令嬢は鞭を振るが逃げられない

ロキ

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36話

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「クロム、その髪の色・・・」

しゅるりと取った布から現れたのは月の光に照らされ綺麗に輝く白髪だった。

ルイスの髪は赤茶色をしていたけどクロムは白髪なのね。

「綺麗な白色ね?両親のどちらかが白髪だったの?」

私が聞くとクロムは目を丸くした。私、何かおかしな事を聞いたかしら?

「おまえ、この髪色のこと知らないのか?」

「え?何も知らないわよ。それに綺麗な白色じゃない!瞳も良く見たら紅くて綺麗だし、何が駄目なの?」

クロムは頭をガシガシと掻き溜息をついた。

「はぁー・・・そうかお前の国は俺たち龍人のことをよく知らないもんな。俺は、忌子なんだ」

「龍人族は双子を滅多に産まない、そして産まれたとしても俺みたいな白髪で瞳の紅い赤ん坊が産まれる。だから俺みたいな見た目の奴が気味が悪いって事で忌子になる」

クロムが苦々しい顔で言ったが私には理解出来なかった。双子で産まれただけなのに?見た目が違うから駄目なの?ただ見た目が違うだけで忌子にならなきゃいけないなんて・・・。

「そんなのおかしいわ!!双子で産まれただけなのに!ただ見た目が違うだけで忌子にするなんて間違ってるわ!?」

私は龍人について何も知らない。だけど誰かが悲しむしきたりなんか要らない!私はクロムの目を真っ直ぐみて言った。

「私が変える!そんなしきたり壊して悲しむ人を無くすわ!それにディアス様と一緒なら何でも出来る気がするの!」

私が言い切るとクロムが震えながら笑い出した。

「くっ、あははっ!・・・お前は面白いこと言うな。俺みたいな忌子を無くすのを楽しみに待ってるぜ?」

「お前?って、他に誰かが言ったの?」

「くくっ、ディアスが初めて俺と会った時に言ったんだ。忌子を無くして双子が産まれても悲しまない国にするってな・・・。だからお前が二人目だ。まさか同じような事を言う奴がいるなんてな?流石ディアスの番い様だぜ」

少し嬉しそうな感じでクロムが言った。そっか、ディアス様も同じ事言ったのね・・・。

私はふと、気になった事をクロムに聞いてみた。

「ねぇ、クロムは忌子ってバレないように髪を隠していたの?」

「ああ、そうだ。こんな見た目だし要らぬ噂を流されたら面倒だしな?それに諜報部隊だから顔を隠してる方がバレにくくて都合が良い」

「なるほどね。ねぇ、今度また私と話す時があったら顔を出して話さない?やっぱり隠したままだと話し辛いのよ、私が」

「次があったらな・・・」

なんだか素っ気なく言われてしまった。あと、さっきから私のことお前とかしか呼ばれて無い・・・。

「クロム、私の名前はリリーよ!お前じゃ無いわ!ちゃんと名前で呼んでよね?」

私が少し不貞腐れて言うとクロムがボソリと言った。

「・・・リリー。ほら、言ったぞ?これで良いだろ」

「・・・なんか投げやり感があるわよ?まぁ、ちゃんと呼んでくれたし良いか。ふふっ、こっちに来て私、知り合いがいないから話し相手が増えるのは嬉しいわね!」

「俺は諜報部隊だから滅多に会うことは無いと思うがな。ほら、もう寝ろ・・・ディアスも始末を終えて戻って来るだろう」

クロムが布を頭に巻きながら言った。いつか、髪を隠さないで済む世の中にしたいな。

「わかった。おやすみなさい、クロム」

私はクロムに挨拶をしてベッドへ戻った。

「良い子だ、おやすみリリー・・・」

クロムは言い終わるとサッと消えた。

去り際に見たクロムは、口が隠れていたが微笑んでいた気がした。

「・・・また会えると良いな。明日ルイスに聞いてみよっと!」



私は明日の予定を考えながら眠りについた。
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