105 / 121
第105話
しおりを挟む
セルに付いて行くと、少しずつ見慣れた景色が広がってきた様に思えた。……勘違いではなさそうだ。セルはやはり私達の道案内をしてくれているようで、私はセルの賢さに驚きを隠せなかった。
しばらく行くと、急にセルが立ち止まって耳をピクピクと揺らす。私とユラも合わせて立ち止まると、風の音の中に誰かの声が混じって聞こえた様な気がした。
セルはチラリと私達を振り返ると、サッと横道へと走り去った。私はその行動に驚き、
「セル?!」
と名を呼ぶも、セルの姿は直ぐ様見えなくなった。追いかけようかとしたその時、遠くから
「エリン!!エリン何処だ?!何処にいる?!!」
という声がはっきりと聞こえた。
「レナード様?レナード様!!!こっちです!!」
その聞き覚えのある声に、私はありったけの大きな声で答えた。
レナード様とレナード様の馬のシドが砂埃を上げながらこちらに近づいて来た。
私の姿を見つけると、レナード様はヒラリと馬から降りる。
私もそれを見て、急いでユラの背から降りてレナード様へと駆け寄った。
レナード様も私に走り寄ると思いっきり私を抱きしめた。
「どうしてここに?」
「どうしてこんな所に?!」
私とレナード様の声が重なり、思わず笑顔になってしまった。
私は改めて、
「レナード様おかえりなさい」
と更にぎゅっと抱きついた。
「あぁ……いや、それより何故こんな所に?ここは帰り道から少し外れているだろう?」
そう尋ねるレナード様に私は先ほどの熊に遭遇した所から話をした。
「だ、大丈夫だったのか?怪我は?」
青ざめて私の体をペタペタと触りながら異常がないかと確認するレナード様はとても焦っている様子だ。
「言ったようにセルが助けてくれましたから。でもレナード様の声を聞いたからか、安心して何処かへ行ってしまいました」
「森に帰ったんだろう。セルには何か褒美をやらねばな」
「でも……何故セルはこんな所まで……。森からは随分と離れていますのに」
私が首を傾げると、
「あいつにはクレイグ辺境伯家の『宝』を守るように言ってある。セルは俺の宝物を良く理解している様だ」
そう言ってレナード様は私の頬を撫でた。
暗に私の事を宝物だと言ってくれるレナード様に思わず照れて頬が赤くなる。でもとても嬉しい。
私は気持ちが温かくなるのを感じた。
恥ずかしさを誤魔化すように、少し咳払いをした後、私はレナード様に尋ねた。
「レナード様はどうして此処に?」
「屋敷に戻ったら、エリンは父の所へ行ったというじゃないか。せっかく騎士団にも寄らず真っ直ぐ屋敷に帰ったというのに。
待っておく時間も勿体なくて急いで父の別宅へと向かったらもうエリンは出発したと言うだろう?だが、俺は道すがらエリンとすれ違わなかった。途端に心配になって探し回っていたんだ」
……お義父様のお見舞いは?そう思ったが今は言わないでおこう。
しばらく行くと、急にセルが立ち止まって耳をピクピクと揺らす。私とユラも合わせて立ち止まると、風の音の中に誰かの声が混じって聞こえた様な気がした。
セルはチラリと私達を振り返ると、サッと横道へと走り去った。私はその行動に驚き、
「セル?!」
と名を呼ぶも、セルの姿は直ぐ様見えなくなった。追いかけようかとしたその時、遠くから
「エリン!!エリン何処だ?!何処にいる?!!」
という声がはっきりと聞こえた。
「レナード様?レナード様!!!こっちです!!」
その聞き覚えのある声に、私はありったけの大きな声で答えた。
レナード様とレナード様の馬のシドが砂埃を上げながらこちらに近づいて来た。
私の姿を見つけると、レナード様はヒラリと馬から降りる。
私もそれを見て、急いでユラの背から降りてレナード様へと駆け寄った。
レナード様も私に走り寄ると思いっきり私を抱きしめた。
「どうしてここに?」
「どうしてこんな所に?!」
私とレナード様の声が重なり、思わず笑顔になってしまった。
私は改めて、
「レナード様おかえりなさい」
と更にぎゅっと抱きついた。
「あぁ……いや、それより何故こんな所に?ここは帰り道から少し外れているだろう?」
そう尋ねるレナード様に私は先ほどの熊に遭遇した所から話をした。
「だ、大丈夫だったのか?怪我は?」
青ざめて私の体をペタペタと触りながら異常がないかと確認するレナード様はとても焦っている様子だ。
「言ったようにセルが助けてくれましたから。でもレナード様の声を聞いたからか、安心して何処かへ行ってしまいました」
「森に帰ったんだろう。セルには何か褒美をやらねばな」
「でも……何故セルはこんな所まで……。森からは随分と離れていますのに」
私が首を傾げると、
「あいつにはクレイグ辺境伯家の『宝』を守るように言ってある。セルは俺の宝物を良く理解している様だ」
そう言ってレナード様は私の頬を撫でた。
暗に私の事を宝物だと言ってくれるレナード様に思わず照れて頬が赤くなる。でもとても嬉しい。
私は気持ちが温かくなるのを感じた。
恥ずかしさを誤魔化すように、少し咳払いをした後、私はレナード様に尋ねた。
「レナード様はどうして此処に?」
「屋敷に戻ったら、エリンは父の所へ行ったというじゃないか。せっかく騎士団にも寄らず真っ直ぐ屋敷に帰ったというのに。
待っておく時間も勿体なくて急いで父の別宅へと向かったらもうエリンは出発したと言うだろう?だが、俺は道すがらエリンとすれ違わなかった。途端に心配になって探し回っていたんだ」
……お義父様のお見舞いは?そう思ったが今は言わないでおこう。
1,544
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる