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第120話
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私は窓の外を見てため息を吐いた。あの配達員が言っていた通りになってしまった。朝方には薄っすらだった庭の雪は木々の上に積もり、地面の芝もすっかり見えなくなってきている。
「雪……酷くなっちゃったわ」
「本当ですね。……窓際はお寒いでしょう?暖炉の近くへどうぞ」
バーバラはそう言って、温かなお茶を注ぐ。
私は窓際から後ろ髪を引かれる思いで離れた。
今日帰ってくる予定のレナード様を待ち侘びている為、何度も何度も窓の外を眺める私に、バーバラは心配そうにしていた。
「もう、こんなに雪が積もったら今日は帰って来られないわよね?」
バーバラに『否』の答えを期待して質問する。しかし、
「そうですねぇ。……少し難しいかもしれませんね」
と言うバーバラに、私はあからさまに落ち込んだ。
辺境伯領の冬は長い。家政も然程する事がない私は、じっとしているとついついレナード様の事を考えてしまう。
「……刺繍でもするわ。少しは気が紛れるし」
私はレナード様の作業部屋へ向かうため、扉に向かう。
「ご一緒しましょうか?」
と尋ねるバーバラに、
「家の中だもの、大丈夫。ちょっと過保護よ」
と私は笑う。
バーバラも『旦那様の心配性が感染りましたかね?』と笑った。
作業部屋で刺繍糸を探す。
色を選ぼうかと膨大な量の糸を眺めるが、ついつい考えてしまうのはレナード様の事だ
全く糸選びは進んでいないのだが、随分と長い時間、この部屋に居た様な気がする。あまり長いとバーバラの心配性がまた顔を出してしまうだろう。
「重症だわ」
心の大半をレナード様に奪われてしまっている自分に苦笑する様に呟くと、
「エリン?!!病気なのか????」
と慌てた声がした。
私は愛しい人の声に笑顔で振り向く。
「レナード様!!おかえりなさいませ!」
レナード様は外套を羽織ったまま。その外套には雪がまだ付いたままだった。
「エリン!」
抱き締めようとしてレナード様は動きを止めた。私がそれを不思議に思い、首を傾げる。
「雪で濡れている。このまま抱きしめてしまうとエリンまで被害を被るだろう」
「せめて上着を脱いでから……」
「早くエリンに会いたかったんだ。出迎えがないから……」
とレナード様は少し拗ねたように言った。
「ここはあまり外の音が聞こえなくて」
言い訳の様に私が言うと、レナード様は少し微笑んだ。
「まぁ、良い。会えたから」
「雪が酷くなって来たので、今日は戻られないかと」
「俺だけ強行で帰ってきた。皆はもう少し先の宿屋で休ませてる」
「まぁ!大丈夫でしたの!?ご無理なさらなくても」
「俺がエリンに会いたかったんだ」
そう言ってまた私を抱き締めようとするレナード様は、ハッとして、また動きを止めた。
私はその姿に苦笑する。
「さぁ、そのままでは風邪を引いてしまいますわ。一緒に戻って、まずは着替えましょう」
「あぁ、そうだな。エリンは糸を選んでいたんじゃないのか?」
「はい。でも中々決めきれなくて」
レナード様の事で頭が一杯だったから……とは恥ずかしくて言えない。
そこで私はふと、前々から思っていた疑問を口にする。
「レナード様?前々から不思議に思っていたのですが……何故ここには女性用のトルソーが置いてあるのです?」
「ん?これか?エリンのドレスに刺繍する為だ」
レナード様は至極当然の事の様にサラッと答えを口にした。
「雪……酷くなっちゃったわ」
「本当ですね。……窓際はお寒いでしょう?暖炉の近くへどうぞ」
バーバラはそう言って、温かなお茶を注ぐ。
私は窓際から後ろ髪を引かれる思いで離れた。
今日帰ってくる予定のレナード様を待ち侘びている為、何度も何度も窓の外を眺める私に、バーバラは心配そうにしていた。
「もう、こんなに雪が積もったら今日は帰って来られないわよね?」
バーバラに『否』の答えを期待して質問する。しかし、
「そうですねぇ。……少し難しいかもしれませんね」
と言うバーバラに、私はあからさまに落ち込んだ。
辺境伯領の冬は長い。家政も然程する事がない私は、じっとしているとついついレナード様の事を考えてしまう。
「……刺繍でもするわ。少しは気が紛れるし」
私はレナード様の作業部屋へ向かうため、扉に向かう。
「ご一緒しましょうか?」
と尋ねるバーバラに、
「家の中だもの、大丈夫。ちょっと過保護よ」
と私は笑う。
バーバラも『旦那様の心配性が感染りましたかね?』と笑った。
作業部屋で刺繍糸を探す。
色を選ぼうかと膨大な量の糸を眺めるが、ついつい考えてしまうのはレナード様の事だ
全く糸選びは進んでいないのだが、随分と長い時間、この部屋に居た様な気がする。あまり長いとバーバラの心配性がまた顔を出してしまうだろう。
「重症だわ」
心の大半をレナード様に奪われてしまっている自分に苦笑する様に呟くと、
「エリン?!!病気なのか????」
と慌てた声がした。
私は愛しい人の声に笑顔で振り向く。
「レナード様!!おかえりなさいませ!」
レナード様は外套を羽織ったまま。その外套には雪がまだ付いたままだった。
「エリン!」
抱き締めようとしてレナード様は動きを止めた。私がそれを不思議に思い、首を傾げる。
「雪で濡れている。このまま抱きしめてしまうとエリンまで被害を被るだろう」
「せめて上着を脱いでから……」
「早くエリンに会いたかったんだ。出迎えがないから……」
とレナード様は少し拗ねたように言った。
「ここはあまり外の音が聞こえなくて」
言い訳の様に私が言うと、レナード様は少し微笑んだ。
「まぁ、良い。会えたから」
「雪が酷くなって来たので、今日は戻られないかと」
「俺だけ強行で帰ってきた。皆はもう少し先の宿屋で休ませてる」
「まぁ!大丈夫でしたの!?ご無理なさらなくても」
「俺がエリンに会いたかったんだ」
そう言ってまた私を抱き締めようとするレナード様は、ハッとして、また動きを止めた。
私はその姿に苦笑する。
「さぁ、そのままでは風邪を引いてしまいますわ。一緒に戻って、まずは着替えましょう」
「あぁ、そうだな。エリンは糸を選んでいたんじゃないのか?」
「はい。でも中々決めきれなくて」
レナード様の事で頭が一杯だったから……とは恥ずかしくて言えない。
そこで私はふと、前々から思っていた疑問を口にする。
「レナード様?前々から不思議に思っていたのですが……何故ここには女性用のトルソーが置いてあるのです?」
「ん?これか?エリンのドレスに刺繍する為だ」
レナード様は至極当然の事の様にサラッと答えを口にした。
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