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第94話
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ガーデンパーティに場所を移してからもナタリーの機嫌は直らない。ハロルドだけが招待客へと挨拶に回っていた。
それに伴いパトリック伯爵の機嫌も急降下だ。
「お祝いに来た招待客に挨拶もしないとは……」
という呟きを聞いた時には、思わずナタリーの側へと私は早足で近寄っていた。
「招待客の皆様に挨拶に回るのでしょう?ほら、ハロルド様の隣へ行って?あと、せめて笑顔を見せなさい」
「笑えないわ」
「面白くなくても笑顔を見せるの。貴族とはそういうものよ」
そう注意する私が煩かったのか、ナタリーは私に背を向けて、逆の方へと歩いて行った。
「ナタリー!どこへ行くの?」
「少し疲れたから、あっちで休んでくるの!!」
とベンチの方へと向かうナタリーにため息をついた。
「困ったもんだよ」
そんな私の後ろから、ハロルドの呆れたような声が聞こえた。
振り返った私はハロルドにお祝いを述べた。
「結婚おめでとうございます」
「嫌味か?」
「まさか。だって今日はお祝いの席でしょう?」
「ナタリーを選んだ事を後悔してるよ。だが今更相手を変えられない·」
……全て自業自得では?そう思うが喧嘩したいわけではない私は曖昧に微笑むだけにした。だがハロルドの愚痴は止まらない。
「最近は毎日喧嘩だ。僕の事を浮気者だと罵って。だが、僕だって腹に据えかねているんだ」
「ハロルド様。今日ぐらい愚痴はやめた方が……」
やんわりと『聞きたくない』と言っているつもりなのだが、ハロルドには通じなかった。
「この前喧嘩した時に言われたよ『お姉様の相手だったから、良く見えていたけど、手に入ったらそうでも無かった』だってさ。そんな事、初めて言われたよ。屈辱だった」
ナタリーは私のモノを欲しがる傾向にあったようだ。『となりの芝生は青い』という事なのか、それともただ単に私への嫌がらせなのか。
「前にも言ったでしょう?ナタリーを選んだのは貴方。私はこの耳でちゃんと聞いたわ。貴方がナタリーにプロポーズしている所。原因は誰か……ちゃんと分かっているのでしょう?」
そう言う私にハロルドは肩を竦めて、
「いい加減、根に持つのはやめてくれないか」
と吐き捨てた。
「自惚れないで。貴方から婚約を解消されて良かったって心の底から思っているんだから。お陰で今、とっても幸せだもの」
私はその後のハロルドの言葉を待たずに、ナタリーに代わって招待客に挨拶している母と兄の元へと向かった。
ミネルバがナタリーを連れ戻し、ハロルドへと頭を下げながらナタリーを押し付けているのが見える。
いつの間にか知り合いとの挨拶を終えたレナード様が私の側に来ていた。
すると、
「さて皆様、お酒も十分にご用意させていただいておりますので、たくさん召し上がって下さいな。それと、ここで皆様にお楽しみいただける様に、余興を準備いたしましたので、どうぞご覧ください」
とパトリック伯爵とは正反対のにこやかな笑顔で伯爵夫人が手を叩くと、数人の踊り子達が会場へと入って来た。
「あれは……」
思わず言葉が口をつく。
「どうした?」
と問うレナード様に
「私が前に目撃した女性です……あの真ん中の踊り子の方……」
と私は小さな声で答えた。
私の視線の先には花屋の前でハロルドから大きな花束を受け取っていた女性が露出の多い衣装を纏い、魅惑的な笑顔で音楽に合わせて踊り始めていた。
ナタリーはその女性を見て顔色を変えた。ナタリーの視線は彼女の胸元に注がれている。彼女の胸元を彩っているのは大きなルビーの豪華なネックレスだった。
それに伴いパトリック伯爵の機嫌も急降下だ。
「お祝いに来た招待客に挨拶もしないとは……」
という呟きを聞いた時には、思わずナタリーの側へと私は早足で近寄っていた。
「招待客の皆様に挨拶に回るのでしょう?ほら、ハロルド様の隣へ行って?あと、せめて笑顔を見せなさい」
「笑えないわ」
「面白くなくても笑顔を見せるの。貴族とはそういうものよ」
そう注意する私が煩かったのか、ナタリーは私に背を向けて、逆の方へと歩いて行った。
「ナタリー!どこへ行くの?」
「少し疲れたから、あっちで休んでくるの!!」
とベンチの方へと向かうナタリーにため息をついた。
「困ったもんだよ」
そんな私の後ろから、ハロルドの呆れたような声が聞こえた。
振り返った私はハロルドにお祝いを述べた。
「結婚おめでとうございます」
「嫌味か?」
「まさか。だって今日はお祝いの席でしょう?」
「ナタリーを選んだ事を後悔してるよ。だが今更相手を変えられない·」
……全て自業自得では?そう思うが喧嘩したいわけではない私は曖昧に微笑むだけにした。だがハロルドの愚痴は止まらない。
「最近は毎日喧嘩だ。僕の事を浮気者だと罵って。だが、僕だって腹に据えかねているんだ」
「ハロルド様。今日ぐらい愚痴はやめた方が……」
やんわりと『聞きたくない』と言っているつもりなのだが、ハロルドには通じなかった。
「この前喧嘩した時に言われたよ『お姉様の相手だったから、良く見えていたけど、手に入ったらそうでも無かった』だってさ。そんな事、初めて言われたよ。屈辱だった」
ナタリーは私のモノを欲しがる傾向にあったようだ。『となりの芝生は青い』という事なのか、それともただ単に私への嫌がらせなのか。
「前にも言ったでしょう?ナタリーを選んだのは貴方。私はこの耳でちゃんと聞いたわ。貴方がナタリーにプロポーズしている所。原因は誰か……ちゃんと分かっているのでしょう?」
そう言う私にハロルドは肩を竦めて、
「いい加減、根に持つのはやめてくれないか」
と吐き捨てた。
「自惚れないで。貴方から婚約を解消されて良かったって心の底から思っているんだから。お陰で今、とっても幸せだもの」
私はその後のハロルドの言葉を待たずに、ナタリーに代わって招待客に挨拶している母と兄の元へと向かった。
ミネルバがナタリーを連れ戻し、ハロルドへと頭を下げながらナタリーを押し付けているのが見える。
いつの間にか知り合いとの挨拶を終えたレナード様が私の側に来ていた。
すると、
「さて皆様、お酒も十分にご用意させていただいておりますので、たくさん召し上がって下さいな。それと、ここで皆様にお楽しみいただける様に、余興を準備いたしましたので、どうぞご覧ください」
とパトリック伯爵とは正反対のにこやかな笑顔で伯爵夫人が手を叩くと、数人の踊り子達が会場へと入って来た。
「あれは……」
思わず言葉が口をつく。
「どうした?」
と問うレナード様に
「私が前に目撃した女性です……あの真ん中の踊り子の方……」
と私は小さな声で答えた。
私の視線の先には花屋の前でハロルドから大きな花束を受け取っていた女性が露出の多い衣装を纏い、魅惑的な笑顔で音楽に合わせて踊り始めていた。
ナタリーはその女性を見て顔色を変えた。ナタリーの視線は彼女の胸元に注がれている。彼女の胸元を彩っているのは大きなルビーの豪華なネックレスだった。
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