応接室へと突撃し暴露した……それがあの日、パトリック伯爵が怒って部屋を飛び出した事の顛末だ。
もちろんパトリック伯爵が怒ったのはハロルドに対してだが、ナタリーとの結婚を白紙に戻したかったパトリック伯爵としては、愛息子の仕出かした事とはいえ、不機嫌になるのも分からなくはない。
婚約者だから……そう言われればそうなのだが、時期尚早。二人共浅はかだったと言わざるを得ない。
結局、私が辺境伯領へ帰った三日後には来月結婚式を挙げるという招待状が届いた。
「辺境伯譲位と重ならなくて良かった……と言うべきでしょうが……」
私はレナード様に招待状を見せながらそう言った。
「まぁ、今回は予想出来た事だ」
「確かにそうなのですが。あの……今回の結婚式は私一人でも……」
「いや、一緒に行く」
……こんなに頻繁に実家に戻る私もどうかと思うが、それに付いて来るレナード様もどうかと思う。
夕食時、私は辺境伯……いやお義父様に申し訳なく思っている事を伝えた。
「度々、申し訳ありません」
「なに、気にすることはない。どちらも目出度い事じゃないか」
……今回の結婚については、結果はどうあれ、過程にモヤモヤが残る。……さて、パトリック伯爵はどんな顔で参加するのか。目出度いと手放しで言えないところが辛い。
すると、私の向かいに座るハリソン様が、口の端を上げて言った。
「ふん。いい気なもんだな。嫁の尻ばかり追いかけて。そんな事で団長が務まるなど……辺境伯騎士団も質が落ちたと言う事か?」
すると、レナード様がまた心配そうな顔で私を見る。
……もう!!そんな事を言うとレナード様がまた気にしてしまうのだから、本当に黙っていて欲しい。
辺境伯領に戻ってからバーバラにはゆっくりと、事の顛末を話した。
「わかるわ。口にするのは憚られるもの。私もこちらに戻る前……お母様と話した時、何とも言えない思いをしたわ」
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あの婚前旅行の初日。急に降り出した雨のせいで急遽宿泊する事になった宿で、ハロルドとナタリーは体を重ねてしまったのだという。
……あの時の私の嫌な予感は的中してしまったという訳だ。
あの後お兄様が帰って来たり、レナード様から結婚式を早めるという話をされたりで、私もすっかりそんな事は忘れていた。
ハロルドと結婚出来なくなるかもしれないと危機感を持ったナタリーが応接室へと突撃し暴露した……それがあの日、パトリック伯爵が怒って部屋を飛び出した事の顛末だ。
もちろんパトリック伯爵が怒ったのはハロルドに対してだが、ナタリーとの結婚を白紙に戻したかったパトリック伯爵としては、愛息子の仕出かした事とはいえ、不機嫌になるのも分からなくはない。
婚約者だから……そう言われればそうなのだが、時期尚早。二人共浅はかだったと言わざるを得ない。
結局、私が辺境伯領へ帰った三日後には来月結婚式を挙げるという招待状が届いた。
「辺境伯譲位と重ならなくて良かった……と言うべきでしょうが……」
私はレナード様に招待状を見せながらそう言った。
「まぁ、今回は予想出来た事だ」
「確かにそうなのですが。あの……今回の結婚式は私一人でも……」
「いや、一緒に行く」
……こんなに頻繁に実家に戻る私もどうかと思うが、それに付いて来るレナード様もどうかと思う。
夕食時、私は辺境伯……いやお義父様に申し訳なく思っている事を伝えた。
「度々、申し訳ありません」
「なに、気にすることはない。どちらも目出度い事じゃないか」
……今回の結婚については、結果はどうあれ、過程にモヤモヤが残る。……さて、パトリック伯爵はどんな顔で参加するのか。目出度いと手放しで言えないところが辛い。
すると、私の向かいに座るハリソン様が、口の端を上げて言った。
「ふん。いい気なもんだな。嫁の尻ばかり追いかけて。そんな事で団長が務まるなど……辺境伯騎士団も質が落ちたと言う事か?」
すると、レナード様がまた心配そうな顔で私を見る。
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