【本編完結】魔王と周りに恐れられる辺境伯ですが他人の婚約者に手を出したと噂の伯爵令息にずっと片思いしています

ひよこ麺

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25.宿敵にルカが攫われてしまった

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ルカを隠し部屋に入れた後、俺はすぐに敵兵をなぎ倒しに向かった。正直、拍子抜けするほど簡単に、倒すことができた。

(……こんな雑魚どもをここに送るなど、あの男はふざけているようだな)

ルカとの大切な、愛の時間を邪魔されたことに怒りがおさまらない俺は色々と泣き喚く敵兵氏をボコボコにして、城へ戻ろうとした時だった。

「辺境伯様、大変っス」

そういって、レイモンドが現れた。その姿は今朝見ていた、見たはずだが……。

「お前、返り血を随分綺麗に洗い流せたな」

目の前のレイモンドの、姿、鎧の白い部分にまで飛び散っていた大量の血痕までが綺麗になっていた、不自然なほどの。まるではじめから返り血など浴びていなかったように。

「はっ??ふざけてるんっすか。辺境伯様、それよりシオン大公に奇襲をかけられて、辺境伯領の兵士が多数死傷しました、何度か伝令を送りましたが辺境伯様からの連絡がないので、急ぎ一部の精鋭を残し、帰還したところだったっす」

「何を言っている、お前は俺とルカエルの部屋に朝押し入ってきただろう、返り血まみれで……」

「はっ?そんなわけないっすよ。大体さっきも言った通り、こちらは一方的な奇襲を受けてるっすよ。防戦一方でろくに攻撃できていなかったっす。俺も指揮官でしたから高台から指示をしてましたし、血なんか浴びてないっす」

その言葉に、俺はやってしまったことに気付いた。間違いないあの血まみれ男のレイモンドはレイモンドではない。だとしたら……

「変身魔法、そんなことが出来るのは……くそっ!!」

俺は、大方敵兵を倒したこともあり、城へ脇目もふらず戻った、しかし城は炎に包まれていた。残っていた部下にルカを探させたが、どこにもおらず、1枚の手紙が残されていた。


その手紙には、「ルカを人質として捉えたこと」「返して欲しければひとりで所定の場所までくること」が掛かれていた。ふざけやがって。

どうやら俺は致命的なミスを犯したらしい。間違いない、あいつはレイモンドに成りすまして城の内部に侵入し、ルカを攫っていなくなったのだ。

「ルカが、危ない。あいつは、あの変態男め!!」

そう怒りを露わにしながら、俺はシオン大公こと、変態クソドS男のことを思い返した。

学園で同じクラスだったあいつはことあるごとに俺への挑発ならびに変態発言をしていた。

「ギルベルト、相変わらず君は不遜で魔王のような容姿をしているな。ふふふ、君のような我の強い男を縛り上げて鞭で打ってやりたくなる」

その度に、冷めた眼差し、具体的にはチベットスナギツネのような顔であの男を見ていた。大体「美しいルカエルを堕とす会」等という恐ろしいものを設立したことにも戦慄した。ルカエルは守るものであるのに堕とすなんて汚らわしい。腹立たしくて抗議したところ……

「あの穢れないように見えるのを淫売まで堕としてやりたいのさ。そうすれば、ギルフェル、いや、ギルベルト、君の目も覚めるだろう」

とか言っていた。何が目が覚めるだ。お前のように俺は眠ってなんていない。いつもことあるごとに絡んできたし、なぜか行くところ行くところあいつがいて、ルカとの交流を邪魔をされた。それに対して抗議した際は……

「君とルカがいるのが気に入らない、ギルフェルもとい、ギルベルト、君にルカは相応しくない」

とか抜かしていた。お前にルカと俺の何が分かるというのか。いつ思い出しても腸が煮えくり返る。ただ、一応は隣国の最高権力者になる予定の男だから誠意を示していたのに、あの男は俺の誕生日会でとんでもないことをしでかした。

「ギルベルト、君に似合うと思ってこれをプレゼントしよう」

と無駄に良い素材に、最高級のブラックダイヤモンドのはめ込まれた首輪をプレゼントしやがったのだ。首輪などまるで「お前など犬に等しい」とでもいうような宣戦布告アイテムを送りやがったのだ。ふざやがってと切れたら、「首輪じゃない、チョーカーだ。それにブラックダイヤモンドはギルフェル、もとい君の瞳に合わせたものでもっと仲良くなりたいから送ったんだ」などと言いやがった。本当に昔から俺を煽り変なライバル視をしている男だった。

その男が、ルカを攫ったのだ、なんとしてもルカを無事に取り戻さなければいけない。

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